想像したくないこと 2
結局、昼休みまで俺のもやもやとして気分は続いた。
先ほどの奈緒とのやり取りだってそうだ。奈緒はうやむやにしようとしていた。
それは俺達……つまり正義と悪の戦いをやはり真面目に考えていないのだろう。
そう考えると、益々イライラしてきてしまった。
そんな折のことだった。
「あ……聖治……」
昼休みになって、俺が机で頬杖をついていると、奈緒が話しかけてきた。
「……なんだ?」
思わず俺は不機嫌そうな声で返す。
奈緒はもじもじとしながら、遠慮勝がちに俺を見ていた。
「あ……さ、さっきは……そ、その……ごめんね」
「あ? ああ……別に。気にしてないぞ」
「そ、そっか……あー……ホントの事を言うとね……想像は……したことないな……」
「……何?」
「だ、だって……あ、あんまり、したくない想像だから……」
「したくない、想像?」
「う、うん……せ、聖冶には悪いけど、や、やっぱり正義の味方が悪の組織に負けちゃうのってなんだか嫌だし……」
「だが、あるかもしれないだろう。ホーリーセイバーだって無敵じゃない。俺が操るサイコカオスになんらかの原因で圧倒され、窮地に陥るかもしれない。そうなれば、俺はお前を……」
「……どうするの?」
自分で言っていて詰まってしまった。
俺は、奈緒をどうするのだろうか。
仮に奈緒が俺に負けそうで、絶対絶命に陥った時、俺は――
「答えは決まっています。ドクターフェルシルは容赦なく、私達を追い詰めます」
と、俺が答えを考えていると、割って入ってくる声。
「あ、一条さん……」
そこにいたのは、生徒会長の一条清夏、ホーリーブルーだった。
「横井さん。ドクターフェルシルは悪の組織の首領なのです。私達ホーリーセイバーが窮地に陥れば、間違いなくそれを好機として攻め込んでくるでしょう」
「え、で、でも……」
「相手は悪の組織の親玉ですよ。そういった場合、もしかしたら私達は命を落とすことになるかもしれませんね……」
「い、命……」
不意に奈緒の顔が暗くなる。
純粋で陽気な奈緒なだけにそういったシリアスな話題は苦手なのだ。
昔からの付き合いだけに、そういったことが苦手だというのもわかる。
だから、本当ならば奈緒にはこんな話をするべきではなかったのだ。
「ええ……ですから、私達は常にその覚悟をして戦場に向かうべきなのです」
「あ……は、はい」
既に奈緒の顔は相当辛辣だった。俺とて自分から出した話題とはいえ、そんな奈緒を見ていられなかった。




