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決戦【プロローグ】

イメージイラストを追加しました。

作中雰囲気を感じて読んでもらいたいです。

挿絵(By みてみん)


 2〇XX年 某日


 日本の東京湾に建設された新世紀エネルギー研究所にて、善と悪の決戦がおこなわれていた。


 人の闇から生まれたとされる黒い念。善と悪の混沌は許さず、すべてを黒く染めるために世界にあらゆる悪意を振りまき、人類を咎人へと落とす者。黒い霧に包まれた謎の存在。名をネガという。


 そんな悪と戦うのは、英雄豪傑、疾風迅雷、勇気凛々、優美光明、深沈厚重、不撓不屈、勧善懲悪、天下無双。究極を体現したスーパーヒーローのアルティメットガール。


 派手なトリコロールの全身スーツの胸にサンライトイエローに輝くエンブレムを配し、背中には長い深紅のケープをなびかせる。ひと目で正義とわかるアメコミヒーローのような姿だ。


 年の頃は二十歳に届くかどうかと言われているが、その正体は一切不明。


 世界の平和を望み、常人には手に負えないあらゆる脅威から人々を救う彼女は、人類の敵対者であるネガと二年ものあいだ戦い続けている。そして、その戦いは今まさに決着を迎えようとしていた。


 アルティメットガールに追いつめられたネガは、新世界エネルギー研究所に逃げ込んだ。その施設のコントロール室でシステムを掌握し、防衛システムを使ってアルティメットガールに抗っている。


 しかし、それも彼女の思惑であり、その施設の動力炉を暴走させてネガの完全消滅を狙っていた。


「あなたを完全に消滅させるためにはこれくらいのエネルギーは必要なの。万が一にもわたしの力だけでは足りないなんてことがあっては困るから、こうなるように仕向けたのよ。名演技だったでしょ?」


「狙っていたというのか?!」


「あなたとはそこそこ長い付き合いだからね。お父さまにシステムのセーフティーレベルを下げておいてもらったわ。わたしたちがそれをやったら怪しまれるから、あなたに動力炉の暴走を手伝ってもらったってわけ」


 アルティメットガールの拳がさらに強く光る。ゆるぎない心こそ、彼女の力の源であり、ネガにとって致命となる危険なモノなのだ。


「たとえあなたがこの施設のどこかに逃げ込むことができたとしても関係ない。この世界の次元を打ち破って跳躍するようなエネルギーが一瞬であなたを消し去るわ」


「そんなことをしたらこの施設だけではなく、日本を越えて数万キロが消滅するぞ!」


 人々に絶望を与える者が絶望の声で叫ぶ。それに対してアルティメットガールは優しくも冷たい言葉で返した。


「言ったでしょ。この世界の次元を打ち破って跳躍するって。あなたを消滅させる爆発自体もこの次元から飛ばすから心配ないわ」


「次元からも飛ばす……だと? そうなれば、さすがのオマエも死ぬのだぞ。それでもいいのか?」


 この問いに彼女は一瞬だけ言葉を詰まらすも、澄み渡る空のような心で微笑みながらネガに答えた。


「やり残したこともあるし、これからやりたいこともある。欲しいものもいっぱいあるし、手に入れられなかったモノも数えきれない。でも、あなたがいる世界でそれは叶わない。だから、あなたのいない来世で叶えることにするわ」


 この状況に笑みさえ浮かべるアルティメットガールを見たネガからは、彼女がこれまで感じたどんな負の感情よりも強く、汚く、荒々しい激情の色が発っせられていた。


「未練を残した死の間際でさえ笑うだと?! ゆるさん! オマエは絶望と悲嘆と恐怖と後悔と嫉妬と憎悪と空虚の中で死んでいかなければならない! いや、ワタシがそうやって殺さなければならないのだ!」


 だが、そんな呪いの言葉を彼女はすべて受け流す。


「さよなら、ネガ。あなたとの宿命は今日で終止符よ」


 拳を体側に引き絞ったアルティメットガールに向けて、臨界まで高めた動力炉のエネルギーですべてのレーザーが撃ち出された。しかし、アルティメットガールから放たれる力によってレーザーはかき消されてしまい彼女には届かない。


「アルティメット……」


 次の瞬間、紫電が駆け抜けた。


「スーパーライト!」


 残光を引く究極の正拳がネガを打ち抜き、解放された彼女の力が内側から弾ける。その直後、臨界を超えた動力炉の光がすべてを飲み込んだ。


 音さえも消し去ったように沈黙する研究所跡地。その反動によって猛烈な風が集まって暴風が吹き荒れる。球形に抉られたその場には、ネガとアルティメットガールの痕跡など微塵も残っていなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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