順番が大事
「あー……すまん。彩子」
何と言っていいかわからなかったので俺はまずは謝った。
彩子は悲しそうに俯いているだけだ。
彩子的には結構悲しかったようである。
「その……なんというか。俺も舞い上がっていたというか……ホントにすまん」
「……いえ。謝っていただくなんて……ただ、私はロボットです。サイコカオスの一部なのです。御主人様に使っていただいて戦う事が幸せなんです……だから……」
そういって彩子は俺を見つめてきた。そんな風に見つめられてしまっては相手がロボットだとわかっていても、申し訳ない気分になるし、益々いたたまれない気持ちになってしまう。
「あ、ああ……わかった。とにかく! 今後は、初心に帰って、きちんとサイコカオスで俺自らが戦う! それで、いいかな?」
そういうと彩子は嬉しそうに頷いた。
そして、片岡の方を見る。片岡もそれを見てコクリと頷いた。
「まぁ、彩子に関しては坊ちゃまのことをよくわかっております故、この程度で許してもらえるでしょうな」
「え……そ、それって……」
俺がそういうと初老の男性は、鋭く目を光らせて俺を見た。
「ええ。残る乙女二人は少々、面倒なことになっているということです」
面倒、と言う言葉を聞いて俺は正直、ものすごく気分が重くなった。
もっとも、悪いのは俺自身なのだけれど。
「ど、どうすれば、いいかな?」
俺は助けを求めるように片岡に訊ねる。
片岡は真顔のままで俺を見返してきた。
「そうですね……ここで重要なのは、順番です」
「順番?」
「はい。坊ちゃま。どちらの乙女とお話をしようと思っていましたかな?」
「え?」
そう言われて俺はハッとする。
確かにここで俺はどちらのもとに向かうのが正解なのだろうか。
真奈か、それとも一条か。
おそらくどちらかの下に向かえば、どちらかは放っておかれたと思うのではないだろうか……
「坊ちゃま。御理解いただけましたか?」
「……ああ。わかった」
「坊ちゃま。ああは言いましたが、一条様も今はダークネクロムの一員でございます。私のせいではございますが、深く傷付いておられます。ですから、よく考えて行動なされませ」
「え……お、おい。片岡、俺は……」
俺がそう言うと、片岡はニッコリと俺に微笑んだ。
「ふふっ。坊ちゃま。申しあげたでしょう。悪の組織の首領に必要なものは、様々な物事にきちんと気付く、敏感な精神なのですよ」
そういって片岡は食堂から出て行ってしまった。
その後を彩子もトコトコと、まるで親鳥についていく雛のように付いて行った。
残されたのは俺一人。
「……敏感な精神、か」
俺は大きくため息をついた。
どうやらやはり、またもや俺はとんでもない間違いをしていたようである。
なんというか……ダメな悪の組織の首領である。
しかし、果たしてどうしたらいいのだろうか。
俺には二つの行動選択がある。
一つは真奈の所に行くといいうことであり、もう一つは一条の下に向かうということである。
……いや、片岡の言ったことはまさにその通りなのだろうが……どうしたものか。
「……まぁ、両方は、無理だよな」
俺はそういって立ち上がった。
無論、立ち上がった時点で、どちらに向かうかは決まっていたのだけれど。