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運命の悪戯

 それは、授業が始まってしばらくしてからのことだった。


 いきなり、教室の後ろの方のドアが開く。


 それに対しクラス中の生徒全員が一斉にそちらに振り返った。


 もちろん、俺も。


 見ると、そこには一人の少女が立っていた。


 その姿は一見、可憐な少女だ。髪を頭の後ろで一つに束ね、凛とした雰囲気である。


 しかし、その目を見れば一瞬でその認識は改まる。


 鋭い眼光は見たものを縮み上がらせ、その少女の奥底に秘めた闘争本能を覗かせている。


「……赤沢。また遅刻か」


 教師が呆れたようにその少女に話しかけるものの、少女は応えようともせずにそのまま机に向かって、憮然とした態度で腰を降ろした。


 教師もそれにはもう慣れているという感じで、そのままその少女の言動は無視して、授業を進めた。


 俺は、今やってきた少女の方に顔を向ける。


 すると、その少女の方も、俺の視線に素早く気付いたようで、俺の方にその鋭い眼光を送ってきた。


 俺は思わず視線を反らしてしまう。


 ……相変らず、恐ろしい奴だ。まさに俺の敵としては相応しい。


 しかし、この鋭い眼光で、コイツが正義の味方というんだから、運命というのは本当に皮肉屋である。


 この少女、赤沢暁美の正体こそ、ホーリーセイバーの最後の一人、ホーリーレッドなのである。


 赤沢のことは……あまり俺自身も知らない。


 この一年ホーリーセイバーと戦ってきたが、ブルー、つまり、一条や、イエローつまり、奈緒のことはそれなりに知っているし、つながりもそれなりにある。


 だが、ホーリーレッド、赤沢に関しては、ホーリーセイバーとダークネクロムの戦いの中ぐらいしかつながりがない。


 俺が赤沢に関して知っていることと言えば、ホーリーレッドになる前は、人間の世界でいうと、手のつけられないような不良で、今以上に恐ろしい存在だったという。


 しかし、そんな奴がホーリーセイバーに選ばれたのだ。ホーリーセイバーの選考基準は奈緒や一条にしてもはなはだ不明瞭な点が多いがコイツに関しても疑問である。


 しかし、問題は別に赤沢単体ではない。


 今赤沢は、遅刻だというのに堂々と俺の教室に入ってきた。


 俺が在籍している教室に。


 奈緒、一条、真奈、そして俺のクラスに、である。


 つまり、正義の組織ホーリーセイバーと、悪の秘密結社ダークネクロムの首領とその許婚が、同じ高校の同じクラスで、ともに学んでいるということなのである。


「……ホント、性質の悪い冗談だ」


 俺は小さくそう呟きながら、大きく溜息をついたのだった。

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