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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
シンデレラ
42/51

 それを隠すために俯いてたあたしは、男の人とぶつかってしまって。


「すみませんっ」

舌打ちするその人に振り返って謝ると。

とにかくトイレに避難しようと、急いでそれがある裏口の方に向かった。


 だけどそれを目前にしたところで。


「粋っ!」

腕をグイと掴まれて。

振り向かされたあたしは、悠世くんの姿に心臓が止まる。


「なんでまた泣くんだよっ」


 なんでって……

むしろそっちこそ、なんで追っかけてきてくれたの!?

すずちゃんさんはっ?

言葉にならずに、胸を締め付けられながら見つめると。


「や、俺のせいか……

あんな事したヤツと、会いたくなかったよな?

ほんとにごめん」


 あんな事?

そうだキスしたんだ悠世くんと!

さよならがショックすぎてそれどころじゃなかったけど、今さらめっちゃ恥ずかしくなって俯いた。


「……ごめん。

合わせる顔なんかないし、関わらないって言ったのに。

粋にはほんと、嘘ついてばっかだけど……

泣いてるの見たら、自分の事棚上げでほっとけなくなって」


 それで追っかけてくれたんだ……


「……ありがとう」


「はっ?いやお礼言うとこじゃないだろっ」


「え、違うのっ?

でも嬉しかったし……」


「嬉しいっ?

……だったら俺、付け入るよ?」


 はいっ?

いや何に付け入る気ー!

そこで少し話せるか聞かれて、頷いたあたしは……

裏口前にあるベンチに誘導された。


「てゆうか、すずちゃんさんは大丈夫なのっ?」


「ん……

そっちはもう、話ついたから」


 どんな話がっ?

でも揉めてるふうじゃなかったし、うまくはいってるんだろな……

胸の痛みに眉をひそめた。


「しつこくてごめん。

あと俺……

粋が昔の事でそんなに思い(・・・・・・)悩んでたなんて思わなくて。

だから気にするなって、無理矢理楽しくさせてしまって。

そのせいで、あんな泣き笑いさせるまで追い込んで……

辛かったよな、ほんとごめん」


「ううんそんなの全然っ」


「だから無理するなよ。

縁切ろうとするほど辛かったくせに」


「はいっ?あたしが!?

縁切ろうとしたのは悠世くんじゃん!」


「や、俺はっ……

あんな事して、もう会わせる顔ないと思ったし。

“こんなあたしと"って昔の事引きずってる感じで、あんなに泣きながら謝られたら……

俺といたらずっと罪悪感で苦しむのかなって思って」


 え、それってあたしのためにっ?

それはそれで感動……

って重かったからじゃなかったの!?


「つかそれ以前に、粋が縁切ろうとするからだろっ?

そんなに辛いのかと思ったら、説得するわけにもいかなかったし」


「いやいやいやいや、だからあたしは縁切ろうとなんかしてないしっ」


「じゃあ今までありがとうとか、まるで最後みたいな事並べてなんだったんだよっ。

こっちはさよならって言わせないように必死だったってのに」


「あれはっ……

もう当分、もしかするとずっと、会えなくなるかと思って……」


「はっ?

なんでだよ」


「だって!

もう会う理由、ないし……」


 すると沈黙が訪れて……

ほら、図星でなにも言えないじゃん。

あれ、でも今……

さよならって言わせないようにとか言ってなかった!?

そう胸が騒めいたところで。


「そっか、そーだよな……

けどごめん。

粋には会う理由がなくても、俺は会いたい」

いきなり思いっきり心臓を撃ち抜かれる。


 うそ……

今なんてっ?

まさか悠世くんが、会いたい!?

うそどーしよう!

どうしよう嬉しすぎてっ……

暴れ狂ってる胸が、次の刹那トドメを刺される。


「勝手なのはわかってるし、もう辛い思いはさせたくないんだけど……

でもどうにもならないくらい粋の事が好きなんだ!」


 はいいっ!?

え、ちょっと待って。

いやちょっと待って、ちょっと待って……

思考がショートして。

だけど心は無条件に溢れてきて……

涙がぼろぼろ、次から次へと零れ落ちた。


「……ごめん。

好きでもない相手からこんな思われても、困るって俺もよく分かってるんだけど……

でもあのまま、伝えないままじゃ諦め切れなくてっ」


 待って、困るわけないっ。

そう言いたいのに、胸が壊れそうなくらい締め付けられて声にならない。


「いや伝えても諦められないと思うけど……

粋の心には平岡さんしかいないのも、俺が入る隙なんか微塵もないのも、ちゃんとわかってるからっ」


 ちっがーう!

やっぱり周年祭で誤解といとくんだった……


「ただそれでも、ダメ元でぶつかりたかったんだ。

10年前から、一度も伝えられなかった想いだから……

もう後悔したくなくて」


 その言葉に、胸が火傷しそうなくらい熱くなる。


「けどもう関わらないって言ったからっ……

無責任な言動が嫌いな俺が、また守らないわけにはいかなかったし。

会いたくて堪らなかったけどっ……

あんな事しといて、自分から近寄るわけにもいかなくて。

だからまたここに来ないかなって、あれからずっと入り浸ってたんだけど……」


 それでそっこー会えたんだ。


「会釈で通り過ぎられて。

嫌われて当然な事したくせに、すげぇショックでさっ」


 だってすずちゃんさんといたからっ……

ってじゃあなんで一緒にいたのっ?


「その分、嬉しかったって言われて俺の方が嬉しくて。

気持ちが抑え切れなくなって……

あっ、でも昔の事に付け込んだわけじゃないから、粋は遠慮なく断ってくれていーからっ」


 いや待って待って、どこから訂正してけばいーのっ!?


「待って悠世くんっ、いったん落ち着いてっ?」


「いや落ち着けないだろっ。

告るの初めてだし、粋何も言わないから気まずいしっ」


 うっ、確かに……

って告るの初めてなのっ?

そっか、モテるから告られる方か……

いやそれで初めてがあたし!?

嬉しい反面、なんだかすっごく申し訳ない……


「なんか色々と、ごめん。

でも悠世くん語ってたし、なかなか答えるタイミングが掴めなかったってゆうか」


「あぁ、そっか。

うわ俺、なに必死に言い訳じみた事語ってんだろ。

カッコ悪……」


「カッコいいよ!

気持ちを伝えるのって、すごく勇気がいる事だと思う。

なのにダメ元でも伝えようとするなんて、すごいと思う。

そうやって頑張れるのも必死になれるのも、ほんとにカッコいいよっ」


 あたしには到底真似できない。

すると悠世くんは驚いた顔をして……

噛み締めるように、くはっと笑った。


「無理だ俺。

やっぱすげぇ好きだ、諦められない」


 ぐっは!ここでまた殺し文句をっ……


「困らせたくはないけど、迷惑はかけないから……

せめて友達として、会えないかな」


 もう、そんな切なげに自己完結しないでよっ。


「ヤだよそんなの!

あたしだって、同じ気持ちなのに……」


「……は?

同じ気持ち?」


「だからっ……」

頑張れあたし!


「とっくにあたしの心は、悠世くんでいっぱいだしっ……

悠世くんが入る隙しかないよ!」


 あああ〜!今はこれが限界ですっ。

近くに人がいなくても、外だからハードル高いし急には無理だ〜。

と、悠世くんの言葉を訂正がてら引用。


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