さよならダークセイバー
「と、いうことですので、私はすぐにでもこのお屋敷を出て行きます」
あまりにも唐突な物言いに俺は面喰っていたが、そう言われて俺は一条……つまりダークセイバーが組織を抜けると言っていることに気付いた。
確かに今回の戦い、完全にダークセイバー任せであったわけではあるが、曲がりなりにもホーリーセイバーとの戦いでホーリーセイバーを完膚無きまでに叩きのめすことができた。
しかし、それはつまりダークセイバーのおかげなのである。
そのダークセイバーが組織を抜ける……ダークセイバーがいなくなる。
それはつまり現在のダークネクロムにとっての大幅な戦力ダウンになってしまう。
それは……困る。
今回の戦い、完全に圧勝だったのだ。
それなのに、ダークセイバーが今いなくなるのは困るではないか。
いや、そもそも、一条が組織をやめるのはいい。
問題は、バトルスーツだ。
一条に渡したバトルスーツ、及び変身システムは、俺が無理を言って作らせたもので、しかも、ホーリーセイバー相手に一定の戦果をあげた。
そんなバトルスーツを、正義の味方の組織にそのまま持っていかれてはたまらない。
俺は、にわかにそのことに気付き、慌ててしまった。
「あ……わ、わかった。それは別にいいが……変身システムは、返してもらうぞ」
「ああ、それでしたら、ご心配なく。既に返却しました」
「え? そ、そうなの?」
「はい。ですから、問題、ないですよね?」
そう言われてしまっては俺もなにも言えなくなってしまった。
確かに何も問題はない。というか、元に戻るだけなのだから。
「あ、ああ。まぁ、そうだな」
「ふふっ。よかったです。では、ごきげんよう」
そういって一条は俺に背を向けた。
「ああ。そうそう。梅木君。やはり、もう少し敏感になった方が、良いとは思いますよ」
「え? あ、ああ……」
「でないと……赤沢さんや真奈さんが、かわいそうですから」
「……は? え、ちょっと……ど、どういうこと?」
「ふふっ。さぁ? ご自分で考えてください」
それだけ言って何がおかしいのかわからなかったが、とにかく笑って一条はそのまま廊下を歩いて行ってしまった。