相談すべきは誰に 2
「……そうか」
「私はあまり横井のことは知らない。だけど、お前と横井は仲がいいんだろ?」
「え? あ、ああ……」
「横井の奴は、ただでさえ自分が正義のヒーローをやっているなんて自覚が薄いんだ。私とお前の戦いも、世界の命運をかけた戦いなんて思ってない……だから、お前にあんなことをいきなり言われて、へこんでんだろうな」
赤沢は淡々とそう言った。その通り過ぎて俺は何か言うことさえできなかった。
「で、お前はどうしたいんだ?」
「……え?」
「だから、どうしたいんだよ。お前は横井……ホーリーイエローを追いこみ、戦意喪失にまで追い込んだ。現状、戦えるのは私と一条の二人だけ。二人だけだと必殺技も打てないし、お前とあのロボット相手だと苦戦するかもな」
言われて俺は初めて理解した。
俺は、戦果をあげたのだ。
そして、現在、ホーリーセイバーとの戦いにおいて優位に立っている。
それなのに、そんな喜ばしいことにさえ気づかなかったのである。
「だから、悪の首領としてお前がどう行動しようと、正義の味方の私には何も言う資格はない。でも、お前の顔を見ていると、勝ったのにあんまり嬉しくなさそうだな」
そう言われて俺は黙ることしかできなかった。
勝ったのだ。それなのに、まったく嬉しくない。
それはなぜか。なぜって……それはやっぱり……
「俺は――」
その時だった。丁度チャイムが屋上にも鳴り響いた。
「あ、昼休み終わりか。じゃあ、私は帰るわ」
「え? お、お前……赤沢、帰るって……」
「帰るんだよ。じゃあな」
「ちょ……お、俺は……」
と、俺が呼び止めようとすると、赤沢はこちらを見て、歯を見せて笑う。
「ま、お前の好きなようにしろよ。お前は、悪の組織の首領なんだからな。それに……いつものお前みたいじゃないと、私としても調子でないんだよ。ドクターフェルシル」
それだけ言って、赤沢は屋上から出て行った。
好きなようにする……その言葉を聞いて俺の意思は固まった。
「……よし」
少ししてから、俺も屋上を後にしたのだった。