無残!敗北の悪の首領! 2
俺は溜息をつきながらそちらへ向かっていった。
「あ! おーい、ドクター・フェルシル~!」
と、健康そうな少女がこちらに手を振ってくる。
俺はそれに対してあくまで不機嫌そうな顔で返した。
「ああ。お疲れ様ですわ。ドクターフェルシル」
おしとやかな少女も俺にニッコリと微笑みかけるが、俺はそれにもあくまでブスっとした表情で返す。
「……敵の首領が何の用だ?」
凛とした女の子だけ、俺に対し、まるで親の仇に出会ったかのように睨みつけてきた。
……そうそう。これだよ。これでいいんだ。
「ふっふっふ……ホーリーセイバーよ! 今回も貴様らの勝ちとしておこう! だがな! 世界に闇があるかぎり、決して悪の秘密結社『ダークネクロム』は滅びないことを覚えておくがいい! 次に会うときを楽しみにしているぞ! 諸君! はーはっはっは!」
そのまま俺は学生服の上に来ている悪役の象徴である黒いマントをはためかせ、今一度サイコカオスの中に乗り込む。
そして、コックピットの緊急転送装置のボタンを押した。
サイコカオスの外から「またねー!」という元気な声が聞こえたが、もちろん無視してサイコカオスの転送を開始した。
「……はぁ」
転送が開始されてから、俺は大きくため息をつく。
「……また敗北か……」
ものの数秒で、「次元転送システム」による転送が完了し、俺とサイコカオスは「元の世界」に戻ってきた。
そして、俺は、サイコカオスの中で、悲しげにそう呟く。
「そうね。これで401戦401敗。おめでとう。ドクターフェルシル」
と、モニター画面から声が聞こえてきた。
そこにいたのは、腰まで掛かるほどの長い髪。そして、それと同じくらい真っ黒な瞳の女の子だった。
その瞳は氷のように冷たい印象を与え、それこそ、敗者への侮蔑を露にしているようだった。
「ま、真奈……」
「全く……女の子三人に相手に400連敗なんて……許婚としてこれ以上情けないことはないわね」
鋭く俺を睨みつける少女。
黒田真奈。俺の幼馴染であり、許婚である。
許婚……というのは一般的に将来を誓い会ったもののこと。それこそ、互いを愛し、愛し合っているもの同士のことを言うんだろう。
だけど、その時、真奈が俺に向けているその瞳は決して愛情の一片もあるようなものではなかった。
ただただモニターの真奈の表情からは、敗者に対する厳しい視線が俺に注がれていたのだった。