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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
ラムコーク
8/51

 バッシングから戻ると、マイマイと店長がピザ片手に言い合ってた。


「このクソ忙しい時にケチケチしないでくださいよっ」


「大丈夫だって、今一瞬収まってるから。

もっと貪欲に行こうっ」


「ラムコークか!」


「え、なんでラムコーク?」

マイマイの突っ込みに賀来さんが食いつく。


「そのカクテル言葉がもっと貪欲にいこうだから」


 姐さん最近それにハマってるな……

するとお客様に呼ばれて、姐さんが一目散にそっちに逃げた。

ああズルいっ。


「じゃあ松本、ピザが冷えない内に里親を見つけてやってくれ」


 そーきますよねぇ?


「はは、やれるだけやってみまぁす……」


 美人なマイマイなら男性客がイチコロだけど、あたしの成功率は低い。


「大丈夫っ。いざとなったら相棒の白濱くんがどーにかしてくれるよ」


 そこで名前に反応した本人と、バチっと目が合う。


 いや、白濱さんに頼むのは……

ー僕も松本さんに恩が売れてよかったですー

恐ろしいので!

「頑張って見つけてきますっ」



「あの、すみませ〜ん。

オーダーミスで、この海老とアボカドのピザが行き場を無くしちゃって。

買ってもいいよっていう心優し~い方を探してるんですけど……

100円引きでどーですかっ?」


 テッカテカながらも可愛こぶって、片っ端から攻めてみたけど……


「あー、もうお腹いっぱいなんで」とか、首を横に振って「いらないです」と、いつものように断られる。


 だけど、来店したばっかりのノリのいいカップル様が……


「もうちょい!200円引きなら買いますっ」


「ああ~、もうそう言ってくださるだけで個人的にはプレゼントしたい気分ですけど、お店の決まりで100円引きまでしか出来ないんです~」


 店長曰く、ここを緩くすると収拾つかなくなるらしい。


「でもめちゃくちゃ美味しんで、100円引きでもお得ですよっ?」

そうダメ押しすると。


「そーなんだ?

まぁピザ頼もうと思ってたし~」

「うん、お得ならこれでいんじゃない?」


「マジっすか!

ありがとうございますっ」

うわーやりました店長~!


 さっそくその朗報を伝えると。


「よくやった!

ほら平岡も褒めてやれっ」

店長が近くにいた翔くんにも振って。


「やったじゃん、粋っ」と……

まさかの頭をなでなでされた!


 ぬおお!なにこれ、なんのサプライズっ?

壊れてもう仕事出来ませんっ……

いや、店長ナイスアシストです頑張ります!


 でも当然起こる黄色い声。

「え、いーなぁ!」

「ちょ新井さん、マジで雇ってくださいよ~。

私、数倍頑張るしっ」


「はは、誰か欠員が出たらな~」


 店長、色恋採用しないくせに……

相手本気にしちゃいますよ?



 それから激忙の第2波が押し寄せて……

ようやく落ち着き始めたのは、深夜1時半過ぎ。


「賀来さん、今日は長くいるんですね」


「うん、すずちゃんと話すのが楽しくてさ~」


 それは白濱さんが連れて来た美人さんの事のようで……

すっかり仲良くなってやがるっ。


「じゃあ僕たちは帰ります。

忙しい時にすみませんでした」


 だけど白濱さんたちはお帰りのようだ。


「いえ全然ですっ。

写真、全部撮れましたか?」


「はい、それは。

ただ……

松本さん、明日は出勤ですか?」


 え、また何かひらめいちゃった感じですかっ?

でも……


「いえ、休みです」


「そうですか。

じゃあ、急ぎなんで電話で少し話せますか?」


「えっ、別にいいですけど……」

もうふりだしは勘弁してくださいっ。


 とそこで、視線を感じてそっちに目を向けると。

ひぃ~!すずちゃんさんがじっとあたしを見つめてるっ。

そんな美しすぎる人に見つめられたら、女のあたしでも動揺するからっ。


 とりあえず、にこりと愛想笑いを返すと。

すずちゃんさんも、にこりと笑ってくれたけど……

目が笑ってないですよー!

いや仕事の電話です、白濱さんとは仕事だけの関係ですっ。


「じゃあ明日電話します。

ごちそうさまでした」


「はい、ありがとうございましたっ」


「じゃあね賀来ちゃん。

また悠世のコト相談乗ってね~」


「うん、またねすずちゃん、悠世くん」


「賀来さん、こいつの事は適当にあしらってくれていんで」


「なにそれっ、ヤキモチ妬いてんのっ?」


 ははは、どー見ても両思いなのに……

白濱さんはきっと究極のツンデレなんだろう。


 そうして、怒涛の土曜は更けていった。




 そして日曜の昼下がり。

電話してきた白濱さんは、要件に入るなり謝ってきた。


「土曜日、あんな忙しいとは思いませんでした。

また先走ってスタンプラリーを提案しましたが、あの状況じゃとても無理ですよね。

ほんとにすみませんでした」


「いえ大丈夫ですっ。

もともとスタンプカードの導入は考えてたわけですし、店長のOKも出てるんでっ」


「でも今回の場合、どのタイプを飲んだかチェックして、それぞれにスタンプするので手間がかかります。

かといってスタンプラリーを平日限定にするわけにはいかないし、内容は少し変えないと……」


「大丈夫です!

その辺はあたしも考えたんですけど、オーダーの段階で品名の横に、わかりやすくマークするんで余裕ですっ」


「なるほど……

そういえばピックアップメニューも、ノンアルに出来るのとかマークしてくれてましたよね。

……すごく、助かりました」


 そんな事でそんなしみじみ感謝されるなんて……


「いえいえ、そんなの当然ですっ」

どーしよう、なんかすっごく嬉しんですけどっ。


「じゃあ、スタンプラリーは原案通りに進めていいですか?」


「もちろんですっ。

あ、カードの発注も白濱さんのとこでOK出ましたよ~」


「ほんとですかっ?

ありがとうございます。

サンプルが出来たら持っていきます。

あと特典のメニュー表も作るんで、内容が決まったら教えて下さい」


「え、あたし1人で決めるんですかっ?」


「今回はただの特典なんで、コストと手間重視で構いません。

でも……

決めかねてるなら、一緒に考えましょうか?」


 え、なにその優しい感じ……

どうした塩犬さん!

そんな申し訳なく感じてんのっ?


「あの、ありがとうございますっ。

でもスタンプラリーの事だったら、ほんとに気にしなくていいですよっ?

楽しそうだし、多少手間がかかっても、うちのスタッフならそれも楽しんじゃうと思うんでっ」

まぁテンパったりはするだろーけど。


「……そうですか。

でも別に気にはしてません。

解決した事気にする必要がありますか?

そんな暇じゃないんで、さっさと特典メニューを決めましょう」


 はいはいはいはいっ、優しい感じはあたしの幻聴でしたね!


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