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VS 角無しの魔族(ROUND-3)

 その頃、魔道具を持って人知れず町から離れていたセミールは、追いかけてきた魔族に襲われていた。上空から撃たれる魔法をかろうじて避けながら逃げ回るのだが、それも長くは続かず追いつめられてしまう。


 魔族の視線を受けた彼は、巨木を背にして心身ともに震えあがっていた。


「貴様には見覚えがあるな。山で大蛇が現れたときと、小さな町に行ったときにいた奴か」


「ひ、ひぃぃぃぃ。お、お、覚えてるのかよ」


 セミールは足腰に力が入らず動けない。エリオの話になんて乗るんじゃなかったと、人生最大の後悔の真っ最中のセミールに、魔族の男はこう告げた。


「境界鏡を渡せ。素直に差し出せば痛みなく殺してやる」


「逃がしてくれるんじゃないのかよぅ!」


 この叫びは彼が人生で二番目に強い思いを込めたモノだった。


「はぁ? 俺の大事な物を盗んだ奴を生かしておくわけがねぇだろ! 痛みなく殺してやるのは、俺の手をわずらわせずに境界鏡を渡す者への慈悲だ。俺はそういう優しさも持っている」


 むちゃくちゃな論理に「そんなの優しさじゃねぇよ!」と心で叫んだ。そして、ぐしゃぐしゃな顔で泣きながらの次の叫びが、彼の人生で最も強い思いを込めたモノとなった。


「助けてぇぇぇ、アルティメットガァァァァァル!」


「こんな森の中に都合よく助けが来るか。来たところでこの俺に勝てるわけが……」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


 返事と共に飛んできた彼女の蹴りが魔族をくの字にして蹴り飛ばした。


「ぐほっ」


 魔力結界を突き破ってなお衰えない威力の蹴りを受けた魔族は、木々をなぎ倒し土埃を巻き上げ飛んでいく。


「セミールさん。間に合って良かったです」


「ア、ア、ア、アルティメットガァァァァル。ありがとぉぉぉぉ、ありがとぉぉぉぉ」


 ボロボロと涙を流し鼻を垂らしながら感謝を伝えるセミールを見た彼女は、ちょっと引き気味の表情でこの場を離れるようにと告げた。そして、魔族が吹き飛んだ方向へと視線を移す。


「もしかして、あいつ生きてるのか?」


 視線をそのままにコクリとうなずく彼女を見たセミールは、四つんばいのまま森の木々のあいだに入っていき、大きな木の裏に身を隠した。


 アルティメットガールが蹴り飛ばしたことで、森の中には細い一本の道が出来上がっていた。その先からゆっくりと地面の上を滑るように飛んでくる魔族の男。その姿を見て彼女は声をかける。


「あなた、このあいだの戦いの傷が治ってないじゃない」


 ボロボロのフードケープの下の体には痛々しい傷が見えている。それが今の蹴りの傷ではないと彼女は感じ取った。


「痛々しい傷ね。大丈夫? 無理しないで家で休んでなさいよ」


「貴様が付けた傷だろうが!」


「あなたの投げた玉コロでしょ。飛んできたら蹴り返すのが礼儀だわ」


「ほざけ!」


 フードケープを引き千切って怒りのままに力を解放する魔族は、体はボロボロで乱れはあれど、前回よりも明らかに強かった。


「毎度毎度不意打ちしやがってぇぇぇぇ!」


「仕方ないでしょ。緊急性のある現場に出くわしちゃうんだから。それが嫌ならわたしが出てくるまでおとなしくしてなさいよ」


 大きめなゼスチャーでそんなことを言うアルティメットガールを見て、魔族の男は額に浮かんだ血管が切れそうになるほど怒りの炎をたぎらせた。


「そんな体でわたしと戦うつもり? 万全な状態でも勝負にならないのに」


「俺がいつ万全だったと言うんだ?! 一度目は油断もあったが昇格の儀の後遺症があった。二度目は町に張られた結界と術式で弱体化もしていただろうが!」


「確かにそうね」


 アルティメットガールは腕組みしながら思い返す。


「結界もない術式もないこの場なら、俺の本来の力が出せる」


「本来の力ってどのくらいなのよ」


「ふふふ。俺様の本来の力はな、あのときの三割増しだぞ!」


 その言葉にアルティメットガールは目を見開き驚きの表情を見せた。そして、それを見ていた魔族はドヤり顔で彼女を見据える。


「た、た、た、た……」


「……た?」


 怪訝な表情で復唱する魔族にアルティメットガールは言った。


「たったの三割増しなの? 二倍三倍なのかと予想してたからびっくりしちゃった!」


 さっきのドヤり顔はどこへやら。拳をプルプルと震わせて、再び怒りの表情をあらわにした。

読んでいただきありがとうございます。

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