美しき青は誠実の証!ホーリーブルー! 2
「……いいですか? 梅木君。建造物を壊せば被害を請求されるから、人的被害を及ぼせば損害賠償を求められるから……そういって、ダークネクロムは街中で侵略行為をすることはなくなりましたわ。代わりに、元々棲んでいた異世界で正義の味方であるホーリーセイバーと戦い、決着をつけることで世界征服を成し遂げようとしている……そうですよね?」
「あ、ああ。そうだな」
「しかし、考えてみてください。どこの世界に世間様に迷惑をかけるから、といって侵略行為をやめる悪の組織がありますか? 梅木君。その時点で、既に、ダークネクロムは悪の組織としての機能を失っているのですわよ」
「……すると何か? ダークネクロムはもっと街中であっても侵略行為をしたほうがいいっていうのか?」
「そういうわけでは……ただ、私としては、そんな矛盾だらけの世界征服なら、いっそのことやめてしまった方がいいのでは、と申し上げているのです」
出た。もうお約束だ。
世界征服なんて、もう辞めた方がいい。
これがホーリーセイバーの一人、青いバトルスーツに身を包むホーリーブルーの決まり文句である。
一条清夏。奴こそ、ホーリーセイバーの一人。ホーリーブルーである。
その可憐な容姿。俺ほどではないが、明晰な頭脳で、現在松竹高校の生徒会長を勤めている一条清夏。
しかし、その正体はホーリーブルーなわけであるが、奴は奈緒のように、選ばれてホーリーセイバーになったわけではない。
奴は元々ホーリーセイバーになることが決まっていた。奴は、初代ホーリーセイバーの一人の子孫である一条家の一人娘なのだ。
よって奴も俺と同じように、小さい頃から正義の英才教育を受けてきた。
しかし、その教育は、ダークネクロムのような超人的な人間を作る教育ではない。
一条が学んできたのは、如何に人間というのがすばらしく、尊いものか、そして、平和が如何に美しいかを延々と学ばせるようなものだったらしい。
結果として、一条は、誰もが憧れるような理想の人間となったが、同時に聞いていて反吐が出るほどの理想主義者になってしまったのである。