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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
マリブパイン
27/51

 だけど次の打ち合わせで……


「手の調子は?」


 うっ、なんだこのドキドキは……

心配そうな目を向けられただけなのにっ。


「お、おかげさまで順調だよっ?

ありがとうっ」


 きっとそのへんはまだ今までとのギャップに慣れてないんだ!

ずるいギャップめ~。


 それに、こんだけイケメンならドキドキするのも当たり前だし。

最近さらにカッコよくなってる気がするし。

女装したら絶世の美女になるだろーなぁ。

あたしと顔取り替えてほしいくらいだよ。

まつげ長いし……

ん?なんか戸惑ってて可愛いし。


「いや見過ぎだろっ。

なんなんだよ」


「あ、ごめんっ。

いや最近輪をかけてカッコいいな~って」


「はっ?

つか俺、そーゆーお世辞とか思わせぶりな言動嫌いなんだけど」


「え、そーなのっ?なんでっ?」


「なんでって……

あ、違った。

それはもう嫌いじゃなかった」


 なんじゃそりゃ!

とそこで。


「あ、賀来さんいらっしゃい」

来店したその人に声かけた瞬間。


「ほんとだいたっ、悠世~!」

真の絶世の美女、すずちゃんさんがこっちに手を振る。


「はっ?何しに来たんだよっ」


「別にいーでしょお?

バッタリ賀来ちゃんと会って、悠世が最近よくここに来てるって聞いたから、一緒に飲みに来ただけだし」


「いや俺は打ち合わせだしっ」と言ったところで悠世くんは、パッとあたしに顔を向けた。


「すみません、ちょっと中断していいですか?」


 はい!?なんでまた敬語っ?

それはつまり、あたしも敬語で話せって事っすか?


「どーぞどーぞ、ごゆっくりー」

にっこり営業スマイルでその場を離れながらも。


 さてはすずちゃんさんに誤解されたくないんだな~?

恋愛感情はないってゆってたくせに、このウソつきめ~!

と何気にムカつく。


「賀来さんすみません。

こいつがいると打ち合わせに集中出来ないんで、席離れてもらってもいいですか?」


「俺は別にいーけど……」

「ひどっ!邪魔しないのにー」


「いやすでに邪魔だし気が散るだろっ」


「え、それってぇ……

ヤキモチで気が気じゃないとかっ!?」


「誰がだよっ、つかもう話しかけんなっ」


 焦っちゃって、ヤキモチ図星なんだー?

ふーんだ、やっぱツンデレのツンじゃん。

アイスピックでキューブアイスを作りながら、嫌でも耳に入る会話に内心突っ込む。


 って、これじゃあたしがヤキモチ妬いてるみたいじゃん!


「わかった、もう邪魔しない。

だから終わったら一緒に飲もっ?」


「帰るよ、仕事溜まってるし」


「じゃあ一緒に帰ろっ?

危ないから送ってよっ」


「いや俺んち近くなのに、わざわざ遠くまで送らせる気かよっ」


「いーじゃん!

酔っぱらった女の子1人で帰らせて心配じゃないのっ?」


「いや酔わねーだろっ。

この前みたいに俺が誘ったんならタクシー代くらいは出すけど、心配してほしいならそーゆう男探せよ」


「悠世に心配してほしんじゃん!

一回くらい送ってくれたっていーのにっ」


 えっ、じゃあなんであたしの事は……

危ないって心配してくれたり、送ってくれたりしたんだろ?

そう思ったところで、マイマイがヒソヒソ話しかけて来た。


「なにあれ、戯れ合ってんの?

まぁお似合いだよね。

白濱さんってさー、めっちゃイケメンだし仕事も出来るし、土壇場で機転も利くしさぁ。

ほらあの時のおしぼりも、とっさにラバトリーに常備してるのを取ってきたらしいよ?

そーやって当たり前のように粋のフォローしたりとか、優しいし。

あんないい女が必死になるのも無理ないよね」


「はは、だよね~」

むしろ、あんないい女じゃなきゃ釣り合わないか……

胸にチクリと痛みが走る。


 って痛い痛い痛いしくっついた!

長く持ちすぎた氷を指から引き離そうと格闘する。


 そうしてるうちに、戯れ合いは終わったようで……


「松本さんすみません、打ち合わせの続きをお願いしていいですか?」


「ああはいっ、了解です」


「まずはこの前ピックアップしてもらった撮影の希望日ですが、16日の月曜に決まったんでお願いします」


「はい伝えときまーす」

棒読みで、この距離感への不満をあらわにすると。

悠世くんは何か言いたげな顔をして……


「では次に勝負種目ですが、」


 流しやがったー!


「あの、白濱さん」

そこで翔くんが、いきなり話に入ってきた。


「店長にはOKもらったんで、俺は写真に写りません」


「え、そーなの翔くんっ?」

当然悠世くんより先に反応してしまう。


「ん……

またファンが増えると思うけどって言われて、もううんざりだなって。

俺ホストじゃないし。

でもその集客も狙った企画なら、ほんとごめん」


 うわ~!あたしだってメンズバーじゃないとか思ってたのにっ。

おっしゃる通りその集客も期待してましたごめんなさいっ。


「んーん全っ然大丈夫!

ねっ?ゆ、白濱さんっ」


「はい、それは気にしなくていいですよ?

今回は松本さんが考えてくれた企画自体がすごくいいんで、問題ないです」


 うわ、そんな嬉しい事をっ……


「いやまあそれよりっ、翔くんの気持ちの方が大事なんだし、ヤな思いとかさせたくないし……

だからちゃんと断ってくれてありがとうっ」


 モメるのが嫌だと言ってた事を思い出して、照れくささを誤魔化すように言い足すと。


「粋……

ありがと。

俺、粋のそーゆーとこ……すげぇ好き」


 はいい!?どーした翔くん!

いやそーゆーとこってどーゆーとこっ?

てゆうか悠世くんの前でっ……

落ち着け!

別にあたしを好きなわけじゃないっ。


「あはは~、ありがとう。

とにかくっ、その辺は悠っ……

白濱さんがいい記事にまとめてくれるから心配しないでっ?」

と感謝の矛先を悠世くんに向けて、今度は必死に動揺を誤魔化す。


「はい。平岡さんの分は僕がカバーするんで、こっちの事は任せて下さい」


 おお、相変わらず頼もしっ。

すると。


「……いえ、やっぱ俺写ります」

そう強い目で言い捨てて、去って行った翔くん。


 いや翔くんまでなんじゃそりゃ!


そんな感じでなにかと進まない打ち合わせを、本腰入れてようやく終えると……

今日は飲まずに帰るという悠世くん。



「すず、じゃあ俺帰るから」


 その優しげな呼び捨てに、胸がズキリと痛みを発する。


「うそ、ちょっと待って!

下まで一緒に帰ろっ?」


「いやその距離一緒の意味ないだろ」


「いーじゃん!

あ、会計お願いしまーす。

じゃあ賀来ちゃんまたねっ?」


 そして、なんだかんだ待ってあげてる悠世くん。

この隠れデレめっ。


 にしても、羨ましいなぁ……

そんなふうにまっすぐ気持ちをぶつけられて。

そーやって健気に頑張ってるすずちゃんさんを見てると、ますますあたしには恋愛する資格なんかないって思い知らされて……

あぁ胸が痛い。


「ね、悠世んち寄ってい?」

「いやまっすぐ帰れよ」


 結局一緒に帰ってった2人は……

きっと悠世くんちで一緒に過ごすんだろう。

あ、それを想定して悠世くんは飲まなかったとか?


 どうしよう、胸が痛くて痛くて……

ああやっぱり。

あたし、悠世くんの事が好きなんだ。


 もうっ、いつのまに?

なんで好きになるかなぁ……

その先を望まないあたしは、好きになるだけムダなのに。


 京太くんと出会うまでは、誰も好きにならないようにしてきたし。

京太くんと別れてからは、いっそうそれを心掛けてたはずなのに。

しかも翔くんが好きだったのに。

って過去形!?

いや進行形なら余計タチ悪いわ!


 悠世くんに言われた通り、あたしって……

マリブみたいに気が多い女だったんだ!

いやもう最低っ。

惚れ薬ならぬ惚れ戻し薬を誰が発明してください!




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