第1話 俺の希望が打ち砕かれた件について
俺の名前は怜太 「一ノ瀬 怜太」 だ。
突然だが単刀直入に問う。
理想のラブコメとは一体どのようなものなのだろうか。
いつも通り学校に登校すると、謎の美少女転校生が登場、自分の隣の席に着席し、優しくそれまた可愛い笑顔で
「おはよう! 一年間よろしくね!」
と声をかけられ、その笑顔に心を奪われてしまった主人公は頬を赤らめ、おどおどしながらこう返す
「お、おはよう、よ、よろしく」
と、そこからは笑いあり、涙ありのそれはまさに青春とも言える生活を送り、最終的には彼氏彼女となる。
と、まあ、こんな感じなのだろうか、現実的なことを言わせてもらうとこんなことは万に一つの確率でも起きない、こんなものは所詮理想でしかないのだ。妄想にすぎないのだ!
そう、妄想に過ぎない、美少女幼馴染も美少女転校生も美人生徒会長もこの世には実在しないのだ!
これは全ラブコメ生活を理想とする男共が受け入れなければならないこの世の真実だ。
明日は高校の入学式、どうせ平凡でつまらない生活が待っているのだろう。
「もう寝るか…」
もう1時を回ろうとしている時計を横目に俺は眠りについた。
~翌日~
「忘れ物なし、身だしなみOK」
「よし…」
玄関を出ようと思った時
「あ、忘れてた」
俺は部屋に向かい部屋の一角にある、大量のラブコメライトノベルが並べてある本棚に一礼をし、家を後にした。
教室に着いた俺は、黒板に貼られてある座席表を確認し、自分の席に着いた。
「ふぅー、主人公席ではないけど、一番後ろの席で良かった」
なんとか、一番後ろの席に座ることができたな。でも、登校時間が早かったせいか、教室には2,3人ほどしか人がいない。
ここは先に自己紹介をしに行くべきだろうか、んーー
俺は考えた、それも…かなり長く
長考した結果、
「まあ、どうせ後からでも大丈夫だろ」
いきなり自己紹介とかちょっと馴れ馴れしいしな
俺は自己紹介をしに行くことをやめ、家から持参したラノベを読み始めた。
ガヤガヤガヤガヤ
本に夢中になっていると、気付くと教室は生徒でいっぱいになっていた。
辺りを見回して見ると・・・
「ん?一体どうしたんだろうか」
なんかやけに人が主人公席の隣の席に集まっている気がするのだが…
「おい・・・ちょっと待ってくれ」
俺の視線の先には、黒髪ロング美少女がいた、いかにも清楚で品行方正な感じな
び・しょう・じょ だ!!
かわゆい笑顔で周囲の人間に微笑んでいる。うん、可愛い
ああ、神よ、あなたはこの私を見捨ててはいなかったのですね、、
その容姿に加え、立派なものをお持ちとは…恐れ入った
こ、これは・・・
ラブコメきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
俺は心の中でガッツポーズをした。
ガラガラガラ
なにっ!? 扉の音が聞こえた俺は、視線を扉へと移し、入ってきた生徒を見た。
「う、噓だろ・・・」
OMG 俺は、持っていたラノベを机に落とした、それはまるで殺人犯を目撃したOLがバックをおとすかのように
そこにいたのは、金に輝く艶のある髪、思わず見入ってしまう綺麗な瞳
そう!金髪美少女きたぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ふ、フハハハハハ 悪いなラブコメを夢見る男共もよ、俺には楽しい楽しい学校生活が保証されたようだ。
こんな今まで平凡でつまらない人生を送っていた俺にも春が来たんだ。
だが、落ち着けよ俺、ここから重要になってくるのは『立ち回り』だ。ラブコメで鍛えた俺のラブコメスキルで、今後の立ち回り方を考えるのだ。
誰にでも優しいイケメンキャラ? それとも鈍感系主人公? それとも…
あああああ
なんて難しいんだ、相似の証明くらい難しいじゃないか
まあいいじゃないか、美少女が2人も同じクラスに来たんだ。今はその余韻に浸ろう。
「はーい、皆さん席についてください」
先生がやってきた
「ごほん、皆さんおはようございます。このクラスを担当させて頂きます。木下 沙耶香です。
よろしくお願いします」
タッタッタッタ
おや?なにか廊下を走る音が聞こえるな。そういえば主人公席が空席なのを忘れていたな。
ガラガラガラ
「すみません、遅れました!」
その瞬間教室がざわついたのが分かった。
それは同時に俺のラブコメ生活のエンドロール(始まってすらない)が流れた瞬間でもあった。
そこにいたのは、今テレビで噂の天才子役 『一条 凍矢』だった。
周りにいた女子たちがコソコソと かっこいい イケメン ひゃーーー などと声を発している。
俺は思った。なんて残酷な世界だ。と
「初日に遅刻ですか、早く席についてください」
「は、はい、すみません。」
頭を掻きながら、一条は席に着いた
「入学式が始まるので、皆さんは廊下に整列してください。」
木下先生は、そう指示し生徒たちを誘導した。
入学式
「生徒会長、あいさつ」
そう言われ、体育館ステージの横から生徒会長が歩いてきた。
もう、俺は驚かなくなっていた、うすうすそんな気もしていたのだ。
そこにいたのは、普段からちゃんとお手入れされているのだろう長い白髪に、吸血鬼を彷彿とさせる赤い瞳の美人なお姉さんだった、
Oh shit なんということでしょう、いかにもラブコメしてくださいと言わんばかりの要素が詰め込まれているではありませんか。
「はぁー、今日はびっくりすることの連続で疲れたな」
入学式も終わり、ちょっとしたホームルームをして、その日は下校となった。
自己紹介等々は明日するらしい。テストがあるとも言っていた。
とぼとぼ一人で歩道を歩いていると、視線の先に黒髪ロングの美少女が見えた。
後ろ姿も素敵なだなぁ
タッタッタッタ
ドン
「いて」
誰かが俺にぶつかったようだ。
「あー!ごめん」
そう言い残して走り去っていった。そいつは一条だ!
あいつあんなに急いでどうしたんだ?
「よっ、葵」
「わっ!なんなのよいきなり、驚かせないで」
「ごめん、ちょっと驚かせたくて」
そう一条は笑いながら言い、黒髪ロング美少女の隣に立って歩き始めた。
だよな…そうだよな…明らかに主人公だもんな、その時俺の視界が少しぼやけたのは、墓場までの秘密だ。
「また、同じクラスになったな」
「うん、そうだね」
タッタッタッタ
おい待てよ、なんか走ってくるのが聞こえるな
「おーい!葵ー!凍矢くーん!」
そう言いながら肩にバックを掛けて走ってくる『金髪』美少女がいた。
まてまてまてまて待ってくれ
あいつ主人公すぎるだろ、ラブコメ主人公より主人公してやがる…。両手に華 いかにもという感じゃねえか。
「もう、おいてかないでよー」
「ごめん、ごめん」
凍矢は、息を切らしている金髪美少女をなだめるように言った。
そんな他愛もない会話を聞きながら、俺は我が家へと足を進めた。俺は上を向いて歩いた。
なぜかって?そんなこと聞かないでくれ、もうわかってるだろ?
家に着き、部屋に戻ってバックをベットにぶん投げた俺はこう叫んだ
「ラブコメなんて妄想でしかないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「怜太、うるさぁぁぁぁぁい!!」
母さんにしかられた。
ふ、フハハハハハ
神様はここまで俺という存在にラブコメ要素を与えてくれたんだ。虎穴に入らずんば虎子を得ず だ。
俺は諦めない!絶対に最高で青春なラブコメ生活を送ってやるぜ!
だが、俺はまだ知らなかった。この*最悪*が俺のラブコメのプロローグに過ぎないことを――
初めましてみそぐです!ラブコメアニメを見るのが好きで、自分も何か一つ作ってみたいなと思って作ってみました。
拙いところもあるのですが、おもしろい、続きが気になる と思った方は是非
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