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征服の理由

「……やめて、どうするんだ?」


「ええ。もちろん、正義の味方に戻るのです」


 一条はそれも特に何事もなかったかのように言ってのけた。


 戻る……ということはホーリーセイバーに復帰する、ということか。


 その言葉を聞いて俺は、驚くとともに、どこか安心してしまった。


「あ、ああ……そうなのか」


「あら? 止めないのですか?」


「え……いや。まぁ……お前がそういうなら……止めないけど」


 そういうとなぜかわざとらしい態度で、一条は肩をすくめてみせた。


「はぁ……だからアナタは鈍感なのですよ」


「え……な、何が?」


 しかし、一条はただただ俺のことを見るだけで、それに対して返事をするどころかただただ馬鹿にしたような表情で俺を見ていた。


「な、なんだよ……」


「いえ。なんでもありませんよ。とにかく、私は辞めますので、そういうことで」


「あ……辞めるのはいいんだけどさ……お前、さっき片岡にやられた時、大丈夫だったのか?」


 俺がそう訊くと、一条の表情が変わった。先ほどまでの俺を馬鹿にした顔から、キッと真剣な顔になった。


 それこそ、まるでいつもネクロム界で戦っているときのような表情。戦闘態勢の時の表情である。


「……梅木さんは、なぜ悪の組織の首領をしているのですか?」


「……え? なぜ?」


「ええ。どうしてです?」


 一条はそんな風に聞いてきた。


 其の時、俺は何を聞かれているのかわからなかった。


 なぜ……なぜ?


「な、なぜって……それは……」


「自分が悪の首領だから、っていうのは理由になりませんよ? なぜアナタは悪の組織の首領なんです?」


「なぜって……世界制服のために決まっているだろう」


「世界制服? ふふっ。世界征服、したいのですか?」


「それは……したいに決まっているさ。聞かなくてもわかるだろう?」


「では、なぜしたいのです? 世界征服」


 俺は段々混乱してきてしまった。


 なぜ……理由。


 俺が世界征服をした理由。


 それは、世界征服こそ、ダークネクロムの悲願だからだ。


 そして、それをしようと思ったのは俺の意思。爺様に言われたからとかそういうことではない。


 でも……だったら、俺自身はどうだ?


 俺自身がしたいのか? 世界征服。


「ふふっ。答えられない、ようですね?」


 嬉しそうな顔でそういうのは一条だった。その声を聞いて俺はようやく我に返った。

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