幼馴染と悪の首領
「……考えていたんだよ。お前のことを」
「えぇ~!? ちょ……い、いやだなぁ~……せ、聖冶には真奈ちゃんっていう、将来を誓いあった人がいるじゃないか」
「……そういうことを考えていたんじゃない。どうして、お前のような奴が正義の味方のホーリーセイバーに選ばれて、悪の組織、ダークネクロムの首領であるこの俺と戦うことになったのか、ってな」
目をまるくしてキョトンとする奈緒。
そして、少し考え込むように腕を組んで唸り始めた。
「う~ん……なんでだろうね?」
もちろん、次に返ってきた言葉は拍子抜けするものであった。
「……ホーリーセイバーに選ばれるのは心の清い人間だからな。常に何も考えていないお前は、確かにそういう意味では、心が清い……いや、清いっていうか、白紙って、言えるか」
「は、白紙って……そ、そんな褒めないでよ~! 照れちゃうなぁ」
「……全く褒めていないぞ」
嬉しそうに頬を染めてニコニコする奈緒。
こんなんだから、戦闘中でも、奈緒には全く緊張感が感じられないのだ。
まるで、今までの幼馴染同士の遊びの延長線のように俺と戦っている気がする。
そんな風に遊び感覚で戦っている奴にも勝てないというのだから、俺としても、なんというか思い悩んでしまう。
「あ、でも! ボクは心が清いかどうかはわからないけど、一条さんはきっと、心が清いからホーリーセイバーに選ばれたんだよね?」
興味ありげに奈緒は俺にそう聞いてくる。
しかし、俺は一条、という名前を聞いた瞬間に露骨に嫌そうな顔をする。