強襲! 闇の乙女! 3
「ああ、フェルシル様、終わりました」
外に出ると、嬉しそうな顔でヘルメットを外した清夏が、黒いスーツのままでこちらへやってきた。
「あ、ああ……よくやったぞ」
思わず俺としてもあまりのことになんと言っていいかわからず、ぎこちなく清夏を褒めることにした。
すると、一層笑顔になって清夏は俺に微笑んだ。
「……えっと、で、あの二人は……」
と、見ると、倒れていたはずのホーリーセイバーの一人、レッドの方が起き上がっていた。
そして、悔しそうな顔で俺達を見ている。
「え、ちょ……お、おい、赤沢……大丈夫か?」
あまりにもボロボロなので、思わず自分が悪の首領であることを忘れてしまった。
「……ふざけるな!」
しかし、次にレッドが発したのは、そんな怒声だった。
心のそこから、あの不良の赤沢暁美が怒っている、ということがよくわかった。
「……なんですか。そんな大きな声を出して」
呆然としている俺に対し、清夏は落ちついた、というよりも冷酷にさえ感じられるこえでそう言い放った。
赤沢は清夏を睨みつけたままで、横で気を失っている奈緒を背中に担いだ。
「……おい、一条……お前が勝手に正義の味方をやめるってのは勝手だ……だがな……ここまで元仲間を痛めつける必要があったのかよ……!」
「痛めつける? どういうことですか? ただ私達は戦っていただけですよ。痛めつけてなんかいません」
「……知っているだろうが。私はいいが、横井はお前相手に戦えるわけないだろうが。それなのに、こんなになるまで……」
確かに酷いものだった。レッドもイエローもスーツはボロボロである。
ここまでスーツがボロボロになったホーリーセイバーはここ一年の戦いで見たこともない。
「ああ、そうですか。ですが、私はもうホーリーセイバーではありません。貴方達がどうなろうと、私の知るところではありません」
さすがにこの言葉には俺も驚いてしまった。
いくらなんでもあんまりだ。かつての仲間に対して使う言葉ではない。
「お、おい、清夏。それはいくらなんでも――」
「フェルシル様は、黙っていてください」
俺が口を開くと、清夏は笑顔のままでそう言った。
その表情がそのまま「何も喋るな」と言っているのは俺にもわかった。
しばらく俺、清夏、赤沢は黙ったままだった。
そして、しばらくしてから、赤沢が一層きつくにらんだのは、俺だった。