宴の後
「聖冶坊ちゃま? いかがされました?」
「え? あ、ああ……なんでもない。大丈夫だ」
「元気がございませんよ? もっとお喜びになってください。坊ちゃまがホーリーセイバーの一人を打ち負かしたのですから!」
まるで子供のようにはしゃぐ片岡。
「そうですよ! ご主人様!」
と、そこへ割って入ってきたのは、嬉しそうにはしゃぐ彩子である。
「彩子も頑張ってきた甲斐がありました! 片岡様、彩子、頑張りましたよね!」
「ええ! 彩子さん……私は思い違いをしていました。貴方は優秀なメイドです。たとえロボットであっても、坊ちゃまを思う気持ちは同じ……さぁ! 喜びを分かち合いましょう!」
盛り上がる二人の隣で俺は適当に笑うことしかできなかった。
奈緒のあの顔……それがどうしても忘れることができずに。
その後、屋敷を挙げてのお祭りムードは、俺達だけでなく、メイド達や彩子……さらにはサイコカオスの整備班まで巻き込んで壮大なものとなった。
片岡は酔っ払って整備班の班長と肩を組んでリビングで歌っていた。
俺はそれを見てこっそりとリビングを抜け出すことにした。メイド達にしても今は俺のことを見ているものもいない。
そのまま階段を上がって部屋まで直行した。
「……はぁ」
全く、ホーリーセイバーの一人を倒したといっても、戦意を喪失させただけというのに、これではいつか本当に俺がホーリーセイバーに勝ったとしたらどんな大騒ぎになるというのやら。
「全く、盛り上がりすぎだっていうんだ……」
「本当ね。浮かれちゃって。見ているコッチが恥ずかしいわ」
と、俺はびっくりして声のした方を振り向く。
「なっ……ま、真奈……!」
そこには相変らず不敵な笑みを浮かべた真奈が、俺のことをその鋭い視線で見つめていた。
「な、なんだ。いたのか」
「ええ。私もあのドンちゃん騒ぎに飽き飽きしてね……抜け出してきたの」
「だ、だったら……自分の部屋に戻ったらどうだ」
「あら、ツれないこと言わないでよ」
すると真奈はニッコリと微笑んで俺の方へ近付いてくる。暗がりの中で見るその姿は普段よりも一層妖しく危険に思えた。