思い立ったが・・・
「片岡!」
俺は学校が終わると即座に片岡が普段迎えに来ている場所。人通りの少ない裏通りに、向かった。
「あ、坊ちゃま。随分とお早いですね」
「ああ! 早くサイコカオスの下に向うぞ!」
俺の様子に片岡は目を丸くする。
しかし、言わずとも理解できたのか、ニッコリと微笑んだ。
「見つけましたかな? 悩みの解決の糸口を」
「ああ……これなら、ホーリーセイバーに一泡拭かせてやることが出来ると思う。今日こそはいつものように惨めに負けることもない」
興奮を抑えながら俺は片岡にそう言った。
片岡は嬉しそうに俺を見ていた。
「へぇ。余程自信があるようね」
と、俺の少し後を着いてきた真奈も興味ありげに俺に話しかけてくる。
「フフフ……ああ。真奈。お前も今日の戦いくらいは、しっかり見て置いてくれ」
「ええ。もちろん、ま、どうせ負けるんでしょうけど、今日はなんだか様子が可笑しいから、珍しい負けた方が見られるのかしらね」
「お前なぁ……まぁ、いいや。今日は久しぶりに俺が悪の組織の首領であるってこと、お前にも思い出させてやるからな」
そういうと真奈はキョトンした。
そして、なぜか少し頬を紅くして俺から目を反らした。
「……せいぜい、頑張って負けることね」
相変らず減らず口ではあるが……今日はよしとしよう。
久しぶりに戦いに対する欲求がある。早く、今俺が思いついた作戦を実行したい。
「片岡。車を出してくれ」
「かしこまりました。坊ちゃま」
俺と真奈が車に乗り込んだのを確認すると、片岡は黒塗りのベンツを早めのスピードで走らせたのだった。
ベンツで梅木家が買い取った広大な敷地、ホーリーセイバーとダークネクロムの戦場までは約10分程度だ。
俺は車の中で必死に今自分が閃いた作戦を反芻していた。
……よし。いける。これならいける。
そして、うまくいけば、ホーリーセイバーを窮地に立たせることもできる。
ただ……問題はある。
果たしてこの作戦を実行していいのかどうか、ということである。
しかし、今の俺にとっては、これぐらいの作戦しか思いつかない。
この作戦にすがることしか、俺にはできないのだ。