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戦う覚悟

「パール、グレンを持ってきて」


「え? 戦う気なんですか?! 無理ですよ。そんな体で戦えっこありません!」


 パールは涙目で訴えるがエリオは譲らない。


(どうしてだろう? 勝てないってわかっているのに、彼には絶対の自信がある。それと異常に強い覚悟。そんな心の色をしている)


「エリオさん、無茶しないでください」


 不可解な心の色味を感じたハルカも彼の身を案じて言うのだが、エリオは首を横に振った。


「俺とザック、ギルド長に衛兵長。それとセミール。この五人なら撃退できる可能性はあるんじゃないですか? それにギルドの仲間と町を守る兵士が何十人もいますし」


「ですが、エリオさんは酷い怪我をしてます」


 パールの目から涙の粒がポロポロと落ちた。その彼女の心が発する色を拾ったハルカの胸がギュッとなる。


「頼むよ。グレンがないと俺は素手で戦わなきゃならないからさ」


「俺の王具ガンドアームズも持ってきてくれ。たまには使ってやらんと錆びちまう」


 そこまで言われたパールはギルドの地下倉庫に向かっていった。


「勇者と共に魔族と戦ったゴレッドさんがいるなら心強いです」


「さっきも言っただろ。あいつは強い。おまけに俺は五年のブランクだ」


 ゴレッドの表情を見てレミとマルクスはさらに緊張を強めた。


「なら、魔道具を持って町を出ましょう。そうすれば町の被害だけは防げます」


 このハルカの提案にリオーレ兄妹は開いた口が塞がらない。


「ば、ば、ばかなこと言わないでよ。死ぬわ! あたしたちが殺されちゃうでしょ! あんたはたまに突飛なこと言うけど、今回はそれの最たるものだわ!!」


「そうだな。町の外に出るのは頂けない。今この町には魔族に備えて退魔結界と対邪力減衰大規模魔術陣が敷かれている。呪力が続く限りはここにいるほうが安全だ」


「だから襲ってこないのですね。で、その結界ってどれくらい持つんですか?」


「魔族が出た今は全力運転中だろうから、日没まで持つかどうかって感じだろう。それまでには王都から援軍が来るはずだ。俺たちも準備を万端にするぞ」


 ゴレッドがそう気合を入れたときだ。


「動くぞ!」


 その叫びに、まわりの者がいっせいに空を見上げた。


 腕組みのまま微動だにしなかった魔族が翼を大きく広げて急降下し始めた。町を覆っている退魔結界と接触して電撃のような光を弾けさせたが、そのまま結界を突き抜けて地上に向かってくる。


「おい、まさか!」


 地面直前で急制動をかけた魔族が降り立ったのはギルドの前だった。


「ここにあるんだな。【[[rb:境界鏡 > きょうかいきょう]]】が」


 自分たちに向けられた言葉に身を固め、マルクスとレミは逃げることすらできない。


「なぜここにあると?」


 焦り声のゴレッドの問いに魔族はギロリと睨みながら答えた。


「境界鏡の力が漏れない場所に隠していたんだろうが、一瞬その力の波動を感じた」


 エリオはハッとなり、ゴレッドは舌打ちする。


「保管庫を開けたからか」


 王具を取りに行ったパールが保管庫を開けたことで、魔道具の力を察知されてしまったと気づいたからだ。


「まぁ、こいつらがいるんだ。間違いないだろうな」


 エリオ、リオーレ兄妹、ザック、ハルカと視線を向けて、最後にセミールを睨みつけた。


「ひぃぃぃぃ」


 ひと通り見回した角無しの魔族は、傲岸不遜な態度でエリオたちに告げた。


「さぁ決めろ。死ぬのと殺されるのはどっちがいいかを」


 一方的な生殺与奪。理不尽な二択がそれを顕著に示していた。


「ど、どっちも同じじゃねぇか!」


 マルクスのツッコミに魔族は笑い、レミはその笑いに恐怖する。


「よ、余裕ぶってるけどな、この町には強力な魔術陣が張られているんだぜ。結界を破ったってかなりのダメージがあるんだろうよ」


 マルクスの言うとおり、退魔結界を突き破った魔族にはそれ相応のダメージがあった。対邪力減衰魔術陣も魔族の力を抑え込んでいると感じられる。このことがマルクスの勇気を後押ししたのだが、次の瞬間にその勇気は吹き飛ばされた。


「散れ! マリスハリケーン」


 振るった腕から巻き起こった風の渦がエリオたちを吹き飛ばし、ザックの大盾を巻き上げた。ギルドの扉や壁も破損し、近くにいたセミールは魔族の前に落下する。


「うわぁぁぁぁ」


 バタバタしながら起き上がった彼が四つん這いのままでゴレッドの後ろに隠れると、この場に立っている者はザックとゴレッド、ハルカの三人だけとなった。


「ハルカ、大丈夫なのか?」


 どうにか踏みとどまったザックの言葉にハルカは慌てて答えた。


「え? あ、はい」


(今のは吹き飛ばないといけなかったよね。ついふんばっちゃったわ)


「ま、魔法です。風の魔法で耐えました」


「魔法で耐えただと?」


 ハルカの回答が気に入らなかったのか、魔族はハルカを睨んだ。


「おい。もう一度耐えてみせろ」


(えー、ちょっと個別の対象にしないでよ!)


 軽く腕を上げた魔族に対して、ハルカはしかたなく杖を突き出し法名を叫んだ。


「ガンヴォルトバースト」


 電撃を帯びた空圧弾の大きさが、ハルカの魔法の非凡さを顕著に現している。その魔法が空気の破裂音とバチッという電撃音を入り混ぜて撃ち出された。


「フェイタリティーブロー」


 ほぼ同時に魔族の放った強烈な突風の魔法が、風電の砲弾を吹き散らして彼女を飲みこみ吹き飛ばした。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 きりもみ状態で吹き飛ばされたハルカの叫び声が遠ざかり、建物の向こうに落ちていく。仲間たちは驚きと悲痛に満ちた声を上げてそれを見ていた。しかし、なぜか魔族の男も少し驚いたような表情でハルカを目で追っている。


 そんなハルカは皆の視界から消えた瞬間に変身のボイスキーを口にした。


「リリース・アルティメットコート」


 ハルカのボイスキーにチョーカーのシンボルが反応し、バレッタから光の液体が流れ出だした。着衣を取り込み全身を覆う光はトリコロールのスーツとケープに変化して、黒髪を赤みを帯びたブロンドヘアーに染め上げる。ハルカがふわりと地面に着地したとき、その姿はアルティメットガールへと変わっていた。

読んでいただきありがとうございます。

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