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老人は斯く語りき 3

 片岡は少し間を置いてから俺の方を見た。


「お爺様も、ちょうど坊ちゃまの頃、世界征服を始めたのでございます。私はその右腕として随分と働かさせていただきました。お爺様のお若い頃というのは坊ちゃまによく似ており、非常に頭が切れ、意思の強いお方でした」


 そして、遠い昔を懐かしむように目を細める片岡。


「しかし、一つだけ、坊ちゃまと違うところがありました。それは、悪企みが非常にうまかった、ということです」


「悪企み……」


「ええ。お爺様はいつでも悪いことを考えてらっしゃいました。特にお金のことです。どうすれば自分が世界征服の活動資金になり得る大金を手に入れることができるのか、常に考えてらっしゃったのです。そして、その考えのもとに様々な悪事を働きました。脅迫、恐喝、詐欺……中には言うのもはばかられるようなこともなさっておりましたね……」


「……それは知っている。爺様が若い頃はやんちゃしていたというのは、爺様本人から聞いているからな。だが……それがどう今の俺と関係あるんだ?」


 すると片岡は思いっきり俺に顔を近づけ、肩をぐっと掴んできた。


 それはまぎれもなく今まで俺が見てきた優しい片岡ではなかった。


 瞳の奥から何かしらの力を感じるのだ。強い悪のオーラ、とでも言った所だろうか。


 とにかく、その片岡の表情は悪の組織ダークネクロムの一員の顔だった。


「『悪さ』ですよ。お坊ちゃま。かつてのお爺様にあって、今の坊ちゃまにないものです。お爺様はよく仰っていました。どんなことをしてでも、世界征服をしたい、と。もちろん、私としては、お坊ちゃまに危険な橋を渡るような真似も、若き頃のお爺様のようなやんちゃもしてほしくありません。しかし、もう少しお坊ちゃまには、かつてのお爺様のように悪の組織の首領にふさわしい狡猾さ、ズル賢さが必要なのではないでしょうか?」


「狡猾さと……ずる賢さ……」


 俺は思わず呆然としてしまって片岡を見た。


 子供のころから爺様には、悪の組織の首領として、ホーリーセイバーを倒すためには、人間以上の存在になるべきだと教えられてきた。それは、爺様が俺に授けた英才教育にも出ている。


 だから、俺は今までダークネクロム、梅木家の跡取り息子として、品行方正で、厳格な教育を受けてきたのだ。


 その教育こそが、ホーリーセイバーを倒す最も近道であるとされて。


 だが、俺を今まで育ててきてくれた片岡がここに来て、狡猾さとズル賢さが必要だ、と言ってきた。


 品行方正さと礼儀を重んじる片岡が、だ。

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