無残!敗北の悪の首領! 3
「め、面目ない……」
「片岡がまた無駄に心配していたわ。早くサイコカオスの中から出てきなさい」
「す、すまない……」
「世話をかけさせないでよね、全く」
怒りっぱなしの彼女は俺のことを不機嫌そうに睨む。
そうは言っても……そう簡単に悪の仇役が正義の味方を倒してしまっては面白みがないではないか。
テレビでやっているヒーローものでは、大抵一度も悪役はヒーローに勝てずに番組は最終回を迎える。
たまにいい所までは行くものの、結局は負けてしまう。
つまり、俺の知っている範囲でも悪役が正義の味方に勝利した、なんてストーリーは存在しないのだ。
増してや、それが現実で起きるとなると、テレビの模範的な悪役でさえヒーローを倒せないのだから、色々と不完全な現実の悪役である俺が相当に苦労するのは当たり前である。
だからこそ、この俺はいままで苦労してきたのだ。
「ちょっと、聖治。聞いている?」
「え? な、何をだ?」
「聞いてなかったの……呆れた。だから、あの子達に勝てないのよ」
「なっ……そ、それは関係ないだろう……で、なんだ? 今何を話していたのだ?」
真奈は大きく溜息をついて、蔑んだ瞳で俺を見た。
「今日は、お爺様がお屋敷においでになるそうだから、早く御家に戻ったほうがいいのではなくて、と言ったのだけれど?」
「な、なにぃ!? じ、爺様が!?」
それを聞いては俺としても驚かざるを得ない。
三ヶ月に一回でやってくる、あまり来て欲しくない時。
それが俺、梅木聖治の祖父、梅木晋蔵の定期的な来訪なのだった。