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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
ジャックダニエルのトワイスアップ
31/51

「えー前回周年祭のイベント内容が決まったんで、今日はそれぞれの景品を決めていきたいと思います」


 ただいま、社員ミーティング中。


「それで松本、白濱くんには待ってもらって悪いけど、次の記事は抽選会の目玉景品が決まってからにしてもらおうか」


「了解です」

と言っても今は名ばかりの相棒で、悠世くんとはあれから1度も会ってない。


 やっぱり怒ってるのか……

2・3日に1度は来てくれてたのに、もう1週間も音沙汰なしだ。


 そりゃ怒るよね……

あたしレベルの女にそこまで拒絶される筋合いねーよって感じだよね。


 好きな人が笑ってくれるならって思ってたはずなのに、逆に傷付いた顔をさせてしまうなんて……

ほんとにごめん、悠世くん。


 だからってどう謝ればいいの?

あれは冗談で、無理じゃないよって?

いや相手にされてもないあたしが言ったらキモいでしょ。


 じゃあ恥ずかしくてテンパったって?

いや好きなのバレバレな気がするし、それが言えたら苦労しないよ。

それに誰とも付き合う気がないあたしにとって、無理なのは事実だし……


「ん~、松もっちゃんはどう思う?

……おーい松もっちゃん聞いてるかー!」


「あぁはいっ、すいませんぼっとしてましたっ」


 わ~、ミーティング中にすみません!

オーナーまで怒らせちゃうとこだった。


「おいおい頼むよ、期待してんだから。

イベント決めん時はバンバンいい案出してたじゃーん」


「いやあれは……

実は白濱さんに色々助言してもらってたからで」


 そう、悠世くんは来てくれる度に周年祭の相談に乗ってくれてた。


「いやでも松本自身もずいぶん企画力が上がったと思うぞ?

色々機転も利くようになってるし、前より多方面から考えれるようになってきたし」


「はは、ですかね……」


 店長のフォローはありがたいけど、それも悠世くんに鍛えられた?おかげな気がするし。


 あぁもう、会いたいなぁ。

嫌われたかもしれないし、そう思う資格もないかもだけど……

会いたくてたまんない。


 こーなったら目玉景品を早く決めて、悠世くんに正々堂々連絡するぞ!

なのに……


「じゃあ決定は予算交渉次第って事で。

引き続き、周年祭のチケット販売よろしくな~」


 決まらず、どよーんと落ち込む。




 次の日。

休みだったあたしは、悠世くんに一目会いたくて。

この前のフリースペースにいないかと、はやる思いでチャリを走らせた。


 でもそのせいで、急に方向転換した人とぶつかりそうになる。


「すみませんっ!大丈夫ですかっ?」

一応安否を確認すると。


「あ~全然っ、こっちが悪かったし」


「って、舞王の旗士さんっ!?」


「えっ、あ~!あの時のっ」


 なんでも、仕事の出張でこっちに来たそうで。

ホテルまでの道を間違えたと気付いて、急に方向転換したらしい。



「あの白いビルを左か!

ありがと、おかげで助かったよ」


「いえいえ、お役に立てて良かったです」


「あ、来年早々遊びに来るんだろっ?

そん時はお礼に、とっておきの二刀流演舞を披露するよ」


「マジっすか!

あたし二刀流が最っ高に大好きなんですっ」


「そりゃよかった。

つか昔は(しょう)もやってたのにな~」


「そーなんですかっ!?」

なんとっ、二刀流のショー!


「うわそれめちゃくちゃ見たかった」


「だろっ?

なのにあいつやめちゃうからさ~」


 あいつ?

ショーを取りやめた人がいるんだな~?

ふとどきなヤツめ!


「なんとか復活出来ないんすかね~」


「ん~、初恋のコにYOSAKOIをダサいって言われた事引きずってるからな~」


 ん?なにその聞いたことあるようなフレーズは……

それってまるでショウくん、んんっ?

ショーって、ショウくんの事!?


「え、なんでショウくんが話に出てくるんですかっ?」


 いや確かに舞王はK市のチームだけど、この人まさかの同小だった!?


「へっ?

なんでって共通の知り合いだし、来年一緒に遊びに来るんだろ?」


「んっ?

それは悠世くんと……」


「あぁ!悠世の事、庄って呼んだからこんがらがったんだっ?」


 はいいっ!?

なにそれちょと待ってどゆことー!


 旗士さんの話によると……

庄ってゆうのは、なんと!悠世くんの前の苗字で。

中学の時に両親が離婚した事で、今の白濱になったそうだ。


そして悠世くんは小5まで、それこそ舞王で旗士をしていたらしく。

さっきのやめた理由から考えても……

まさかの悠世くんが、初恋のショウくん!?


 でも悠世くんは1コ上のはずで……

その時ふいに、この前の会話が思い浮かぶ。

ー「4月生まれだからガキん時とか」ー

それって……

あたしよりだいぶ先に誕生日が来ただけで、普通にタメじゃん!


 てことはやっぱり悠世くんが……

そう思えば面影あるし。

念のため小学校を確認すると、まさしくビンゴで。


 うわあどーしようっ!

これから悠世くんにどのツラ下げて会えばいいの!?

しかもあたしのせいでYOSAKOIをやめてたなんて……

だからどの祭りで探しても見つからなかったんだ。


 じゃなくてー!

あんなに頑張ってたのにどう償えばいいのっ!?

それどころか今だに引きずってるなんて……

んっ?初恋のコに?


 え、ちょっと待って……

それってショウくんもあたしの事を?

ウソでしょそんなミラクルがっ!?

いやいやいやいやその前に!

それならそれで余計ヤバいんじゃ?


 まだ純粋な子供時代に、好きな人からみんなの前であんなディスられたら……

ー「僕は恋愛に対してトラウマがあるんで」ー

いやそーなるよねぇ!

つまりそれもあたしのせいっ!?


「え~と、大丈夫?

なんかだいぶテンパってるみたいだけど、俺マズい事言っちゃった?」


「いえあのっ、そうじゃなくて……

さっきのダサいって言われた事で、YOSAKOIだけじゃなく恋愛でも、トラウマとかになってたりするのかなぁって」


「あぁまぁ、甘酸っぱい初恋で痛い目見ちゃったからな~。

無責任な言動とか思わせぶりな言動とかには、騙されないように壁作ってるとこはあるけどさっ」


 やっぱあたしのせいじゃん!

そりゃ感動したとかカッコよかったとか言っときながら、みんなの前ではダサいって笑いもんにすれば……


ー「そーゆーお世辞とか思わせぶりな言動嫌いなんだけど」ー

ですよねほんっとごめんなさいい!


「でもほんといいヤツだから、壁ぶっ壊すつもりで頑張ってよっ」


「はい……

ありがとうございます……」


 あまりのショックに、一連の言動で悠世くん狙いだと思われた事も認めた事も気付かずに。

なんとか挨拶だけしてその場を終えた。


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