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終生のアストログラム  作者: 浅海幹太
1/1

荒廃した人間界で天使は少女と出会い、人の生を知る旅へと出る

 初投稿となります。浅海幹太と申します。

 初投稿ゆえに稚拙な箇所もあるかと思いますが、温かい目で最後まで読んでいただけると幸いです。


 それでは、どうぞ。

 


 廃墟はいきょと化したちた住居。そこに身をひそめ、今にもくずれ落ちそうな薄壁うすかべに寄りかかる。

 壁がわずかにゆがみ、きしむ。


 金切かなぎり声にも似たような音は私の背、耳と順に伝わり、この世のかなしみを訴えているように思える。

 だが、かなしみは一つにしてあらず。それを物語ものがたるかのように壁の向こう側から悲鳴ひめいが聞こえる。


 今日もまた、つみなき人々が町の広場に連れてかれ、燃やされた。

 悲しいことに、この世界ではそれがさも当然のごとく受け入れられ、行われる。

 なぜなら、彼らも弱者側の人間だったからだ。


 弱き者は強き者に支配され、利用される。


 それが概念がいねんとしてではなく現実として存在するこの世界では、弱者は強者によって町という名の監獄かんごくとらわわれ管理される。


 その人の一生も、生き死にも、全て。


 しかし、それも仕方のないことだ。文明も資源も、今や、ほとんど失われてしまったのだ。

 人類が辿たどった歴史を記録に残せないほど、建物の修繕しゅうぜんすらままならないほど、人間の知恵はそこなわれ、資源も底をついているのだ。


 それゆえ、人類は他人を制し、人の一生を管理するしか命をつなぎ止めるすべを見い出せなかった。

 そのすべが文明の衰退すいたい拍車はくしゃをかけるとも知らずに。


 結果、人の世は人類が人間を管理する、完全管理社会へと変容へんようした。


 一縷いちるの幸せを求め、営みを送る。

 そのような生き方する者など、もう、どこにもいない。


 私は上司であり天使のおさであるファリエル様に「人が救いの手を差し伸べるに値する存在かを見定めよ」と命じられ、人々の観測を行ってきた。


 しかし、その任も終わりが近いかもしれない。


 むねつの重苦おもくるしい空気がため息となって外へとき出る。

 こうしている合間も、生をなげく悲鳴は鳴り止まない。


 私は壁から身を離し、立ちあがろうとした。が、身体は重く、この身をゆかへとたたきつけてくる。


 視界がかすみ、ぼやけ、まぶたが落ちる。


 人の身で居続けた反動だろうか、それとも、ただの気疲れだろうか。

 私の意識は急激に押し寄せる睡魔すいまむしばまれ、微睡まどろみの中へと落ちてゆく。

 せめて、この世が夢でありますようにと願って。


                       ◆


 あたしはケッコンする相手も、何歳で死ぬかも決められている。

 それは誰もが同じで、あたしだけの決まり事じゃない。


 でも、あたしはやぶってしまった。

 ついこの間、死ぬことになっていた友だちを管理者の手から逃がし、町の外へと連れて行ってしまった。


 皆は当然、こんなあたしを許さなかった。

 わざわざ町の外まで連れ戻しに追いかけて、あたしの身を拘束こうそくした。

 あたしは決まりを破ったばつとして、定められた人生を明日死ぬだけの人生へと変えられてしまった。


 そして、その時が来るまで、今、目の前に聳え《そび》立つ家屋かおくで過ごすことになっている。


 見上げるほど大きな家屋。とは言え、大きいだけで外観がいかんがオンボロなのは他の家屋と変わりがない。壁にヒビや穴がたくさん。ホコリのにおいもほんのり感じる。それでも、雨風あめかぜしのげる場所で過ごせるのだから感謝した方がいいのかも。

 それに管理者はこちらに気をつかったのか、ここに来るまでの道のりに同行人どうこうにんけなかった——見張みはりの人が四、五人、こちらをチラチラ見ているけど——。

 けれど、おも(おも)しい空気は感じなかったし、なんだかんだ気負きおわず、迷わず、ここまで来れた。



 あとは明日が来るのを静かに待つ、それだけ。これであたしの人生は終わりをむかえる。



 本当に短い人生だった。振り返るとそう思う。


 監視かんしの人によると、あたしは十五年、生きていたらしい。

 それがどれくらい長い人生だったかは分からない。

 けれど、三歳と呼ばれていた頃に、監視かんしの人のズボンの穴に指を入れ、それを広げようとしたのが、ついこの間のように思い出せるのだから、短い人生だったんだと思う。

 あとは監視かんしの人のヒザ裏を手で押してみたり、監視の人の上着のすそにぎってあおいで風を送ったり。そのたびにこっぴどくしかられていたっけ。


 でも、何だか楽しいことばかりだった。そんな気がしてる。


 ……次はどんな人生になるんだろう。


 想像に心の高まりを感じながら、一晩ひとばんを過ごす家屋かおくとびらの前に立つ。

 身の丈の二倍はある両開きのとびらに、思わず息をんでしまう。


 でも、もう覚悟かくごは決めたんだ。


 ここで迷う理由なんてない。


 だから、あたしは扉を開いた。

 扉の向こうは薄暗うすぐらく、先が見えない。

 一歩踏み出すごとに床板ゆかいた不気味ぶきみな音を立て、あたしに引き返せとうながしてくる。


 ——でも、もう決めたから——。


 そう心につぶけば、おそれも何も感じなくなっていた。

 ずっと、ずっと。真っ暗な部屋の中をあてもなく歩いた。


 どこへ行ってもずっと暗闇くらやみの中。代わりえのしない真っ黒な風景ばっかり。

 これなら、どこへ行ってもきっと同じ。

 それなら、歩き疲れるまで歩いて、つかれたら寝よう。


 なのに、あたしはただ、上を目指していた。


 その場に足を止めて、そのままてしまえば良いのに。

 自分でもよくわからない。

 ただ、不思議と上には何かがあるような気がして。そんな気がして。

 だからあたしは暗闇くらやみの中を歩き続けた。


 真っ暗な部屋の中、わずかに見える物体の輪郭りんかくを頼りに進み続ける。

 すると、暗闇くらやみの奥深くにななめ上にびる手すりが見えてくる。


 階段だ……!

 思わず、うれしくなってけ足になる。

 どこからどう見ても階段だ。やっと見つけた。


 やっとの思いで見つけた階段の手すりにつかまりながら、一段一段、慎重しんちょうに登っていく。

 途中、2回ほどつまずきそうになった。

 けれども、絶対落ちたくない。その一心いっしんで階段を登り切った。


 ふっ、と目の前がひらけて、周りが明るくなる。


 月明かりだ。


 月明かりがあたしを呼んでいる。

 こっちに来てと呼んでいる。

 あたしは月明かりにみちびかれるまま、光の先へと進み続けた。


 月明かりはあたしをある部屋へとみちびいた。

 ベットが二つ、タンスが一つ備え付けられた寝室しんしつだった。

 それ以外は特に特徴とくちょうのない質素な寝室。


 人生最後を過ごす寝室しんしつがゆったりとられそうなところでよかった。

 胸の奥で確かな安心感を覚える。


 あたしはベットに身をゆだねるつもりでけ寄った。

 ホコリっぽくても固くないところでられるだけ幸せなのです。


 ほほゆるみを感じ、鼻歌も歌いたくなる気分になる。

 しかし、その気分はベットの横まで来た時に、全て、どこか遠くへ飛んでいった。



 ベットの横で天色あまいろかみの女性が横たわっていた。



                       ◆


 あたしが寝ようとしていたベットの横で、天色あまいろかみこし辺りまでのばした女性が横になっていた。


 天色あまいろかみの女性なんて今まで一度も見たことない。

 その物珍ものめずらしさについ身をかがめ、顔を近づけてしまう。


 彼女はスースーと寝息ねいきを立てながら眠っていた。

 ただそれだけなのに、どこか気品を感じる。ほのかにいい香りがするし、心が安らぐ感じがする。どうしてだろう?

 その疑問の答えは何だろう? と、考えれば考えるほど、彼女の顔が近くなる。


 ひざゆかにつけ、手を床につけ、体を床につける。

 彼女と向き合うように横になると、あたしは更に顔を近づけた。


 自然と彼女のほほに手が伸びる。彼女のはだれた時、あたしがここまで近付いたその訳が分かった。


「あの、大丈夫ですか?」


 ほほから伝わる体温が、彼女の心のこごえを伝えていた。


                       ◆


「……の、……ぶ……か」


 遠い、遠い意識の中、誰かが外界から声をかけてくる。

 正直、もう少し寝ていたい。そんな気分なのだ。

 ファリエル様からおしかりをいただくことになってしまうが、それでも今はそっとしておいてほしい。


 再び眠りにつくため、まぶたを深く閉じる。が、ほほに何かがれていて寝付ねつけない。

 ほほれる未知の存在へと手を伸ばし、はらい落とそうと触れてみる。

 私の頬を触れていたそれは思いの外大きく、そして、温かかった。


 一体、何に触れたのだろうか。


 その正体を確認するべく一度閉じたまぶたを開くと、ウェーブのかかった蜜柑色みかんいろかみの少女が目の前で横になっていた。


「目、赤いですよ?」


 少女は私のほほれながら、不思議なものでもみるかのように新橋色しんばしいろひとみを私の瞳に向けていた。


 人間から容姿を不思議に思われることには、もう慣れている。

 ゆえに、今まで会ってきた彼らと同じ対応を彼女にもとる。


「元からこういう色なんだ。気にしなくていい」


 少女は私の言葉を聞くなり、さらに顔を近づけてくる。

 余程、興味をかれたらしい。

 彼女はひとみの奥を覗く《のぞく》ようにじっと私の目を見つめた。


「すごく綺麗きれいひとみ……。でも、とても悲しそう」

「悲しい? 気のせいじゃない?」

「ううん、そんなことないよ。心が泣いてる」

「君、変わっているね」

「あはは……よく言われる」


 少女は苦笑くしょうかべながら、私のほほからさっと手を離し、少し距離を取る。


「あ、ごめんね。何も言わずにほほさわっちゃって」

れた後に言うんだ」

「なんか気になっちゃって、つい」

「まあ、別に気にしていないから」

「そ、そうなんだ」


 少女はバツがわるそうに目を泳がせると、再び目線をこちらへと向けた。


「ところで、あなたの名前を教えていただけないですか?」

「何で敬語?」

「こ、こういう時はちゃんとしないといけないかなと思って!」

「さっきのこと、本当に気にしてないから」


 少女は「本当に?」と不安そうにこちらを見つめている。最初の印象とは打って変わり、みょううたぐり深い彼女に違和いわを覚えるが、何か事情でもあるのだろうか。


 私は不安げにこちらを見つめる彼女に対し、言葉を続ける。


「いつも通りの話し方でいいよ。その方がたがいに話しやすいと思うし」

「う、うん。わかった」


 彼女は何かを思案しあんするように再び目を泳がせると、ぎこちない口ぶりで問いかける。


「えっと、あなたの名前は何て言うの?」

「セラス」


 もちろん偽名ぎめい……ではない。が、素直すなおそうな彼女に対し、わざわざ偽名ぎめいを使う理由がかばない。それゆえの本名である。


 名を聞かれたら聞き返す。人同士が行う対話たいわのイロハにのっとり、私も聞き返す。


「君の名前は?」

「あたしはシュクラン。その……よろしくね」

「よろしく」


 彼女とは長い付き合いになるとは思わない。が、とりあえず建前たてまえ上の言葉を返す。

 これも、人間界に降り立ち、得た知見ちけんだ。


 たがいに自己紹介しこしょうかいを終えると、シュクランは落ち着かない様子のままだまんでしまった。

 同じ空間に対話たいわができる者がいる中で、沈黙ちんもくの時間が訪れる。

 私自身、彼女にたずねることが特に思いつかない。ゆえにただ静かに横になるだけである。


 外を歩く人の足音がかすかに聞こえてくる。

 それにしても、その数が少し多い気がするのだが、何か大事でもあったのだろうか。

 そのようなことを思案しあんしている最中さなか、少女は沈黙ちんもくえきれなくなった様子で、私に疑問を投げかけ始めた。


「セラスはどうして、この家にいるの? 管理者の人からここに住め、って言われたの?」

「管理者?」

「うん。管理者。——もしかして、知らない?」

「知らない」

「じゃあ、セラスはどこに住んでいるの?」

「……」


 流石に天使たちが住まう天界に住んでいるとは言えない。そのため、私は抽象的ちゅうしょうてきな言葉で事実をつつかくすことにした。


「外かな」

「ほんと?」

「うん、ほんと」


 シュクランの目にほんの少し力が宿やどったような気がした。彼女の興味をくことなど一言も話していないはずなのだが……。

 私が考えをめぐらせ、次の行動を思案しあんしている中、彼女は言葉を続ける。


「それなら、早めにこの街から出た方がいいよ」

「どうして?」


 人の世をめぐる中で理由は大方おおかた理解しているが、話を合わせるため、あえて無知むちよそおう。


「この街には管理者っていう、人のにを管理する人がいて、その人につかまると一生をこの街で過ごさないといけないの」

「シュクランもそうなんだ」

「……うん」


 シュクランはまゆひそめ、顔をしかめた。彼女はその表情のまま「だから」と前置きを入れ、話を続ける。


「明日にはこの街を出た方がいいよ。特に明日の朝は見張りの人が少なくなるからその時がいいと思う」

「そうなんだ」


 彼女は相槌あいづち肯定こうていしめすと、身を起こし、笑顔を作った。


「あたし、明日の朝に街の広場で殺されちゃうから。みんなそこに集まると思うの」


 誰から見ても空元気からげんきに見える作り笑いだった。


「だから、明日の朝にげろ、と」

「うん。そういうこと」


 ……なるほど。


 彼女は自分よりも他者を優先ゆうせんする人柄ひとがらのようだ。話の合間あいまにさりげなく相手の心境しんきょうや考えに探りを入れていたことにも納得がいく。

 私は彼女の性格を理解しながら、自分の今後の動きを伝えることにする。


「解った。一眠ひとねむりして朝になったら、様子を見てここをつよ」

「うん、その方がいいよ」


 シュクランは笑顔をくずすことなく同意をうながした。


「さーて、と」


 彼女は声を出すと共に身をばすと、ベットの上に座りむ。そして、軽くベットをたたくとほこりった。


「うわっ、たたきすぎちゃった」


 彼女はほこりに背を向け、軽くせきむと横になったままの私へと顔を向けた。


「あたし、ここでてもいい?」

「どうぞ」

「ありがとう」


 勝手にても誰もとがめはしないだろうが、シュクランはその辺りは気にするらしい。やはり変わり者だ。

 変わり者な彼女はベットの上で横になると、体で大きくだいを作る。なんともびとした様子でベットの寝心地ねごこちを確かめると、横へと寝返ねがえりを打ち、私の顔をのぞいた。


「ねえ、セラス」

「ん?」

「外の世界で生きるのって大変?」


 彼女の言う外の世界とは天界ではなく、この街の外のことだろう。それを踏まえ、私は今まで見てきた外の世界の実情を考慮こうりょし、話す。


「食べ物は少ないし、それを求めて歩き回れば腹をかせた生き物たちにおそわれる。慣れない人は苦労すると思う」

「そっか……。やっぱり、外の世界って大変なんだ」


 明らかにトーンを落として話すシュクランは、少し落胆らくたんした様子だった。彼女は小さくうなずくと口を閉じ、再びもだしてしまう。


「他に聞きたいことはある?」

「え? ……あ、うん。大丈夫」

「そう」


 本当はもっと聞きたいことがあるのだろう。

 その証拠しょうこに先ほどまでだいになっていた彼女はベットから身を乗り出して私の話を聞いていた。


 だが、その興味と裏腹に表情はくもっているようだった。やはり変わった人だ。

 他者を思い、動く人間。そのような人間は今まで一度も見たことがなかった。

 ゆえに、少し興味がいている。彼女とはどんな人間なのか。


 私は自然と身を起こし、目線をベットの上にいるシュクランに合わせていた。


「私も一つ、聞きたいことがある。いい?」

「あ、うん。どうぞ」


 ずっと気に掛かっていた。他者を気にける彼女が何故なぜ、自分のために生きないのかが。

 そして、それをかくして生きているのかが。


 私はそれを確かめるべく、一つ、問いかけた。


「シュクラン。君は人生って何だと思う?」


                       ◆


「人生って何だと思う?」


 セラスがあたしに聞きたいこと。それはとても意外で、とても難しいものだった。


 人生……かぁ。


 どうして、あたしに聞くんだろう? 大したことを言えるほど立派りっぱに生きてはいないのに。

 それに難しいことを聞かれているのもあって、上手く話せる気がしない。

 彼女の期待に応えられる。そんな言葉をけられるかも不安。


 でも、セラスは「冗談じょうだんで聞いている訳じゃない」と、目でそれを伝えている。彼女は真剣なんだ。


 あたしはその気持ちに応えたい。自分を偽らず正直に話す彼女が聞いて良かったと思えるように。

 だから、ちゃんと応えなきゃ。自分の言葉で精一杯せいいっぱい、伝える努力をしなければ。


「……うまく、話せないよ?」

「いいよ」

「それでも良いの?」

「うん」

「わかった」


 呼吸を整えて。

 大丈夫。セラスはちゃんとあたしの言葉を聞いてくれる。

 だからかたの力をいて、どう々と。


 ……よし。言おう。


 あたしは疑問を投げかけたセラスに向けて、あたしなりの考えを話し始める。何もかも包みかくさず、正直になって。


「人生は、生まれて死ぬまでの間、何をしてどう生きるかを定めたもの。皆、そうだって言ってるし、そう信じてる。

 ——でも、あたしは人生ってそんなものじゃないと思う」


 一瞬、言葉がまる。


 それでも、セラスはあたしから目をらさず顔色かおいろも変えず、話を聞いてくれている。

 だから、話せる。躊躇ためらいなんて捨てて、続きの言葉がこぼれ、落ちる。


「本当は人生なんて誰にも決められなくて、分からなくて。答えなんて存在していなくて。

 だけど、きっと、そういうものはなくていいんだよ。

 どれだけ苦境くきょうに立たされても、どれだけ人からののしられても、私はこの世界で一生懸命いっしょうけんめい生きていますって。そうむねを張って言えるように日々を直向きに生きていく。

 そういう日々の積み重ねが積もりに積もって人生になっていくんじゃないかなって」



 今、ほんの少しセラスの表情が変わったような……。


「……変、かな?」

「そうだね。変だ」


 やっぱり、おかしいよね。こんなこと言うなんて。おかしいよね、あたし。


「君はやっぱり変わり者だ。けれど——」


 自然と目線が落ちおぼろげになっていた視界に、再び、セラスの姿がくっきりと映る。


「それが君の価値だ。大切に」


 セラスは口角を上げ、静かに微笑ほほえんでいる……気がする。

 められた……ってことで良いのかな。


「……うん」


 セラスのめているようにも、からかっているようにも見える反応に、つい、気のけた返事をしてしまう。

 返事はしっかりはっきり言わないと、と思った矢先やさき、セラスが突然、立ち上がる。


「もう、よう」

「え? あ、うん」


 彼女は呆然ぼうぜんとベットにすわむあたしに構わず、ササっとシーツをばし始める。

 彼女の睡眠すいみん邪魔じゃましてはいけないと思い、あたしもあわててベットにいてある布団ぶとんもぐりこむ。


 ……眠れない。

 さっきまでしっかり考えて話していたのもあって、眠気ねむけが全くこない。

 それでも、ベットに入って目をつもっていれば、きっと眠れる……はず。

 けるかどうかは別として、ひとまず、体を休められる状態にはなった。

 あとはセラスが眠るのを待つだけ。


 けれども、彼女はあたしに背を向けるような形でベットに座っている。

 いそいそと、寝る支度したくを整えていた彼女がベットにすわんだままでいるのが気になって声をかけようとした時、不意にその言葉は告げられた。


「君はいつまでも、そのままでいるつもり?」

「え? それはどういう……」

「——何でもない。ただの独り言」


 その一言に、言葉の先で声を失う。


「おやすみ、シュクラン。良い夢を」

「お、おやすみ」


 あたしたち二人は互いに挨拶あいさつを交わすと背を向け合うようにして眠りについた


                       ◆


 落ち着かないなー……。

 さっきの言葉がずっと気になって心がムズムズする。


 ——君はいつまでも、そのままでいるつもり? ——。


 まるで、今のままではいけないと忠告ちゅうこくするような一言。それをセラスは独り言として言葉にしていた。


 一体、何がいけないのかな……。


 そもそも、あたしの人生は明日で最後。今更いまさら、何かを変えたところでその事実は変わらない。それこそ、人生を変えない限りは。


 それだけは絶対にありえない。


 だって、管理者の人が決めた人生なんだよ? それにそむいて生きるなんておかしいことだよ。


 本当にそうなの?

 うそ、じゃない?

 それでいいの?


 何でこんなこと思うんだろう。疑問に思うほど大切なことじゃないのに。

 ふと、頭の中に思いかぶ言葉。


 ——でも、何だか楽しいことばかりだったかもしれない——。


 本当にそうだった?

 自分にうそ、ついていない?

 あたしは、それでいいの?


 あたしの人生は——。


 ううん、これは夢。これは夢。きっと、さっき熱が入り過ぎてその余韻よいんひたっているだけなんだ。



 でも、それでいいの?



 いいんだって! それでいいの!



 ——でも、あたしは——。


 お願い、めないで。


 ——でも、あたしは——。


 これは夢だから。


 ——でも、あたしは——


 あたしの人生は変わるはずがなくて。


 ——でも、あたしは——。


 それでも変われなくて。


 ——でも、あたしは——。


 すごく悔しくて。納得したくて。


 ——でも、あたしは——。


 こんな人生、いや……じゃなくて。


 ——でも、あたしは——


 あきらめたくなくて。


 ——でも、あたしは——


 変わりたくて。


 ——でも、あたしは——。


 今の人生を終わらせたくなくて。


 ——でも、あたしは——。


 今を全力で生きたくて。


 ——だから、あたしは——。


 人生に後悔こうかいを残したくない。


 ——だから、あたしは——。


 自分が納得する人生を生きたい。


 ——だから、あたしは——。


 動かなきゃ。前に進まなきゃ。



 だから、あたしは——。あたしは——。あたしは……!




 『あたしだけの人生を生きたいんだ!』




「おねがい! セラス。あたしを外の世界へ連れてって!

 あたしの見たことのない広い世界を、人生を、見させて!」


                       ◆


 ……おどろいた。

 もうようと横になっていた側で、突然、さけび出す少女がいた。


 シュクランだ。


 彼女に背を向ける形でていたが、後ろからひびくベットとゆかきしむ音から彼女が私に対してたのんでいるのがよくわかる。

 普通に睡眠すいみんを取るならば、このまま無反応をつらぬき、もうたと思わせても良いだろう。


 だが、それで良いものか。


 過去にも、人間が他人の人生を定めることに疑問をいだく者はいた。だが、シュクランのように、みずからに定められた人生からそむこうとした人は一人もいなかった。

 ゆえに、私はおどろいた。その一言は本心から来るものなのかと耳を疑った。


 だから、私はその真偽しんぎを問いたい。

 私は身を起こし、シュクランへと体を向ける。彼女は先ほどまで見せていた無邪気むじゃきさとは無縁むえんりんとした面持おももちを見せながら、私が横たわるベットの横に立ち上がっていた。


「お願いします! あたしを外の世界に連れて行って下さい!」


 また、急に改まったが、今、そんなことはどうでもいい。

 私はベットから立ち上がり、窓辺まどべに立つ。


「このまま外へ出たら、君は彼らに身を拘束こうそくされる。それは理解している?」

「それは解ってるよ。でも、セラスならどうにかできるよね?」

「君は自分で何とかしようとは思わないの?」

「あたし一人じゃ、ここから飛べないから」

「飛ぶって、物理的に?」

「うん」


 シュクランはベットの外側から回り込み、私の横へと並び立つ。


「セラスなら飛べるんじゃないかなって思うの」

「一体、何を根拠こんきょに——」

「天使、何だよね」

「なっ……」

「えっ……、本当に天使なの?」


 なぜ、天使を知っているのかと汗がき出る感覚を得たが、聞いた本人は冗談じょうだん混じりに聞いただけのようだ。


「おばあちゃんからいるって聞いたことあったけど、本当にいたんだ……!」

「いやいや、そんな大層な存在じゃない」


 流石にここは否定しなければ立場的に良くない。下手したらファリエル様からおしかりを受ける以上のばつを与えられてしまう。それだけはごめんだ。


「それなら、ここから飛び降りよ!」

「ねえ、話、聞いてた?」


 意味がわからない。どうしてそうなるのだと問いたい。

 だが、戸惑とまどう私に構わず、彼女は意気揚いきよう(よう)と話し始める。


「だって、このままじゃダメなんでしょ? だったら動くしかないじゃん」

「それにしてもやることが大胆だいたん過ぎ」

一緒いっしょなら、それくらいが良いよ」

「ここから落ちたら、普通に死ぬよ? そんなことやれる覚悟があるの?」

「ある」


 彼女は自信満々に答えると、私のうでつかみ、窓枠まどわくに足をかけた。


「どうせ人生終わるくらいなら、あたしはあたしの人生を生きるよ。

 それが良いって言ってくれたのは、セラス、あなただから」


 ……完全に余計なことしたな、これ。

 いまいち理解できていないが、彼女が自分のために生きない理由を私の余計な一言が取りはらってしまったらしい。


 本当にたくましい少女である。


 そういう部分でも彼女は変わり者だとは思わなかった。

 それはもう、あきれ返るくらいには。


「……それで、私に着いてきて欲しいと」

「うん」


 側からしたら、かなりの無理難題である。

 そもそも「一緒に死んで」と言っているようなものである。

 そんなのたまったもんじゃない。そう、普通は言うだろう。


 正直、天界に戻りたいと思っていた。

 それにも関わらず、人生とは何故こうも上手くいかないものなのか。もっとも、私の場合は天使生てんしせいかもしれないが。


 ……天界にもどる前にやることが増えてしまったな。


「ずっと、おかしいと思っていた」


 私のうでを引くシュクランに合わせ、私も前へ出る。


「君が他人に言われるがまま、生きていたことに」

「それは……」

「いい。言わなくていい」


 私は彼女の横に並び立つ。


「それはこれから知るから」


 私は全身に力を巡らせ、背から羽根を広げる。


 目の前の少女が私の姿に目を丸くしている。だが、この光景も一度限りのものだろう。

 思わず、笑みがこぼれてしまう。


 ——さて、飛び立つか。


 窓枠に足を掛け、風を感じる。門出かどでには丁度いい、心地の良い風だ。


「私が外の世界を見せよう。その代わり——」

「その代わり……?」

「君が人の強さを見せてくれ。これが私からの願いだ」


                       ◆


 夜。太陽がしずみ、月も沈みかけたあけぼの朝方あさがたに人生を終える少女を見張っていた者たちは一斉いっせいに空を見上げた。


「な、なんだ、あれは!」


 ある見張りはそうさけび、また別の見張りは呆然ぼうぜんと立ちくす。


 彼らが一様いちよう呆気あっけに取られるのも無理はない。なぜなら、羽根の生えた人間が見張っていた少女をかかえ、轟音ごうおんを立てながら街の外へと飛び立ったからだ。


 見張りの一人が同じ場に居合いあわせた同胞どうほうに声をかける。


「あれって、今日、殺される少女だよな……?」

「ああ……」


 それもそうだけどよ、と、もう一人の見張りが声を挙げる。


「あのつばさの生えた生き物はなんだよ。新種の化け物か?」

「分からん。あんな生き物、見たことない」


 見張りたちは飛び去る二人の姿を目で追いかける。


「この状況じょうきょう、どう伝えれば良いもんかね……」

「正直に報告するしかないだろ」

「だよな……」


 見張りたちは一斉いっせいにため息をついた。


 途方とほうに暮れる見張りたちの内、一人が手を挙げる。


「僕、報告してきますね」


 手を挙げた見張りに、他の見張りたちは皆、し目のまま彼のかたに手を当てた。


「強く生きろよ?」

「まるでこれから死ぬみたいな言い方、止めてくださいよ〜!」


 だってそうだろ? とあわてふためくかれらのそばに一人の男性が近づいてくる。


「あ、隊長! 実は……」


 馬鹿ばか、止めとけ! と他の見張りたちが彼を取り押さえようとする。かれらがさわぎ始めると隊長と呼ばれた男性は「おい」と声をかけた。


 かれの一言に、見張りたちは姿勢を正し、敬礼を行う。


「お前たち、管理者様から伝言だ」


 見張りたちは一同に緊張きんちょうした面持おももちで息をむ。



「少女の一件は目をつむる。その代わり、

 あの羽根の生えたやつを追いかけ、街まで連れてこい。これをもってお前らの失態を免除めんじょする」



                       ◆


 街の外れ。少し小高くなったおかの上に五階建ての建築物がある。街全体を見渡みわたせるその建物は人々から管理棟かんりとうと呼ばれていた。

 その建物の四階。ヒビ割れたガラス窓を開き、空をながめるアイボリーのかみ紫紺しこんひとみを持つ少女がいた。


「スゴイ速さですねー。アレ」


 彼女かのじょは街の上空を飛び去る羽根の生えた人間を指差しながら後方へと振り返る。


 彼女が振り向く先、ワインレッドのかみ肩甲骨けんこうこつまでばし、バイオレットのひとみかがやかせた男がいる。


 かれは机の上で足を組み、笑みをかべながら、空を指差す少女へと話しかける。


「素晴らしいだろう? ベネットくん。あれが天使だよ」

「へぇー、あれが天使」


 ベネットと呼ばれた少女は一瞬いっしゅん、空をあおぎ見ると再び男へと目を向ける。


「……ところでそれって何でしたっけ」

「人類を滅亡めつぼうの運命から救う、救世主様だよ。よーくその眼に焼き付けておくいい」

「あー、そうでしたそうでした。すっかり忘れてました」

勤勉きんべんな君にしてはめずらしいねぇ」

「いや、そーとー昔に聞いた話だったんで、つい、うっかりと」

「老いってこわいねぇ」

「まだ十八ですよーだ」


 少女はほほふくらませ、抗議こうぎしめす。

 それに対し、男は「ははっ、愉快ゆかい愉快ゆかい」と笑うだけである。


 少女は男の笑うそばで再度、ふくれっつらを見せると、疑問をかべ、かれに問いかける。


「でも、よかったんですかー? ドーマンさん。外に出てまで見張りの人たちに追いかけさせて。あの人たち、間違いなく死にますよ?」

「そうだねぇ、運が良ければ生還せいかんできるだろうねぇ」

「外は危険な生き物でいっぱいですもんねー。

 それでも、長いこと生きてたら、他の街の管理者に見つかって一悶着ひともんちゃく―! なんてことなりそうですけど、そこんとこ、大丈夫なんですかー?」

「そこは問題ないよ、ベネットくん。むしろその方が良いまである」

「どうしてです?」


 少女はドーマンと呼ばれる男に疑問を投げかけると、かれは得意げに笑みをかべながらその問いに答える。


「天使様としては自分の存在を人間に知られたくないからだよ。なにせ、本来は人の前に姿を現してはいけないのだから。それに——」


 男性は一拍いっぱくめを作ると、話の続きを語り始める。


「他の五人の管理者が天使の存在を認知すれば、彼らもだまって見過ごすはずがないだろう? 必ず、何かしらアクションを起こすはずだ。——私のようにねぇ」

「あー、それはいやですねー。皆さん、天使に興味津々(きょうみしんしん)ですし、目的のためなら手段を選ばない人たちですからねー」

「とは言えだ、ベネットくん。出来ればだが、私は事を穏便おんびんに済ませたい。理由は解るね?」

「天使の祝福を他の管理者にわたされたくないから?」

「君は本当に勤勉きんべんだねぇ」


 彼は歯を見せ、にんまりと笑うと、足を組み替え、少女へと指を向ける。


「だからだ、ベネットくん。君にもかれらを追いかけて欲しいのだ」


 少女は男からの頼みに嫌気いやけを表情ににじませると、声を上げ、抗弁こうべんを述べる。


「ええー外はいやですよー」

「ほぉ〜、そうか、そうかぁ〜。

 お。そう言えば、君の人生って何だったかなぁ?」

「それ、分かってて聞いてますよね?」

「君の口から言ってもらえないと、思い出せないねぇ」


 男があごを少し引き、冷笑れいしょうかべると、少女はわずかにうつむき、声の調子を落とす。


「……この街の管理者に仕え、その者の命を全て受け入れよ」

「ならば、あとは解るね?」


 少女は観念したようにかたを落とし、「はぁ」と一つため息をつくと、顔を上げ、再び男を見た。


「分かりましたよー、行ってきますよー」

「ふっふっふっ、流石はベネットくんだ。優秀ゆうしゅうな部下を持つと楽できてうれしいねぇ」


 少女は「はいはい、そーですね」と目を細めながら言うと、男の前へと歩み寄る。そして、彼女かのじょは男が座る机の上に手を置くと、溌剌はつらつとした口調でただす。


「因みに、同行している少女はどうします? 始末しちゃいます?」

「いや、殺さず生かしておこうかなぁ。あ、でも、利用できるなら利用した上で殺して欲しいかなぁ」

「どちらかと言えば殺す寄りってことですねー。分かりました」


 少女は親指を上げ、ウインクをすると部屋の出入り口に体を向ける。


「では、私は身支度みじたくを整えてから、ちゃちゃっと行ってきちゃうので、失礼しますねー」

「あ、ベネットくん、ちょっと良いかね?」


 男が少女を呼び止めると、彼女かのじょは「何ですー?」と言いながらかれの元へと近づく。

 男は少女が自分の元に寄ってくると「これは内密ないみつで頼みたいのだがね」と小声で話すと彼女に耳打ちをする。


「……なるほどー、確かにそれは内密案件ですねー。まあ、分かりました」


 少女は再び部屋の出入り口へと歩き出す。


「それじゃ、行ってきますね」

「よろしく頼むよぉ」


 少女は男の言葉に「はーい」と一言、承諾しょうだくしめすと部屋の外へと出ていった。



「さて、私は天使様をむかえる準備でもするかなぁ。ぐふふっ、ぐふふ……」



                       ◆


「ねえ、セラス。どこまで行くの?」


 太陽が立ち昇り、朝焼あさやけの空模様そらもようを作り出す明朝みょうちょう。その空を飛ぶセラスに対し、シュクランは風になびかみさえながらかれに行き先をたずねていた。


「そこそこ遠くの場所」


 セラスは彼女の疑問に淡々(たんたん)と答える。


「君が処刑しょけいされるのなら、追っ手がやって来る」

「そう、だよね……」

「だから、遠くに逃げるよ」


 シュクランはセラスの言葉に一瞬いっしゅんうつむくも、すぐさま顔を上げる。

 そして、不透明ふとうめいになったままの行き先について、たずね続ける。


「ちなみに、あたしが居た場所以外に、人が住んでいる場所ってあるの? 特に北の辺り」

「北側の土地に何か要件でも?」

「……もしかすると、会いたい人がその辺りにいるかもしれないの」

「それなら、北へ行こう」

「え!? 何も聞かなくていいの?」

「容姿とかは君が知っているだろうし」

「そういうことじゃなくて! ほら、会いに行きたい理由とか聞かなくて良いの?」

「? 会いたいからじゃないの?」

「そうだけど……そうだけど……!」

「それじゃ、決まりだね。北へ行こう」

「……うん」


 あっさりと行き先を承諾しょうだくしてしまったことにシュクランは戸惑とまどいの表情をかべた。彼女は何かを聞きたそうにセラスを見ると疑問を吐露とろする。


「どうして、そんなに優しくしてくれるの?」


 彼女の声は疑念に満ち満ちていた。


 セラスは気に留める……はずもなく今まで通りの口調で話す。


「別に、優しくなんてしてない。私は君のことが知りたいだけ。だから、君がやりたいことがあればそれに付き合うし、行きたいところがあればそこへ連れて行く」

「へ、へぇ……」

「どうかした?」

「……ううん。何でもない!」


 どこかあわてた様子のシュクランは自分を落ち着かせるように深く息を吸う。そして、再びセラスを見ると優しく微笑ほほえみかけた。


「これから、よろしくね。セラス」

「こちらこそよろしく。シュクラン」


 彼女の突然の笑みにもセラスは動じず、平然とした面持おももちで言葉を返す。しかし、その表情にはかすかにだが笑みをかべていた。


「そう言えば、北に街があった」


 たがいに声をけ合って早々、言葉をこぼすようにセラスはつぶやいた。

 その一言に対し、シュクランは声の調子を上げ、食い気味に聞きただす。


「えっ! 本当?」

うそって言った方がいい?」

「そういうのは、いいからっ!」

「わかった。とりあえず、そこで情報収集でもしよう」

「うん!」


 シュクランが元気よく返事をすると、太陽が一段とかがやきを増し始めた。

 すでに夜明けは過ぎ、朝陽あさひが一日の始まりを告げている。


 一日はもう始まったのだ。


 そして、少女の人生もまた始まりを告げる。


「もう少し、速度を上げるから、しっかりつかまって」

「わかった!」


 一筋の線をえがくように飛ぶ二人を太陽が照らす。


 それは、どこまでも、どこまでも。彼女たちがめぐ終生しゅうせいまでも照らし続けるように燦々《さんさん》と光輝ひかりかがやいていた。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 連作といたしましたが、今のところ続きのお話の投稿は未定です。

 ですが、読者の皆様の要望によっては続編も執筆するつもりであります。

 ですので、もし続きが気になった方はブックマークおよび評価等をしていただき、「続きを書いて欲しい!」とアピールしていただけると幸いです。

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