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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
マタドール
38/51

 そしてクイズ大会も終盤に差し掛かった頃、今度は翔くんがやってきた。


「あっ、翔くんお腹空いたでしょ?

唐揚げとポテトつまみなよ」


「や、俺はさっき厨房だったからその時けっこーつまんだんだけど。

今ダンスメンバー来たから、これ差し入れしてい?」


「ああ〜KINGDOMの人たち来たのっ?

全然いーよ!

足りるかな?すぐ追加で揚げるねっ」


 そう、次のイベントは翔くん担当のダンスパフォーマンス。

なんとスタジオの宣伝になるからとゆう理由で、フリードリンクの条件だけで協力してくれる事になったのだ。

とはいっても、フードの差し入れくらはしたいよね。


 さっそく出来立ての唐揚げ&ポテトと。

この時間だから足りなくならないだろうと、おでん3種串も人数分持ってくと。


「ありがと粋」


「え、スイちゃん!?

このコが翔お気に入りのっ?」


 はいい!?

耳を疑うワードに思わず固まる。


「よけーな事ゆーなよっ」


「なんでだよっ、このコにカッコいいとこ見せたくて久々ダンス頑張ったんだろっ?」


「だからもう、黙れって」


 いやいやいやいやそんなワケないからっ。

翔くんみたいなスーパー超絶イケメンが、あたしなんぞ気にもかけるワケないから!


「ははは〜、人違いだと思いま〜す」

そんで真に受けてると思われたらくっそ恥ずかしいので、さっさと逃げますっ。


 なのにすぐに翔くんが、厨房まで追っかけて来た。


「粋、今の気にしないでほしんだけどっ……」


「うんわかってる!心配しないでっ?」

身の程はちゃんとわきまえてますっ。


「ん……

でも次、ドリンク(係)だろ?

だから、出来るだけ見てほしいなって」


「もちろんだよっ。頑張ってね!」



 それから、本日3度目の繁忙タイムを乗り切ると。

いよいよ、女性客待望の翔くんのショータイム!

「俺も飛び入り参加しよーかなっ」と、目の前の賀来さんも不器用にカクカク踊る。

はい、ほぼほぼダジャレでーす。


 とその時、開始アナウンスにそって店内の照明が落とされて。

クールなダンスミュージックとともに、翔くんたちが照らされる。

といっても頭上の調光レバーが上げられただけなんだけど、同時にわぁと歓声も上がる。


 そこから勢いよく踊り出した翔くんたちは、予想を超えるカッコよさで……


「ちょっと粋っ、翔めちゃめちゃカッコよくない!?」

受付が暇になったマイマイが、興奮気味に言い寄って来た。


「うんヤっバい!カッコよすぎるんだけどっ」

これはもうここにいる女のコたち全員が虜だよっ。


 それを裏付けるように、店内は異常な盛り上がりを見せている。


「そんなカッコいっ?」


「うんっ、死ぬほどカッコいい!」

と、テンションが上がって過剰表現してしまったところで。


 今の声悠世くん!?

ぐるりと振り向くと、もう離れてて。

うわ〜どうしよう!

そーいえば悠世くんは、まだあたしが翔くんを好きだと思ってるよねぇっ?


 誤解を解きたいけど……

だからなに?って感じだろうし、翔くんにダンス見るって約束したし。


 そーやってモヤモヤしてたら、結局あまりダンスに集中出来なかったとゆう。

わ〜、翔くんごめんなさいっ。

しかも。


「翔くんおつかれっ。

すっごくカッコよかったよ!」


 終わってそう声かけたら、めちゃくちゃ嬉しそうな笑顔を見せるから……

めちゃくちゃ申し訳なくなったとゆう。


 でも次はとうとう最後のイベント、オーナー担当の大抽選会だから……

それまで気持ちと疲れた身体を奮い立たせなきゃ!


 そんな最後の繁忙タイムは、みんなもうある程度満たされてるから比較的ゆるやかで。


「店長クイズどうでしたっ?」


「いやもう大っ盛況だったぞ。

黄金コンビの企画も大成功ってワケだな」


 黄金コンビっ……

そっか最後の打ち合わせはもう終わったから、今日でそのコンビも解散なんだ。


 うわ泣いちゃダメ!

泣かないように頑張って、あんま考えないようにしてたのにっ。

なんか楽しい事を考えなきゃ……

そうだクロスバイク!

欲しい欲しい〜、どうか悠世くんに当たりますよーにっ。


 ちなみに気になる目玉景品は……

3等が、あたしの名前をあだ名にしたような今1番人気のゲーム機で。

2等は人気テーマパークのペア宿泊チケット。

そして1等はなんと、有名メーカーの4K内蔵テレビだ。


 それらを、誰もが自分に当たる事を願いながら……

大抽選会が始まった。


 MCはオーナーだけど、アシスタントはバイトのコたちで……

結果的には、ここにいる全員が担当を持った事になる。

もうなんて素晴らしい一体感!


「続いて8等です!

8等の景品はなんですか〜?」


「はいっ、こちらのコート・デュ・ローヌになりますっ」


「はいコート・デュ・ローヌ〜!

僕が自信を持ってオススメする美味しい赤ワインで〜す」


 オーナーが対話式にコメントを繰り広げて、他のバイトのコによってクジが引かれると。

参加者たちは受付で投入した抽選券の半券と照らし合わせる。


「うお当たった!」


「まじか賀来ちゃん!」

「スゴい賀来さんっ!」


「はいっ、当たった2名の方に喜びの声を聞かせていただきましょ〜」

と、MCの前に誘導された賀来さんは……


「一緒に飲んでくれる人絶賛募集中です!」

と店内の笑いを誘ってた。



 その後も抽選会は賑わって……

ようやく、クロスバイクが手に入るかもしれない瞬間がやってきた。

どーか!どうか神様っ……

あたしに悠世くん絡みの新しい相棒を与えてくださいっ。


 なーんて。

それで当たるほど世の中甘くないし。

悠世くんはすでに5等の黒毛和牛が当たってたから、そんな連チャンで当たるわけない。


でもあたしが選んだ景品が、当たったお客様に喜んでもらってるのは嬉しいし。

1等のテレビは、なんと!

京太くんの取引先の人に当たって。

その人からめっちゃ喜ばれて、京太くんも嬉しそうだったから……

この店が少しでも力になれた気がして、さらに嬉しくなった。



 そうして周年祭は、大成功を収めて幕を閉じ。

片付けの最中、もっと嬉しい事が……


「チャリは当てれなかったけどさ。

代わりにこの肉、すき焼きでもして一緒に食お?」


「え、いーのっ?」

チャリの代わりとはいえ、あたしを誘ってくれるなんて嬉しすぎるっ。


「いーもなにも、粋と食いたい」


 ぎゃああ!油断したっ。

この暴れ牛の不意打ちに油断した〜〜。


「ああありがとうっ」

とにかく誰かに聞かれる前にこの話を終わらせなきゃ!


「じゃあ俺んちでい?」


 俺んち!?なにそれ美味しいのっ?

それってこの暴れ牛んちで2人っきりにぃ〜?

でも当然どっちかの家になるわけで。

すると悠世くんは、くはっと吹き出した。


「そんな身構えなくても、その日は襲わないからっ」


「はいいっ!?」

襲っ……

いやその日はぁ!?


 テンパるあたしに、いっそう笑い出す悠世くん。

やっぱりこの男からかって楽しんでる!

ムリだ、この思わせぶりな極悪エロ暴れ牛には到底敵いそうもない……

マタドールやめます降参ですっ。


 それに、こうやって少しでも一緒にいられるんなら……

もう息の根止められちゃって構いませんっ。


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