平穏!悪と正義の日常! 4
「大体、悪の組織の首領なら悪の組織の首領らしく、もっと派手にやるべきなのよね。いつまでも三人の女の子相手にうだうだ戦っていないで、もっと他のことに目を向けたら?」
「お、お前……そ、それはダメだ。いいか? 何度も言っているが、ダークネクロムの宿敵はあくまでホーリーセイバーなのだ。そのホーリーセイバーを倒して初めて世界征服が成立する……よってだな、ダークネクロムはホーリーセイバーと戦わなければいけない宿命にあるのだ」
しかし、納得できないという顔で真奈は俺を睨みつけていた。
正しいことを言っているはずなのだが……なぜこんな表情で見られなければいけないのだろうか。
「……なんでもいいけど、何か楽しいこと、ないかしらね……」
結局、またつまらなそうな顔で窓の外を見る真奈。
なぜだろうか。真奈に関しても最近どうも違和感がある。
そりゃあ、元来が皮肉屋な性格だった真奈だが、俺が世界征服に乗り出した一年目は、真奈としてももう少し、俺の戦いに興味を持ってくれたし、俺の話にも真面目に付き合ってくれた。
だけど、ここ最近になってどうも真奈は俺の世界征服という事情そのものに全く興味がなくなってしまったかのように、俺を見る目もどこか冷め切っているのだ。
これはもしや、真奈こそ、爺様が言っていた倦怠感やマンネリを感じているのだろうか……
「坊ちゃま」
と、俺がそんなことを考えようとした折に片岡が運転席から話しかけてきた。
「そろそろ到着か?」
「はい……よろしいのですか? いつもの場所で」
「ああ。そこで降ろしてくれ」
「……坊ちゃま。しかし、私、今も思っておりますのですが……坊ちゃまにご足労させるなど、梅木の家に古くから仕えている私としては――」
「片岡。いいから、いつもの場所で降ろせ」
片岡はやはり納得できなそうな顔で、それからしばらく進んだ先に渋々車を止めた。
俺と真奈は車から降りた。