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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
魔王のロック
22/51

「もうほんっとーによかった。

舞王のみなさんによろしく伝えてねっ?」


 長時間過ごして、タメ語もだいぶ慣れて来た。


「ん……つか送るよ。

俺SUVだからチャリ積めるし、結構飲んでて危ないし」


「んーん全然大丈夫っ。

それに今から打ち上げ行くんでしょ?」

さっきそんな電話をしてた悠世くん。


「や、打ち上げは送ってから参加すればいいし、なんかあったらこっちが責任感じるし」

と押し切られ。


 悠世くんがそれを舞王の人に連絡しようとしたところで、その相手とちょうど会う。


 あ、受付んとこで戯れ合ってた人だ。

てゆうか、この人旗士さんだったんだな~。

2人の会話が終わるとすかさず。


「あのっ、優勝おめでとうございます!

今年もめちゃくちゃ感動しましたっ。

これからも頑張ってくださいっ」


「お~!ありがとうっ。

毎年見てくれてんの?

今度こいつ通じて遊びにおいで~」


「マジっすか!

嬉しいです絶対行きますっ」

と、願ってもない機会を掴む事に。




「どうしよう悠世くん……

まさか舞王のお城に招かれるなんてっ」

送りの車内は、当然その話で持ちきりに。


「お城って……

つか社交辞令とは思わないんだ?」


「そーなのぉ!?

だとしてもそこは悠世さまのお力で……」


「俺は力の無駄遣いはしない主義なんで」


 こんっのケチ男め~。

そうしてるうちに、近かったからあっという間に家に着く。



「今日はすっごく楽しかったし、何から何までありがとうっ」

ってなんだかデートの締めくくりみたいだけど……


「や、俺も色々聞けて良かったし」


 よかったのっ?

無理やり聞いてもらった感じなのに……


「じゃあもうダサいとか思ってないすかっ?」


「ん、ありがと……」


 ありがとお!?

まさかウンチク語って感謝されるとは……


「悠世くんって、実はいい人だよね~」


「どーゆー意味だよっ」


 こーゆーやり取りが楽しくて……


「だってさりげなく優しいし。

明日もきっとお店に来てくれるんだろうな~って」

遠回しに誘ってみたり。


「だからキャバクラかよ」


「え、いつもそんなふうに誘われてんの?

てゆうかキャバクラとか行ってるんだっ?」


「いや行かねーしっ。

松本さんこそ、いつもお客さんにそんな事言ってんだ?」


「え、あたし?

言ってるかな……」


「考えんなよ……」


「じゃあ次はいつ来るのっ?」


「だからそーゆうっ……

あぁも、次は水曜に打ち合わせ出来る?」


「打ち合わせっ?

店長の最終チェックの事?」


 次の企画はようやく夜カフェセットで。

サンプル作りと写真撮影だけだったから、あたしとの打ち合わせは今月早々に終わってた。


「そうじゃなくて。

例のスタンプカード、夜カフェの前に始めときたいなって。

アサイー屋台の好調にも結びつけたいし」


 あ、スタンプラリーで燃え尽きてすっかり忘れてた。


「了解ですっ。

ってやっぱり打ち合わせは敬語の方がいいのかな?」


「……まぁ、出来るだけ」


 それはけっこうややこしいな……


「じゃあまた水曜に」


 あ、帰っちゃうんだ?

悠世くんってほんといつもサクッと帰っちゃうよねー。


「はーいお元気でー」

まぁ、打ち上げ行かなきゃだけどさ。


「なんだよその棒読み……

そんな拗ねなくても、舞王に遊び行く件はちゃんとするから」


「え、ほんとにっ?」

それで拗ねてたわけじゃないけど……


「ありがとう悠世くんっ!」

もうめっちゃ好きっ。





 そうして水曜日。


「いらっしゃいませ~」

他のスタッフの声かけに、いちいち胸が騒ぎ立てる。


 あ~なんか!

仲良くなってからお店で会うの初めてだから、変に緊張する。

し、早く来ないかな~。


 入口のガラス扉から、何気にエレベーターの方を覗くと……

ちょうど出て来た悠世くんと、バチっと目が合う。


「お、おつかれさまでーす」

扉を開けて出迎えるも。


 うわ恥ずかしっ。

なに待ち構えてんだって感じじゃん!


「……お疲れ様です」


 しかもお互いぎこちないとゆう……



「さっそくスタンプカードですが……

前に言った通り、松本さんの案をもう少し練りましょう」


「はい先生!

前は聞けなかったけど、やっぱりもっと練らなきゃ使いもんにならないっすか?」


「そーゆうわけじゃ……

ただせっかくいい内容なんで、もっとそれを活かしたいなって。

つか先生って……」


「じゃあ部長?」


「いや真面目にやれよ」


 おっと、急にグイっとくる感じたまんないなー。


「まず特典メニューは、スタンプラリーのものを応用する形でいいですか?」


「全然OKですっ」


「じゃあ次に期限ですが、6ヶ月はどうですか?」


「短っ!

でもそれってやっぱり財布の肥やしにならないように?」


「まぁ平たく言うと」


 そうやってスタンプカードの内容を完成させてくと……



「じゃあこの内容で、新井さんのOKが出たらサンプルを作って来ます」


「お願いしますっ。

って事で、悠世くんはもう帰るの?」

タメ語が解禁になったとこで、さっそくコソコソ尋ねる。


「……や、この前言ってた魔王のロック?飲むつもりだけど」

同じく悠世くんも控えめに答えた。


「ほんとに?すぐ作るねっ」

よかった!まだ一緒にいられるっ。




「お待たせでーす」


「つかさっきからなんで小声?」


「……なんでだろ?」


 なぜだか周りの目が気になって……

それにこの秘密っぽい関係がくすぐったくて、大事に隠してたい気分。


「うわこれ、ほんとに焼酎っ?

すげぇ美味いんだけど」


「でしょでしょっ?

ところで、もうひとつの舞王はどーなったの?」


「あぁそれ、ここの契約が終わってから……

来年早々にでも連れてくよ」


「遅っ」


「いやそれまで色々立て込んでるし、連れてくんだから文句言うなよ」


「うそうそっ、ありがとね悠世くんっ」



 魔王は焼酎のイメージを変えたお酒で……

あたしと悠世くんの親密度もまた、同じ呼び名の舞王によって変わってた。




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