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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
ジャックダニエルのトワイスアップ
28/51

 そして、日曜の昼下がり。


 京太くんと話す約束をしてたあたしは……

どっちかの家ってわけにもいかず、人目を気にしないで話せる個室カフェに来ていた。


「なんか粋とこーゆーの、久しぶりすぎて緊張するなっ」


「ははっ、でもそのっ……

いい話じゃないってゆうか……」


 すると京太くんは、少し切なげな優しい笑顔で……

「ん、わかってる」


 それに胸が締め付けられる。


「でもその前に……

2年前の事、ちゃんと聞いて欲しいんだ」


「……浮気してない、って事?」


 悲しげに頷く京太くんに、申し訳なさでさらに胸がぎゅっとなる。


「俺今までも、周りの嫉妬で付き合った相手に嫌な思いをさせてきたからさ。

粋には絶対、そんな思いさせたくなくて。

公認させる状況を作ったり、付け入る隙がないって気持ちを見せつけたり、俺なりに色々立ち回ってきたつもりだったんだけど……」


 やっぱりあたしを守るために、気持ちを公言してたんだ……

だからこそ。

翔くんと働いてる今は、この前みたいなアクシデントが起きたけど。

同じように人気者だった京太くんと働いてた時には、なんの被害にも合わなかったんだ。


「だけどいざ付き合ったらさっ。

最初はその笑顔が見れれば、それでよかったはずなのに。

だんだんその気持ちまで、もっともっと欲しくなって」


 そんなの、あたしだって同じだったよ。

なのに……


「でも粋は自分の気持ち言わないし、触れられるのも嫌がってたから。

俺不安でっ、周りへの警戒より不安の方が大きくなって……」


 ごめん。

本当にごめん……

申し訳なくて涙がにじむ。


「そんな時あの子と偶然会って、粋の事で相談があったらなんでも聞くよって言われたんだ。

それでつい、粋も仲良いって言ってたから安心して……

相談に乗ってもらったら、あんな事になったんだ」


「それってつまり……

ただ相談してただけなのに、あたしが勝手に浮気って」


「いやそーじゃなくて!

粋は悪くないんだ。

前に責めるような事言っといてなんなんだけど、粋がそう思ったのも無理ないんだ。

後でわかった事だけど、」


 と明かされたのは……

なんとすべてはその子の、あたし達を別れさせる策略だったとゆう。


 そしてその策略自体は、見事に成功したわけだけど。

「やっぱり」という前置きで浮気を疑われた事が、腑に落ちなかった京太くんは……

後日その子にずっと好きだったと告白されて、策略に勘付いたそうだ。


 それで、責めるように問い詰めたら……

相談とゆう名目で京太くんに近づいた事や、自ら浮気の噂を流した事。

そしてそれらしい行動を取って、結果的に2人であたしを苦しめてた事を、逆ギレで暴露してきたらしい。


「すげぇ頭にきたけど。

結局は俺が自分の不安に負けて、油断したから守れなかったわけだし。

コソコソ相談なんかして、粋を苦しめてたのは事実だし。

粋の気持ちを試すような真似した挙句、別れようって言葉に逆上して……

傷付いてた粋をさらに傷付けたのは、俺自身だから。

ほんとにごめん」


 その時の気持ちが胸に迫って……

言葉にならず、ただ首を大きく横に振った。


「だからもう合わせる顔なんかないと思ったし、別れが正解なんだと思ってた。

俺、ずっと粋の気持ちがわからなくてさ。

告白したのも俺だし、しつこく口説いて無理やり付き合ってもらった感じだし。

浮気と思った状況でも、怒るわけでも悲しむわけでもなく、ただ終わらせようとしてたから……

それが粋の答えなんだなって」


 そんなふうに思ってたんだ……

いや思うよねっ。


「ごめんっ……」


 京太くんの辛い気持ちや、そう思せた自分の不甲斐なさに、涙がポロポロこぼれ落ちる。


「責めてるわけじゃないんだ。

ただ、それでも俺は好きで。

ずっと忘れられなくてっ。

どうにか忘れようと頑張って、ひたすら仕事に没頭してきたけど……

また再会して、やっぱり諦められないって確信して。

なぁ粋、ほんとの事を教えてくれないか?

あの頃俺の事、ちゃんと好きだった?」


 好きだったよ。

そしてその気持ちは終わった気持ちだから、他人事みたいに口に出来そうな気がしたけど。

今それを口にするのは違う気がして、あたしはただコクリと頷いた。


「……そっか。

なのに俺、自分の不安ばっかで疑って……

ごめんな。

しかもこの話だって、あの子が証言してくれるとは思えないから証拠もない。

それどころか今日の目的も、俺を諦めさせる話だってわかってる。

だけど俺今度こそっ、どんな粋でも受け止めるし必ず守る。

だからもう少しだけ、チャンスをくれないかっ?」


 もおっ、なんでそんなに想ってくれるのっ?

あたしは京太くんみたいな素敵な人に、そこまで想ってもらえるような人間じゃないのにっ。


「ごめん、チャンスはあげられない……

あたしはもう、誰とも付き合う気はないからっ」


「え……

なんだよそれ、もしかして俺のせいっ?」


「違うっ、自分自身の問題だよっ。

こんなんじゃ誰と付き合っても、例え京太くんとやり直しても。

また傷付けてしまうし、あたしも傷付く。

もぉそーゆうの繰り返したくないの!」


「じゃあその問題ってなんなんだよっ。

俺はそんなのもひっくるめて支えたいし、一緒に解決していきたいんだよ!」


「もうなんでっ!?

京太くんなら、あたしなんかより相応しい相手がいくらでも見つかるよっ。

でもあたしは無理なの!わかってよっ」


「わかったよ」


 急な引き下がりに、心がガクッとずっこける。

え、わかってくれたのっ?


「じゃあ俺はずっと片思いでいい」


 そっち!?


「いやそれは~、あたしも気が引けるってゆうか……」


「俺、諦められないって言ったよな?

別に片思いなら自由だし。

粋が誰かのものになったならともかく、1人でいるならほっとけないし、諦めだってつくわけないだろ?」


 誰とも付き合う気はないって事を逆手に取ったな~!

相変わらずの策士め~。


「まぁそーゆうわけだから、これからも店には顔出すし。

常連の1人だと思って気にするなよ」


「いやそんな人生、お金と長身とイケメンの無駄遣いだからっ」


「ははっ、粋の笑顔で元取るよ」


 なんだその殺し文句わ!

何気にズキュンと突き刺さる。


「もうっ、そんなのお釣りがきまくるよ」


「じゃあさっ、その分美味しいウイスキー教えてくれよ」


 そこは否定せんのかーい!


「取引先の部長さんがウイスキー通らしくてさっ、俺も勉強したいと思ってるんだ」


「そーゆうことなら任せてよっ。

あ、めっちゃ詳しい副店にも聞いとくねっ」


「助かる」



 京太くんの気持ちには応えられないけど……

こーやって少しでも力になれたらいいな。



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