消沈の機動乙女 4
「あ……うん。そうだ」
「そっか……うん。わかった」
そして、奈緒は何度か一人で頷くと、また俺の方に顔を向けてきた。
「聖治……ちょっと、外でお話しない?」
奈緒は上目遣いで俺にそう聞いてきた。その瞳で見られてしまうととても嫌だとは言えない。
俺はその誘いに対し了承し、奈緒と一緒に外に出ることにした。
外は夕闇が迫っていた。道を歩いているのも俺と奈緒だけ。そう考えると少し恥ずかしい。
奈緒も外に出てからは黙ってしまっている。
俺としてもただ奈緒が歩いているから、それに従って歩いているといった感じだ。
どちらから何か行動を起こすということもなく、ただ、どこへともなく歩いていた。
「……ねぇ」
しかし、それからしばらくして先に口を開いたのは奈緒だった。
俺は黙って奈緒の顔を見る。
「ちょっと……ついてきて欲しいところがあるんだけど」
「え? あ、ああ……別にいいが……」
すると奈緒はニコリと微笑むとそのまま半ば強引に俺の手を掴んで走り出した。
俺はいきなり走り出した奈緒に完全にひきづられるような形となりながらなんとか体制を保つ。
「お、おい! 奈緒! ど、どういうつもりだ!」
「えへへ! だって、小さい頃はよくこんな風にやってたじゃん!」
そう言う奈緒はなぜか既にいつも通りの奈緒だった。
なんだ? 今までの全部演技だったのか?
ホントは全然ショックなんて受けていないっていうのか?
俺の疑念が形を成さないままに、奈緒はものすごい勢いで俺の体を引っ張っていく。
「お、おい! 奈緒! い、いい加減に離してくれ! ど、どこに行くんだ!」
「それは、着いてからのお楽しみだよ~!」
そして、それから引きずられること約五分ばかり。
「はい。着いたよ」
と、いきなり走るのを止めた奈緒。俺はそのまま地面に叩きつけられそうになるのをなんとか持ちこたえてその場に立ち止まった。
「な、なんだというのだ……一体……」
「ほら。ここだよ。聖冶」
そういってニッコリと微笑んだ奈緒の表情の先にあったのは、公園だった。
「こ、ここは……」
「うん。昔ボク達がよく遊んだ公園だね」
確かにそうだった。本来ならば、奈緒の家から全力で走っても約20分は掛かる所。
さすがは運動馬鹿の奈緒。
そこには確かに懐かしい公園があった。公園は暗く、もちろん人っ子一人いない。