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そして待ちに待ったお祭り当日。
うわあ、この雰囲気たまんない!
どうしよう、興奮して胸が爆発しそうっ。
とりあえず、受付にガイドブックを取りに行くと。
「じゃ俺が勝ったら強制参加な?」
「や、ムリだし勝手に決めんなよっ」
「だいじょぶだって、はい俺の勝ちー!」
「それ卑怯だろっ」
側で戯れ合ってる踊り子さんたちが視界に入る。
うんうんテンション上がるよね~。
って白濱さん!?
その人は少年みたいな無邪気な笑顔で、踊り子さんたちとはしゃいでて……
え、誰これ別人!?他人の空似っ?
いつものクールな仏頂面からは想像もつかない姿に釘付けになってると。
それに気付いた白濱さんが、目を大きくして固まった。
「あ、お疲れさまで~す」
「っ、松本さん!
え、今回は行けないって言ってませんでしたっ?」
手の甲を口元に当てて、照れくさそうにそう戸惑う。
「あ~あれはっ、京太くんをかわすために言っただけで」
てゆうかほんと誰これ可愛いっ。
なんかギャップ萌えなんすけど!
思わずニマニマ、口元が緩むと。
「なんですかっ?」
「いえ、白濱さんって可愛いなぁって」
「はあっ!?」
すると周りにいた踊り子さんたちが、口々に冷やかし始める。
「え、誰だれ~?
悠世なにテンパってんの~?」
「テンパってねーしっ」
「おっ、ムキになるのがアヤシイなっ。
どんな関係か白状しろっ」
「いやクライアントさんだしっ」
いつもは1コ違いとは思えないほど、仕事も出来て落ち着いてるのに。
「白濱さんも若かったんですね〜」
「どーゆー意味だよっ」
同じ流れで突っ込んだあたしに、同じノリで返してきた白濱さんは、すぐにマズいといった顔を覗かせる。
「や、すいません」
「いえ全然OKですっ。
むしろそっちの方が親しみやすいってゆーか、これからは普通にタメ語でいーですよっ?」
「いえ結構です」
バッサリかーい!
「悠世冷たっ、可哀相じゃん!
てかお姉サン1人で見に来たのっ?」
「はい、みんなYOSAKOIの良さをわかってくれなくて」
「じゃあ一緒に見、」
「松本さん!ちょっとあっちの、いい席を案内しますっ」
「えっ、あのっ……失礼しますっ」
なかば連れ去られるように、ペコリとその場を後にすると。、
冷やかしの声が一層飛び交う。
それから白濱さんは、主催者側っぽい人と何やら話して……
あたしを関係者席に案内してくれた。
「え、部外者なのにいんですかっ?」
「まぁひと席くらいなら融通きくんで」
え、ひと席って……
「あたし1人でここにいるんですかっ?」
さすがにこのアウェイな席で1人は居心地悪いっ。
「あぁそっか、逆に居づらいか」
しまった!わざわざいい席を案内してくれたのにっ……
「いえ大丈夫ですっ。
あ、白濱さんは早くお友達のとこに戻ってあげてくださいっ」
てゆうか踊り子さんの友達がいたとは……
なんてチームだろ?
「……いえ、冷やかされるの面倒いんでここで見ます。
ただ立場上、僕は立って見るんで」
「えっ、じゃああたしも立って見ますっ」
自分だけ座るなんて気が引けるっ。
なのに。
「人の厚意を無駄にする気ですか?」
「ですよね、ありがとうございまぁす……」
こうなったらせめて、他に何か……
「あっ!
じゃあ暑いんで飲み物買ってきますね。
なにがいーですかっ?」
「クライアントさんの出店に恩を売っときたいんで、僕が行きます。
あ、代金は企画で返してくれればいんで」
そう言われたらなにも反論出来やしねえ!
「はは、頑張りまぁす……」
てゆうか、そーゆー隠れ優しさ反則だと思う。
ってなんのっ?
しかも。
白濱さんもそうだと思って、図々しくも生を頼んだら……
「え、ノンアルですかっ?」
「あぁ、車なんで」
うわ~あたしだけっ。
もう何から何まですみません!
「松本さんは電車ですか?」
「いえあたしはチャリです」
「チャリなんですかっ?
え、仕事もそれで通ってるんですか?」
「はい。
帰る頃には電車もないし、アルコールが入ると車もムリなんで、チャリで通えるとこに住んで」
まぁほんとはチャリの飲酒運転もダメなんだけどね……
「危なくないですか?」
「全くと言っていいほどないですねー。
とゆう事でビールいただきま~すっ」
そう、誰もあたしなんぞ襲いませんっ。
「あっ、そろそろ始まりますね~!
そーだ、さっきの踊り子さんたちなんてチームですかっ?」
ガイドブックをめくりながらも、見つける前に。
「38ページにある、舞王です」
「っ舞王なんですかあ!?
いやそれっ、あたしの大っ好きなチームなんですけどっ!」
「……あぁ、そうなんですか」
「うっわ、まさか白濱さんが舞王の方々とっ……
って、地元のチームじゃないのにどんなきっかけで仲良くなったんですかっ?」
YOSAKOIをダサいとか言ってたくらいなのにっ。
「えっ……
いやクライアントさんの1つなんで」
「あ~なるほど……
ってそれであんな仲良いんですかぁ!?」
ちょっとどゆことー!
あたしだってクライアントさんなのに、なにこの差っ。
「まぁ、馬が合ったってゆーか」
さてはその馬、木馬だな~。
「だからって差別じゃないすかっ?
いーな、あたしとも仲良くしてくださいよっ」
「……まぁ、機会があれば」
「だったら今がその機会です!
じゃあやっぱり、あたしたちもタメ語でいきましょうっ」
タメじゃないけど。
「いや、急には」
「じゃとりあえず、あたしも下の名前で呼んでいっすか?」
「はっ?
いや、まぁ、別にいーですけど」
「マジすか!
でわさっそく、悠世くんっ。
あたしの事も気軽に粋って呼んでくださいね~」
「それは遠慮します」
またバッサリかーい!
でもなんか、すっごく楽しんですけどっ。
「はは、じゃあタメ語はちょいちょい盛り込んでくださいね~」
でも演舞が始まると、盛り込む会話もなくなって……
「わっ」とか「おおっ」とか感嘆だけ漏らして、その世界に1人のめり込む。
だけどたまに。
「スイっ!スイっ!」と、掛け声であたしの名前を発してるチームがあるから…
白濱さんの手前、なんだか照れくさくなる。




