老人は斯く語りき 2
「はい。かつてダークネクロムといえば、関係ない民間人を襲う、誘拐する、人質にする……そんなことは日常茶飯事の泣く子も黙る悪の秘密結社でした」
片岡は一言一言、俺に言い聞かせるかのようにゆっくりと喋っていた。
「……そんなことは知っている。だが、それも過去の話だ。今ではそのようなことをすれば世間様に迷惑がかかるし、被害額の請求や賠償金なんかも絡んでくる。そんなことはやりたくてもやれるものではない」
「ええ。その通りでございます。ですから、ダークネクロムは今となっては、正々堂々とホーリーセイバーを倒して世界征服をする、という方針に代わったのでしたね」
「そうだ。だから、俺もネクロム界で正々堂々とホーリーセイバーを倒して、世界を征服する。純粋すぎるも何も、それが全てではないか」
「そう思っている所が、坊ちゃまの純粋過ぎるという点でございますね」
片岡の瞳の奥は鈍く輝いていた。
こんな目の輝きをした片岡は初めてだ。
今まで見てきた片岡はいつも過保護で、俺に対して心配症で優しい目つきばかりを向けてきた。
しかし、今の片岡は、まるでそれこそ、悪の組織の幹部……そんな風な感じの鋭い目つきをしていた。
「な、なんだと……?」
「坊ちゃま。旦那様……かつて崩壊寸前だったダークネクロムをお爺様が如何にしてここまでのものにしたか、ご存知ですか?」
そういって片岡は屋敷の天井を見上げる。そこには巨大なシャンデリアが掛っていた。
「そ、それは……じ、爺様の才能だろうが」
「いいえ。違います。旦那様は正真正銘の悪の組織の首領でした」
片岡はそういってもう一度俺の顔を強く見つめる。
もはや、その瞳は俺の知っている執事片岡ではなく、明らかに悪の組織の一員としてのぎらぎらとして光を放っていた。