第2話 プロジェクト *COOL*
醜い雄叫びを上げた俺は、こっぴどく母にしかられた。
「だって、しょうがないじゃないか 悲しい現実を突き付けられたってのに…」
帰りの時の情景が思い浮かび、再び一人絶望した。
今思ったがなぜ、あの3人はあんなに仲良さげだったんだろう。
「あっ、そういうことか」
俺は、3人の仲の良さに合点がいった。
俺が入学した高校は、中高一貫の高校で俺は編入生として入学した。つまりあの3人は中学からの幼馴染的な感じだということにすると、あの関係も説明がつく。
「くそっ、つくづく羨ましい奴だな」
美少女幼馴染2人とか前世でどんだけ徳積んだんだよ。
風呂と夕食を済ませた俺は、自分の部屋の真ん中に設置してある円卓に突っ伏していた。
「俺のキャッキャウフフのラブコメ生活を送るにはどうすればいいものか…」
「あ!そうだ!」
なぜ俺は、知識の宝物庫(本棚)にある *あの存在*を忘れていたのだろう。
そう、それは…ラブコメライトノベルだぁぁぁ!
「くっ...なぜ俺は、忘れていたっ…!理想のラブコメは全てこの本たちに詰まっていることを…!」
本棚に並べてある大量のライトノベルたちを円卓に山積みに置いた。
「うんむ、実にいい光景である」
これほどラブコメという科目に特化した教科書はない。
俺は、その山積みの本の中から無作為に5冊ほど
選んだ。
「この山積みの教科書達を全部読み漁り…げふん、げふん 教科書達から勉強したい気持ちは山々なのだが…」
早速明日から実践するためのものなので、あまり時間をかけられない。
「まぁ、仕方ない」
そして俺は、円卓の上にラノベをかっぴらき(開き)視覚に全神経を注ぎ
ページをパラパラめくり始めた。
「はぁ…はぁ…」
なぜ息切れをしているかと疑問に思うかもしれないが、それには、俺のある特技が関係している。
それはズバリ、ラノベ一冊を物の30分で読破できてしまうことだ。だが、代償として、100mを全力疾走した時と同じ疲労を感じるという欠点がある。
…ん? なんか聞いたことあるって? それは紳士だけの秘密さ!
突然だが、なぜ俺がこんなにもラブコメに執着しているか気になっているかもしれない…それには深いふかーい理由があるが、今回は割愛させてもらう。
「こ、これだぁーーー!」
この5冊を読み、俺は、ある一つの主人公の共通点を発見した。
「この圧倒的かっこよさ、そしてどことなく漂うミステリアスな雰囲気…そう!クールキャラだ!」
そういえば、女の子は、ミステリアスの男が好きという記事を前に見た気がする。
「なら早速、行動開始だ」
俺は、読み終えた勢いのまま一冊のノートを机の引き出しから取り出した。
「うーん。作戦名はどうしようかなぁ…」
「まあ、適当にクール作戦、いや*プロジェクトクール*これでいこう」
ノートの表紙の左上にそう書いた。
「まず、クールキャラの掟その1
『感情を表に出さない』 これは正直必須だろう」
「次に、掟その2 『会話のテンポを少し遅らせる』
まあ、余裕のある雰囲気を出すためにはいるよな」
「掟その3 うーん、他にあるだろうか...」
そのとき、一枚の写真が落ちていることに気づいた。
「なんだこれ...あー懐かしいなこれ」
その写真は俺がまだ、小学生3年生の頃のものだった。写真には、俺と女の子2人が写っている。
「二人とも元気してるかな...」
この際だから言うが実は俺は、元子役だった。
この写真は同じ子役仲間で結構仲が良かった。
俺は、あることが原因で子役をやめた。
どうも俺は演じることが苦手だった。いや嫌いの方が正しいか。
子役としての活動を続けていく中で俺の心はどんどん疲弊していった。
演じるにあたってあまりにも自分の役にのめり込むせいか今の自分は本当のありのままの自分なのかが分からなくなって、パニックになることが多くあった。
それで演技することが嫌になり、俺は短い子役人生の幕を閉じた。
唯一の心残りは、あの二人に別れを告げられなかったことだ。
「俺はまた演技するのか...」
今から自分がすることは演技と同じだ。クールという一つの*キャラ*を演じるのだから。
だがクールキャラを演じることに不思議と抵抗はなかった。あれほど演技が嫌いだったのに...
「何やってるんだ俺は、早く掟の3つ目を考えないと...」
俺はラノベの内容を思い出す。
「そうか、主人公たちは口数が少ないんだ。
ってことは」
カキカキ
「掟その3 『余計なことは言わない』これだな」
「よし、これで俺の立ち回りの方針が決まった」
「って、もうこんな時間かよ!?」
夜更かしすると明日に響くのでもう寝ることにした。
ピピピピピピピ…カチッ
「はぁ〜ねみぃ〜」
朝起きた俺は、朝ごはんや歯磨きなどを済ませ
自分の部屋に戻った。
今日の朝の登校から俺のプロジェクトクールは実行に移される。
「これでも元子役、やってやるぜ!」
そう意気込み俺はノート片手に家を出ようとしたが
「あっやべ、忘れてた」
毎朝恒例のラノベ一礼を忘れていた。
「行ってきます」
俺の演技は玄関から既に始まっている...
「いってらっしゃーい、気をつけていきなさいよー」
ガチャン
「クールキャラってたしかこんな感じだったよな...」
俺はそう言って、自分のポッケに手を突っ込み
肩で風を切るように学校への道を一歩一歩歩みを進めた。
だがこのときの俺は、自分のクールキャラがただのナルシストだったことに気づいていなかった、そしてそれがあんな事件を引き起こすことになるなんてことをーー
学校に着きテストを済ませた俺は、ただ1人、
机で腕を組み、来たる時を待っていた。
「フッ、ついにこの時が来たか」
そう、クラスでの第一印象が決まる大事な行事
『自己紹介』の時間が来たのだ。
これで俺がミステリアスな雰囲気を演出をすることで女子生徒達は俺のことが気になって気になって夜も眠れなくなるだろう。
(フフフ...完璧だ)
(待ってろ...!俺のラブコメ生活!!)
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最初は1500文字程度で考えていたのですが気づいたら2000文字超えてました(笑)
あと前回の投稿から結構な日数が立っていました。すみません。