消沈の機動乙女 2
「ほら。聖冶君がわざわざ来ているんだから。ちゃんと挨拶しなさい」
母親にそう言われて、奈緒はビクンと反応した。
そして、ためらいがちに俺の方に視線を向ける。
「……お、お母さん。ちょっと……聖冶と二人で話したいから……いいかな?」
すると奈緒の母親はキョトンとした顔を自分の娘に向ける。
そして、その後、嬉しそうに微笑むと「そうよね……若い二人の邪魔をしちゃ悪いわよね」なんて言いながらそそくさと去って言った。
そして、残されたのは俺と奈緒だけになったのであった。
奈緒は俺に目を合わせようとせずひたすらうつむいているだけである。
「……だ……大丈夫か?」
とりあえず、沈黙に耐えかねた俺から出た言葉がそれだった。
奈緒は驚いたように俺を見て、何も言わずうつむいてしまった。
やはり、相当にショックは受けているようだ……一体どうしたものか。
「あー……ま、まぁ……そ、その、なんだ……なんというか――」
「……何しに……来たの?」
俺が言おうとすると、奈緒はそう割って入ってきた。
そう言われて驚いたのは俺である。
何しに来た。その言葉には確実に棘があった。
「あ……いや。その……お前のことが、心配で……」
すると奈緒は俺のことを見る。
その視線は、いつもの奈緒の無邪気な視線ではなく、どこか敵意を含んだものだった。
「……悪の首領なのに、正義の味方の心配を?」
「え……いや、だって……」
「……帰ってよ」
俺が先を続けようとすると、奈緒はピシャリとそう行った。
「え?」
間抜けに俺は声を漏らす。
「……帰ってよ。聖治は……ううん。ドクターフェルシルは……敵なんだから……どうしてボクの家なんかに来ているんだよ……」
そういう奈緒の目には涙が溜まっていた。
その表情を見て、俺は今一度確信した。
俺の作戦は、やってはいけない作戦だったのだ、と。