激突! 異世界での戦い! 3
「ドクターフェルシル! 今日こそ決着をつけてやる!」
そういって勇むのはホーリーレッドだった。
相変わらず、戦隊モノのお決まりというのを心得ていてくれているようで安心する。
「悲しいですが……アナタが改心しないようでは私達も戦わざるを得ません。ですが、この戦いが終わった後には必ずアナタが悪が間違っているということを理解していただきたいです……」
そして、こちらも相変らず、反吐が出るような格好付けたセリフを吐くのはホーリーブルー。
変身前と全く変わらず、お得意正義の理想主義を述べてみせるのだった。
「よーし! 今日もサクッと終わらせよー!」
そして、緊張感のないのはいつものこと、ホーリーイエローがそう言った。
それぞれの口上は終わった。
いつもなら、俺がこのままサイコカオスを操作して、奴らに殴りかかる。
そして、それを奴らは意図も簡単に交わし、その後、何回かのアクションがあってかたの、奴らの必殺技。
それで、戦闘は終了。あえなくサイコカオスは機能停止し、俺の敗北となる。
「……だが、今日は違うぞ」
俺は小声で槽呟くと、操縦盤に設置してあるマイクに口を近づけた。
「ホーリーセイバーの諸君! 今日は貴様らに聞きたいことがある!」
いきなり響く俺ことドクターフェルシルの声に、ホーリーセイバーたちは戸惑ったようだった。
いつもと展開が違う。それだけでも彼女達にとっては十分に驚くことだろう。
「き、聞きたいことだと?」
戸惑っている様子のホーリーレッド。
「な、なんですか? 何か……もしかして、和平交渉でしょうか?」
相変わらずの見当違いのことを言いだすホーリーブルー。
「違う。そんなことではない。俺が聞きたいのは……ホーリーイエロー。お前にだ」
俺はサイコカオスを使ってホーリーイエローを指差す。
「え……わ、私?」
少し驚いた様子でイエローは動揺していた。
おそらく、イエローの中の人……奈緒のことだ。いつも通りの展開でないということ事態に相当慌てていることだろう。
「ああ。お前に聞きたいんだ。ホーリーイエロー」
「え、な、何?」
俺は一旦間を空ける。
……落ち着け。必ずうまく行く。
俺は深呼吸してから、マイクに再び口を近づけた。
「……515+485は?」
「……へ?」
何を聞かれたのかわからないという風にイエローは首をかしげる。
「515+485だ。その答えをお前に聞いている」
「え、5、51……な、なんで、そんなこと――」
「いいから応えろ!」
俺の剣幕に少し縮み上がったようにイエローはビクンと身体を反応させた。
隣のレッドとブルーもキョトンとしている。
「え、えっと……こ、答えは……」
俺は考えるようにして首をかしげるイエローに狙いを定め、そのままレバーを握る。
「……答えは1000だ!」
そのままイエローめがけてサイコカオスは大きく拳を叩き降ろした。
「危ない! イエロー!」
というレッドの声も空しく、イエローにサイコカオスの拳はクリティカルにヒットした。
そのまま巨大ロボットの拳を受けたイエローは大きく吹き飛ばされた。
「イエロー!」
ブルーが悲痛の叫びを上げる。
俺は操縦席で完全に放心していた。
いや……感動していた。
一撃……ホーリーセイバーに一撃を喰らわすことが出来たのだから。