弱点の発見
「う~ん! やっと授業終わったね~!」
と、全ての授業が終わったとともに、奈緒が思いっきり伸びをしながら俺の席の方に近づいてきた。
「……お前はほとんど寝ていただろうが」
「えへへ~。どうしても授業を聞いていると眠くなってきちゃうんだよぉ~」
ヘラヘラ笑いながら奈緒は俺にそう言う。
奈緒はいつも元気そのものだし、明るくて性格もいい。おまけに健康的に運動もよくできる。
だが、その代償というか、勉強はからきしダメなのだ。全くできない。
「そんなんじゃ、正義の味方として示しがつかないだろうに」
「え~? そ、そんなことないよ。だって、勉強できなくたって、ちゃんと、聖冶には勝ててるもん」
少し怒った顔で俺にそう言う奈緒。
奈緒のその言葉に俺はちょっと傷つく。
奈緒自身に悪気はないんだろうが、それでも、勉強ができてもホーリーセイバーに勝てないことを考えれば、勉強なんて必要ないのかもしれない。
と、その時だった。
「おーい、お前ら席につけ」
と、教師が帰りのホームルームのために教室に入ってきた。
「あ、じゃ、聖冶、また後でね」
そういって奈緒は席に戻って言った。
「えー、基本的に連絡事項はありませんが……ああ、そうだ。おい、横井! お前、まーた、クラスで最下位だぞ!」
「え? な、何がですか?」
「テストの点数だ! 全く、ちゃんと勉強しているのか? これじゃあ、本当にこれから先、困るぞ?」
教師は困り顔でそう言うと、さすがの奈緒も少し落ち込んだような凹んでしまった。
いつも元気な奈緒を凹ませる方法があるとすれば、それは勉強という言葉を出すことだな。
勉強ができないのが、奈緒の弱点だろう。
「……ん?」
……弱点?
弱点……奈緒は勉強ができない。
それが横井奈緒、ホーリーイエローの弱点。
「……そうか。どうして今まで気付かなかったんだ」
いや、今日だからこそ気付いたのだ。
狡猾であれ、狡賢くあれ、と片岡に言われた今日。
そして、それを悩んで屋上で赤沢、ホーリーレッドと話していた今日だからこそ、ようやく気付けたのだ。
そして、今、俺はホーリーセイバーを圧倒するための策略も思いついた。
それはまさに悪役的閃き。悪の首領らしい一瞬の閃きだった。
「いける……これなら、いけるんじゃないか……?」
俺は湧き上がる悪役的な昂りを押さえられず、不気味にほくそ笑んでいた。
「……ククク……覚悟しろ、ホーリーセイバー……ダークネクロムの恐ろしさ、見せてやろう……!」
俺は周りの生徒が完全に俺のことを気味悪がっているのも気にせずに、いつまでもニヤニヤとしていたのだった。