孤独な愛しい人
「……いや、アイツがホーリーセイバーに選ばれた理由はもっと性質が悪い」
「え? どうして?」
と、その時だった。
『皆さん。おはようございます。本日は全体朝礼です。皆さん、速やかに校庭に集まるように』
「お、噂をすれば、一条さんだ」
透き通った声がスピーカーから流れる。
その声から、既におしとやかで、美しい少女を連想できる程に。
しかし、俺としてはその声を聞いた瞬間虫唾が走るというか、反吐が出るというか、そんな感じだった。
「ほら。聖冶。校庭に行こう」
「……ああ」
仕方ない。とりあえず校庭に出るか。
俺は渋々、奈緒と一緒に校庭に出ることにした。
と、教室を出る瞬間、教室の隅に座っている真奈を見る。
真奈は俺以上に孤独である。
今まで小学校から高校で、真奈が学校で誰かと喋っているのを見たことはない。
大丈夫なのか、と心配になるが、あの強気な真奈のことなので、心配することもないだろう、と思ってここまで来てしまった。
その時も、真奈は椅子に座ってつまらなそうに、虚空を見ていた。かと思うと、俺の方に顔を向ける。
「聖冶。何やってんの?」
「え? あ、ああ。今行く」
そして、奈緒と連れ立って教室を出て行こうとする俺に、真奈は思いっきり責める様な瞳で俺を見てきた。
な、なんだというのだ……しょうがないだろうが。
確かに正義の味方と仲良くする悪の首領なんて言語道断だとは思うが……俺と奈緒は敵同士である前に幼馴染同士なのだ。そんな風な目つきをされる謂れはない。
俺は真奈を睨み返して、そのまま教室を出たのだった。