悪の組織の手下とは 2
「……は、ははっ……冗談が過ぎます。片岡さん。本気で私と戦うと言っているんですか?」
呆れてしまって何も言えないという風で、一条はそう言った。
「はい。そうです」
しかし、片岡は特に気にせずにそう言った。
それを聞いて、さすがに我慢の限界がきたのか、目を鋭くして一条が片岡を見た。
「……いいですか? 私が変身すれば、生身の人間の軽く十倍のパワーを持つんですよ? 其れに対してアナタは……本気で戦おうというんですね?」
「はい。喋ってないで、さっさとかかってきたらどうですか?」
その言葉が完全に引き金となった。
一条は右腕を前にかざす。そして、一瞬のうちに黒いスーツを身にまとった。
「お、おい! 本当に戦うのか?」
「……聖治様。申し訳ありませんが、もしかすると、聖治様のお世話係を再起不能の状態にしてしまうかもしれませんが……よろしいでしょうか?」
清夏は本気でそう言っているようだった。
「お、おい! 待て! そんなのいいわけないだろうが!」
さすがの俺もそれに対して止めようとする。
「いいのですよ。坊ちゃま」
しかし、それを拒んだのは、俺が心配している片岡本人であった。
「お、おい、片岡……」
「お忘れですかな? この片岡もダークネクロムの一員なのですよ?」
「そ、それはわかっているが……」
俺は清夏の方を見る。しかし、清夏は戦闘状態を解除する気は全くないようだった。
「と、いうことみたいですね。よろしいですよね? 聖治様」
俺はもはや何も言えなかった。
「ご主人様! いいんですか!?」
不安そうにそう言うのは彩子である。
「……わからん。片岡が何をしたいのかも……」
俺はいつも俺のことを心配してくれる初老の男性を見る。
しかし、その目はいつも通りの俺に対する優しげな目ではなかった。
前に俺に「ずる賢くあれ」と言った時のあの目……悪の幹部にふさわしい、鋭い目つきだったのだ。
「では……行きますよ!」
先に動いたのは清夏だった。
こうしてなし崩し的に、ダークセイバー一条清夏と、梅木家執事片岡五郎の、一対一の戦いが始まってしまったのである。