激突! 異世界での戦い! 5
そうしてそのまま俺はさらにホーリーブルーに向けてサイコカオスの拳の狙いを定める。
「くっ!」
しかし、それはブルーに避けられてしまった。
……まぁ、いい。今日のターゲットはイエローだ。
俺はもう一度サイコカオスをイエローの方向に向けてマイクに口を近づける。
イエローは既に立ち上がって俺に向かって構えていた。
「イエロー! もう一つ聞こう!」
「え……ま、また?」
「ああ、江戸幕府が創設されたのはいつだ?」
「え、えど……ば、ばくふ?」
完全にオロオロしているイエロー。
俺はニヤリと口の端をあげて微笑みながらイエローに狙いを定める。
「1603年だ! そんなこともわからんのか!」
俺はそのまま思いっきり拳を振りぬいた。そして、これもまたイエローに思いっきりヒットした。
サイコカオスの鉄の拳が叩きつける感覚……それをまるで直に感じるかのようにして、俺は快感さえ感じていた。
「い、イエロー! くっ……お、おい! ドクターフェルシル! いい加減にしろ! 一人だけ集中的に狙って……そんな戦い方をして楽しいか!」
レッドは怒り気味にそう怒鳴る。
思わず俺は操縦レバーを握りながら、笑みを浮かべてしまった。
「ああ! 楽しい! こんな楽しいことは……ない!」
そういいながら俺はレッドに向けても拳を振り下ろす。レッドはそれを間一髪で交わす。
俺はそれを見てからまたイエローに狙いを変える。
先ほどの一撃がまだ応えているのか、フラフラとしながらイエローは立ちあがった。
見ればイエローのバトルスーツは所々既に破損している。
かつて爺様に聞いたところでは、ホーリーセイバーの装備はダークネクロムほど頑丈でないから、攻撃さえ決めることができれば、何発かで勝つことができる、と。
「う、うぅっ……」
苦しそうな声をあげるイエロー。
そうだ。もっと苦しめ……! 俺は悪の組織の首領なんだ……そして、今正義の味方の一人を完全に追い詰めているのだ……!
「はーはっはっは! どうした? ホーリーイエロー? お前は全く勉強ができないようだな! そんな奴が正義の味方なんて、ちゃんちゃらおかしくて話にならないなぁ!?」
と、その時だった。
イエローはそのままサイコカオスを見上げて固まってしまったのだ。
俺はモニター越しにその様子を見る。
ヘルメット越しに見えるこちらを見ているイエローの瞳は、既にウルウルと潤んでいたのである。




