老人は斯く語りき 4
「……じゃ、じゃあ、何か? お、お前は、かつてのダークネクロムが行ったように非道な手段に訴えてでも、ホーリーセイバーに勝て、と言っているのか?」
俺が訊ねると、片岡はゆっくりと顔を横に振った。
「そうではございません。ですが、仮に正攻法で勝てない相手ならば、違う角度から責めて見る。そういう考えをできるということこそが、狡猾である……もしくは、ズル賢いと申すのです」
「別の角度から……責める……」
なんだか何かが見えてきそうな言葉だった。
なんだろうか……これなのか? 俺が求めていた転機というのは。
「最近坊ちゃまがお悩みのようでしたからね。私としては危険の伴う世界征服など、手塩にかけてお世話してきた坊ちゃまにはお勧めしたくないのですが、坊ちゃまがしたいと申すのなら、ご協力せねばならぬと思いまして」
「か、片岡……」
「私も悪の組織ダークネクロムの端くれでございます。ただの心配症の老人と言う訳にも参りませんから」
そういってニッコリと笑った片岡は、もういつもの俺が知る片岡だった。
俺は久しぶりに片岡という男が、俺にとってなくてはならない存在なのだということを改めて認識した。
だてに爺様の右腕と言われただけの男というわけではないし、そもそも、それほどの男だからこそ、梅木家の執事をやっているのだ。
「とにかく、坊ちゃま。自分が悪の組織の首領だということを再確認すべきでございます。自分が何者かを分かっている者というものは強いものなのです」
片岡の言葉は一言一言が重く俺の心に突き刺さった。
そして、確実に俺の中で何かを動かそうと言う強い意志へとそれが変わっていくのが俺自身にもよくわかったのであった。