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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
ラムコーク
7/51

「粋ちゃん、ラムちゃんとコーくんが絡み合ったヤツよろしく」


「賀来さん、今日は忙しいんだから面倒くさい頼み方やめて下さいよ。

てゆうか、土曜日に来るの珍しくないすか?」


「そう、今日とある飲み会があってさ……

撃沈して寂しかったから寄ったってわけ」


 その飲み会はつまり合コンっすね……



「はいどーぞ、ラムコークです」

ラム独特の芳醇な余韻がコーラの後からやって来る、あたしの好きなカクテルのひとつだ。


 とそこで、予告通り白濱さんがやって来た。


「あっ、お疲れさまでーす、っと」


 もんっのすっごい美人と一緒で、一瞬たじろぐ。


「お疲れ様です。

今日は一応客として来たんですけど、予定通り写真は撮らせて下さい」


「もちろんですっ。

じゃあ、あちらのテーブル席にどーぞ」


「いえ、カウンターで大丈夫です。

注文も提供もしやすいと思うんで」


 それはめちゃくちゃ助かりますけど、女の人と一緒なのにいーのっ?


「すんごい美人だね。彼女?」


 賀来さーん、いきなりプライベートに踏み込まないであげてー。

でも気になる……


「あぁっ、この前はどーも」


「覚えててくれたんだっ?さすがだね~」


 2人はそこから自己紹介なんかで盛り上がって、当初の質問は流される。



「どーぞっ」

通常メニュー一式とピックアップしたカクテルメニューを出して、広げたおしぼりを差し出すと。


「ありがと~」

目の前の美人さんは、可愛らしい笑顔で受け取った。


 うう、眩しすぎる……

あまりの可愛いさと美しさに、店内のあちこちから視線が集まる。


 ああっ、翔くん見ちゃダメ!

惚れてまうからっ。

あ、意外にもスルー……

まぁ翔くんレベルなら美人なんて見慣れてるよね。

あ~、あたしも美人に生まれたかったなぁ……


「ねーねぇ、どれ頼んでもいーのぉ?」


「あぁごめん。

ドリンクは……

このメニューの、済がついてないヤツから選んで。

あと俺が写真撮るまで飲むなよ?」


 おおっ、白濱さんそんな喋り方するんだ。

って当たり前か、ずっと敬語なわけないよね。


 ちなみに、もう写真を撮ったものには済マークを。

ノンアルに出来るものには、欄外に説明書きして◎マークを付けといた。



「で結局、白濱くんの彼女?」


 おっとまだその話題に食いつきますか!

でも聞きたい聞きたいっ。


「……あの、松本さん。

そんな好奇の目で見ないでもらえますか?」


「あ、あはは~。

いやそんな綺麗な人連れてたら気になるじゃないですか~」


 すると白濱さんは、なぜか不機嫌そうに視線を逸らした。

え、あたしなんかマズい事言いました?


「彼女です」

そこで突然、その絶世の美女が口開く。


「はっ?何言ってんだよ」


「いーじゃん、そのうち彼女になる予定だし。

未来の彼女」


「いやならねーし」


「なんでよっ、こーやって悠世のために協力してんのにっ」


「お前が飲み連れてけってうるさいからだろっ?」


 いやあの、こんなとこで痴話ゲンカされても……


「粋ちゃん粋ちゃん」


 その時賀来さんに手招きされて、顔を近づけると。


「やっぱり粋ちゃんの運命の人じゃないかもね」


「だからないって言ったし!」

まだそれ考えてたんかいっ。


 さらにマイマイまで通りすがりに。

「ごめん粋、やっぱり狙うの厳しいと思う」


 だから狙うつもりもさらっさらないからね!?

なにこの美女を相手にあたし残念!な空気……


「お願いしまーす!」

「はい行きまーすっ」


 厨房からの呼び出しに、料理提供へとそそくさ逃げる。


「粋ちゃん、それ出したらこっち盛り付けてもらえる?」


「了解でーす」


 チラとカウンターに目を向けると、店長が白濱さんのオーダーを聞いてくれてたから……

そっちは任せました!


「てか白濱くん来てたんだ?

こっち手伝ってて大丈夫?」


 提供を終えると、副店にホールの状況を心配されたけど。


「はい。今日はお客さんとして来てるんで、あたしじゃなくても大丈夫です。

それに今日、フードオーダーやばくないすか?」


「それ。

にしても、白濱くんの彼女?

やたら綺麗だよね。

あそこまで整ってると整形疑っちゃうよね」


「いやそれはないでしょ。

でもそう思っちゃうくらい綺麗ですよね~。

あたしも整形して、」


「え、それでっ?」


 おおい!

「いやしてないですしっ、やって綺麗になりたいって言おうとしたんです!」


「あぁびっくりした。

どんなヤブ医者かと思ったよ」


 こらこらこらこら!

もう手伝わないっ、1人で茹でダコになってくださいっ。


 そう、まだ初夏だけど夏の厨房はめちゃくちゃ熱い。

それでも結局、頼まれたとこまで手伝ったのに……


「え、そのテッカテカな顔で表出んの?

まぁ、誰も粋ちゃんなんか見てないか」


「ひどっ」

この言われよう……


 でもこーいった副店の毒舌は嫌いじゃない。

そりゃ入った頃は傷付いたりムカついたりしたけど、今はそれが副店のキャラだってわかってるし。

いじる事で副店なりに可愛がってくれてるのだ。

と思いたい。


 そしてホールに出ると、激忙の第1波が押し寄せて来たようで……

テッカテカを気にしてる暇はない!


「粋ちゃん、忙しいとこ悪いんだけど。

塩の犬と書いて、塩犬(しおけん)よろしく」


「塩犬っ?

もうっ、悪いと思うなら普通に頼んでくださいよっ」


 てゆーかそれなら賀来さんの隣にいます、塩対応の猟犬が。

とそこで、ほぼ満席状態な店内に新たなお客様が入って来た。


「いらっしゃいませ~!何名様ですかっ?」


「えーと、11名です」


 マジっすか!


「松本、予備テーブル出そうか」


「了解ですっ。

ではお席をご用意しますので、少々お待ちくださいねっ。


翔くんごめん、それ終わったら賀来さんのソルティドックよろしく」


 その時、オーダーと厨房の提供要請が同時に入る。

だけど誰もが手一杯で……

料理は副店が出してくださいっ。


 急いでご案内を済ませたあたしは、すぐにオーダーを取りに向かうと。

今度はお会計と、お酒を零したお客様がっ……

わー落ち着け、優先順位!


 まず零したお客様は、おっけマイマイが行ってくれた。

次にオーダーは、店長が早かった。

じゃああたしはお会計をして……


「お願いします!」


 だから料理は副店が出してくださいってば!

まぁ厨房はホールの状況がわかりにくいし、今日はフードがハンパないから大変だろうけど。


 そしてお会計後は、次のお客様に備えてすぐにバッシングへ。

いやその前に今入った11名様におしぼりとチャームを持ってかなきゃ!

なのに。


「ごめん粋、速攻でコリンズグラス洗ってくれる?」


「オケ」


 うわー、シンクが恐ろしい事にっ。

でもバイトのコが11名様のセットを用意してくれてるみたいだから……


「翔くんついでに他にもなんかいる?」


「助かる。

じゃあシェーカーとミキシンググラスもよろしく」


「りょ」


 すると、ヒソヒソ笑い声が耳に入る。


「ちょ、テカっててウケるんだけど」

「なにあれ、公開処刑?」


 うっさいわ!

こっちはクーラーで北海道だけど、あっちは沖縄だったんだよっ。

でもま、翔くんファンにディスられるのはいつもの事ですたい。


 そこで、まだバッシングしてないのに新しいお客様が!

おおっ、他のバイトのコが対応に当たってくれた。


「松本、悲しいお知らせだ。

スイーツが大変な事になってるぞ。

あいつテンパってるみたいだから、フォローよろしく」


「マジっすか!すぐ行きますっ」


 その時。

忙しさに慌てたのか、翔くんが作ったカクテルを落としてグラスを割ってしまう!


「すいませんっ」


「おー、手ぇ切らんようにな~?

そんで、1回落ち着こーか」


 もうこの店長の懐の深さ大好きっ。



 そんな状態を何回転か繰り返して……

忙しいと起こってしまうオーダーミス。


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