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事情聴取

 そこは砦とは言っても監視塔の下にあるそれほど大きくない二階建ての建物。そこからは胸ほどの高さの木の柵が延々と続いていた。


 建物と柵のずっと先に見える大きな砦と強固で高い塀が明確な防衛ラインである。国土はライスーンの半分にも満たないが、その分明確な領地防衛をおこなっているのだ。

 その小さな砦の一室で、エリオパーティーは調書を取られていた。


「君たちはいったい何者だ。いくらライスーンの民だとしても重罪人であるならば相応の対処はしなければならない。その中にはとうぜん強制送還もある」


 『強制送還』という言葉を聞いたマルクスは固まった。


「まずは名前からだな」


「騒ぎを起こしてしまい申し訳ありません。俺はライスーン王国のビギーナの町の冒険者……だった者で、名をエリオ=ゼル=ヴェルガンと言います」


「ヴェルガン……。どこかで聞いた名だ」


 少しだけ考えてからサクガンはポンと両手を叩いた。


「そうか。ライスーン王国の冒険者百選に新規加入した新鋭の名だ」


「ライスーンの冒険者百選をご存じなんですか?」


 他国に名前を知られている冒険者はそれなりにいるが、冒険者百選に入ったばかりのエリオが知られていることは意外なことだった。


「友好関係にあるとはいえ、他国の情報は常に調査して把握するのは当たり前だ。半分趣味ではあるが冒険者百選や十闘士、それに国の勇者はチェックしている。ヴェルガンの名は期待の新星として紹介されていたから覚えていたんだ」


 続いてエリオの他の三人も名前を名乗り、同じくビギーナの町の元冒険者だったとあかした。


「だった……? 君たち全員、冒険者を引退してニーヤ村に行くのか?」


 そのことが引っかかったサクガンに、ギルドを登録抹消された理由を説明する。


「……そのときに魔族の儀式に遭遇して、その儀式の妨害をするために魔道具を奪ったんです。その魔族は魔道具と龍脈の力を利用して昇格の儀をおこなおうとしていたようで」


「その魔道具があれか?」


 話しの途中にサクガンは壁際のテーブルに置かれた魔布に包まれた物を指さした。


「そうです」


 それはビギーナを出る前にエリオが作った魔道具モドキだ。かなりの厚みがある直径四十センチほどの円盤状で中心にはレンズのような物がある。用途は魔道具を狙う者や魔族の目を本物からこちらに向けさせることだ。


「で、いろいろ(・・・・)あったんですけど、この魔道を具持ち出したら国から危険視されてしまって。追われてしまうようになったんです」


「確かに大量の魔力を溜め込んでいるようだが、国が君らを追いかけてまで手に入れたい物だろうか……?」


 話の流れには問題はなくとも理由としては弱い。それはエリオたちもわかっていた。だから、それを納得させるとまではいかないまでも、少々後押しするために、いろいろ(・・・・)について話すのだった。


 魔族から奪った魔道具をめぐるこの出来事は、命の石のことを伏せなければならない。なので、国から追われることは不自然と思われてもしかたがない。そのため、魔族にも追われることを利用し、魔道具モドキの価値を不明瞭にすることで誤魔化すことにした。


 エリオから詳細なことの成りゆきを聞き終えたサクガンは、魔道具を手に取って魔布をめくってマジマジと見た。


「町とギルドを追い出されるとはな。その魔族はそんなに強いのか?」


「はい。ギルド長は元十闘士のゴレッド=モリンミートです。その彼を含めた王都騎士など二百名以上でも勝てない相手ですからね」


「ゴレッド? 元十闘士で勇者と一緒に戦ったこともあるゴレッドがか? それは確かに危険な魔族だ」


 サクガンはゴレッドの強さをよく知っているようで、ひどく驚いていた。


「そのなんちゃらガールってのが来なかったら命がなかっただろうな」


「彼女が次も来てくれる保証はありません」


「ニーヤ村に住むのであれば呪印はあったほうがいい。その呪印を手に入れる手段がこの魔道具であり、それが結果的にその魔族に対抗する方法になるわけか」


「そうです」


 皆で考えた物語はそれなりに筋が通っているはずだが、とうぜんその中には嘘もあるし伏せていることもある。


「ライスーン兵は外患罪(がいかんざい)などと言っていたが、この魔道具がそれに値するような大きな事態を起こしているようには思えん。うーん、魔道具というよりも魔族のほうに何か関係あるのだろうか……」


「我々にもよくわかりません。なぁみんな」


 仲間たちは揃ってうなずく。


「その魔道具ですけど、その魔力を追って魔族がやってくるかもしれません。なのでその魔布(まふ)で包んで遮断してください」


「そうか、すまない。そんな魔族が来たら大変なことになるな」


 サクガンは慌てて魔道具を魔布に包んだ。


「いちおう今夜はこの魔道具を預からせてもらう」


「はい」


「明日もう一度、話を聞かせてもらって、問題なければ解放しよう。なので今夜は少々硬いベッドで寝てもらうが、それは了承してくれ」


「俺たちはお客さんってわけじゃないし、奴らに捕まることと比べたら天国です」


 エリオたちは地下の拘留室に案内された。拘留室は犯罪者を放りこむ牢とは違うので、質素ながらもそれなりの部屋となっている。そんな部屋がそれぞれにあてがわれた。

読んでいただきありがとうございます。

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