美しき青は誠実の証!ホーリーブルー! 3
俺とのやり取りが上手く行かないのがわかると、一条は残念そうな顔で俺を見た。
「梅木さん……よく考えてみてください。悪の組織なんてやめて、普通の人間として暮らしましょう。そうすれば、きっと、世界中から争いが消えて、みんなが平和に暮らせますよ?」
「おいおい……別にダークネクロムが消えたからって、世界から争いが根絶されるわけじゃないだろうが」
「いいえ。ダークネクロムのような危険な組織が消えることは世界中に蔓延る悪の意識というものを消してくれます。ですから――」
と、一条がそこまで言った時、ちょうど一時限目の始業を告げるチャイムが鳴り響き、それと同時に教師が教室に入ってきた。
「残念だったな。お前のご高説は、今日の戦いの時にでもまた聞くことにしようか」
「……私は戦いを望みません。どうか、梅木君。世界征服など諦めてください。アナタのその明晰な頭脳をもっと他のことに……例えば人助けに役立てた方世の為人の為になります」
一条は本気でそう言っているようで、真剣な表情でそう言うと、そのまま自分の席に戻っていった。
奈緒だけでなく、一条も俺と、そして、真奈とも同じクラスなのである。
ほとほと、なんという偶然……というか、もはや何か裏に大きな存在を感じるような運命の悪戯である。
「あ、ボクも自分の席に戻るとするかな。またね、聖冶」
「……ん。じゃあな」
一条と同じように奈緒も自分の席へと戻っていった。
この時点で悪の組織の首領と、正義の味方のメンバー二人が同じ高校の、同じクラスということになる。
それだけでももう十分に俺としてはあきれ返ってしまうくらいの話だ。どうして、正義の味方と悪の組織の首領が同じ場所で、同じように学生生活を送らなければいけないのか?
確かに普通の一般的な庶民生活を知るために俺は松竹高校に入ったわけであるが、まさか、こんなにも身近にホーリーセイバーの存在を感じることになるとは思っても見なかったのである。
しかし、残念ながら、事態はこれで終わりではないのだ。