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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
マリブパイン
25/51

 その日の閉店作業中。


「なんか最近、やたら白濱さんと仲良いよな」

翔くんに、つまんなそうに突っ込まれる。


 え、なにそれ……

まさかのほんとに気を引いちゃった感じっ?

なーんて、儚い夢を見るとこだった。


「ははっ、木馬が合っちゃった感じ?」

とでも言っておこう。



 そしてその突っ込みは、後日京太くんからも。


「なぁ粋、最近白濱さんと仲良すぎじゃないか?」


「まぁ打ち合わせでいつも顔合わせてればね~」


 YOSAKOI祭りの事は言えないから、そう誤魔化す。


「つか打ち合わせ多くないか?

今日もそうだろ?」


「うん、あ来たっ。

おつかれ悠世くんっ、座ってちょっと待ってて?」


 そう忘れないうちに、京太くんと話すアポ取んなきゃ!


「え、行かなくていいのか?」


「行くけどその前に……

話したい事があるから、今度プライベートで会えないかな?」


「えっ?

え、会えるよ全然!

つか粋のためならいくらでも時間作るしっ」


 わ~!声が大きいっ。

ほら翔くんがジロリと見てるじゃん!


 さらに、日時を決めてたら……

他にも視線を感じてそっちを見ると。

切なげな顔した悠世くんとバチっと目が合って、心臓が大きく音を立てる。


 パッとすぐに逸らされたけど……

え、なに?どしたのっ?

なんか仕事で辛い事でもあったとか?

一刻も早く聞いてあげたくなる。



 京太くんとの話が終わると、すかさず。


「ごめんね悠世くんっ。

でも打ち合わせに入る前に……

なんかあったの?

話すだけでもスッキリするかもしれないし、なんでも聞くよ?」


 すると悠世くんは少し驚いて、また切なげにあたしを見据えた。


 え、ちょっと待って。

そんな見られても……

いやイケメンなんだから自分の破壊力考えて~!

しかもその目でこれ以上見つめられたらっ……


「もお悠世くん見過ぎだから!

そんな凝視されたら動揺するじゃんっ」


「……俺には1度だって吸い込まれなかったくせに?」


「え、なにっ?」

ぼそりと零されて、1度だっての後が聞きとれなかった。


「いやなんもないし、そんな見てもないし、なに勘違いしてんだよ」


 こんっのくっそイケメンめ~!

まぁなんもないならよかったけどさ……



 それから打ち合わせに入って、しばらくすると。

今日は話せないと思ってか、プライベートで会う約束をしたからか、いつもより早めに帰ってった京太くん。


 それを見送ったところで。

休みの副店の代わりに厨房に入ってる店長から、提供要請が声かかる。


「はい行きまーすっ」


 いつものように、カウンターのお客様の背後にある通路を通って……

奥のテーブル席にデミクリームパスタを運んでると。


「ぅわっ!」

突然立ちあがったお客様の椅子にぶつかって。

ガシャーン!と、料理もろとも転けてしまう。


 うわどーしよう!!


「すみません!失礼しましたっ」

すぐに周囲のお客様に被害がないか確認すると。


「うそ信じらんない!ソース付いてるしっ」

そう立ちあがったお客様の、綺麗なワンピースの裾にデミソースがかかってた。


「すみませんっ!

どーしよう、すぐにっ……」


 すぐにどうする!?

テンパりながらも、とにかく汚れを拭き取ろうと。


「翔くんおしぼり取ってもらえる!?」


 すると翔くんより先に、なぜか悠世くんからおしぼりを渡される。


「ありがとっ」

すぐに処置にあたると。


「白濱さんすみませんっ、あとはアタシがやるんでっ」


 手が空いたマイマイが、フォローに駆けつけてくれた。

ってなんで悠世くんに謝るのっ?


 チラと背後を視界に入れると、その人は……


「いえ、店内業務が滞るしこれは僕にも出来るんで、一緒にフォローさせて下さい」

パスタの残骸を片付けてくれてた。


「助かりますっ。

じゃあアタシは店長に作り直しを言いに行って、パスタのお客さんに一声かけて来ますっ」


 うわあ2人ともごめんなさいありがとうっ。

でも事態はシビアで……


「最っ悪、これシミになるじゃん!

てかマジあり得ないんだけど、これ超お気に入りだったのにっ」


 そのお客様は、以前髪入りのトムコリンズを出してしまった翔くんファンのお客様たちで。


「申し訳ありませんっ」

2度も不手際を起こした手前、もうどうしていいかわからなくなる。


「俺が弁償するよっ!」

途端、キレ気味にそう吐き捨てる翔くん。


「えっ、なんで翔くんが?

てか社員なんだから自分で責任取らせなきゃ!」

もっともな指摘に。


「そうだよ翔くんっ、弁償ならあたしがするから」

そう賛同すると。


「もぉこーゆーの……

モメんのヤなんだよっ」

吐き出された言葉に、辺りが一瞬しんとなる。


 それを受けてあたしは、なんとかこの場を収めようと……


「本当にすみませんでした。

弁償はちゃんとあたしがするので、」


「弁償すりゃいいってもんじゃないから!

あんた前にもやらかしたよねぇ?

客に不快な思いばっかさせて……

辞めた方がいんじゃない!?」


 逆に火に油を注いでしまう。


「だからモメんなよ!」


「じゃあ翔くん、新井さん呼んで来てよっ。

このままじゃこの店の評判が悪くなる一方だし、もうモメないから報告だけさせてよ」


「はっ!?

今忙しいのに無理に決まってんだろっ」


 わあ~、翔くん言葉使いっ。

お客様だから落ち着いてっ?

ってあたしのせいですごめんなさい!


「報告なら今しました」

とそこで悠世くんから思わぬ一言。


「一部始終見てたんで、全部新井さんに報告しました。

さっきのパスタが出来上がったら話しに来るそうです」


 あぁ店長、迷惑かけてすみません。

と落ち込むも。


「……え、全部ってどこから?」


「ここで言っていんですか?」


 悠世くんとそうやり取りして、なぜか焦り始めるお客様たち。


 そしてあたしはマイマイに促されて……

汚れたサロンを取り替えたり、自分に付いた汚れの処理にあたると。

終えたところで、翔くんが厨房に呼ばれて……

続きの作業を任せた店長が、お客様たちの前にやってきた。


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