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後悔なき選択

 かといって、ホーリーセイバーに一矢報いることができるかもしれないと思うと、俺はまた自然と気持ちの悪い笑みがこぼれてしまうのを感じた。


 隣の真奈が怪訝そうな顔で見ているが、関係ない。


 それくらいに俺の中ではある種の昂りがあるのだ。


「ねぇ」


 と、怪訝そうに俺を見ていた真奈が俺に話しかけてきた。


「なんだ。今、作戦を自分の中で確認しているんだ余程重要な話でないなら後にしてくれよ」


「あ……うん。あのね。そんなに余程自信があるから聞いて見たいんだけど……結果を信じていいのかしら?」


「何? どういうことだ?」


「だ、だからね……少しは期待してもいいのか、って聞いているの」


 そう言う真奈の瞳はいつものように俺を冷たく見ているものではなかった。


 それこそ、期待しているように、うるんだ瞳で俺を見つめていた。


 そんな風に真奈に見てもらったのは久しぶりだった。俺としても、そんな風に真奈に見てもらったのは、嬉しかった。


「……ああ。大丈夫だ」


 俺ははっきりと、しっかりと言った。


 真奈はその言葉を聞くとほっとしたように優しく微笑んだ。


 そうだ。成功させてみせる。


 ここまで言い切ってしまったんだ。もう後戻りはできない。


 俺はゴクリと唾を飲み込んで車の中で再び作戦の反芻に戻ったのだった。


 そして、片岡が運転すること10分。


 サイコカオスを格納してある秘密の地下整備上の入り口前で、ベンツは止まった。


「坊ちゃま。到着です」


 停車したベンツから俺と真奈が降りる。


「既にサイコカオスの準備ができているそうです」


「わかった。片岡、また後でな」


 そういって俺と真奈はそのまま入り口へと向かう。


 入口といっても、街のはずれにある廃工場だ。その工場の入り、奥へ進むとエレベーターがある。


 そのエレベーターこそ、サイコカオスが格納されている地下施設へと続くエレベーターなのだ。


「聖治」


 エレベーターに乗り込み、それが動き出す。すると、真奈が俺に話しかけてきた。


「ん? なんだ。真奈」


「二人きりになったから言うんだけど……その作戦、もしかして、横井さんに関係しているんじゃない?」


 俺は思わず目を丸くしてしまった。真奈はなんでもお見通しのようである。


「あー……まぁ、そうだ」


 俺は潔く認めることにした。すると、真奈は少し心配そうな顔で俺を見る。


「聖治……アナタは頭がいいから私が忠告することなんてないと思うのだけれど、その作戦、ホントに実行していいの?」


 そう言われて俺は何かがぐさりと胸に刺さるのを感じた。


 本当に実行していいのか……そんなことは俺だってさっきまで考えていたのだ。


「実行して良いも何も……実行しなければ勝てないんだ」


 俺がそう返事すると、真奈はジッと俺のことを見た。


 その冷たい瞳は俺の心の中まですべて見通してしまうような、不思議な瞳だった。


 そして、しばらくしてから真奈は小さくため息をついた。


「分かったわ。聖治がそう言うならやってみるといいわ」


「あ、ああ……やるさ」


「ただ……後悔は、しないでね?」


 念を押すように真奈はそう言った。俺は何も言わずただ真奈のその不思議な瞳を見返していた。

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