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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
魔王のロック
20/51

 そして待ちに待ったお祭り当日。


 うわあ、この雰囲気たまんない!

どうしよう、興奮して胸が爆発しそうっ。

とりあえず、受付にガイドブックを取りに行くと。


「じゃ俺が勝ったら強制参加な?」

「や、ムリだし勝手に決めんなよっ」

「だいじょぶだって、はい俺の勝ちー!」

「それ卑怯だろっ」


 側で戯れ合ってる踊り子さんたちが視界に入る。

うんうんテンション上がるよね~。

って白濱さん!?


 その人は少年みたいな無邪気な笑顔で、踊り子さんたちとはしゃいでて……

え、誰これ別人!?他人の空似っ?

いつものクールな仏頂面からは想像もつかない姿に釘付けになってると。


 それに気付いた白濱さんが、目を大きくして固まった。


「あ、お疲れさまで~す」


「っ、松本さん!

え、今回は行けないって言ってませんでしたっ?」

手の甲を口元に当てて、照れくさそうにそう戸惑う。


「あ~あれはっ、京太くんをかわすために言っただけで」


 てゆうかほんと誰これ可愛いっ。

なんかギャップ萌えなんすけど!

思わずニマニマ、口元が緩むと。


「なんですかっ?」


「いえ、白濱さんって可愛いなぁって」


「はあっ!?」


 すると周りにいた踊り子さんたちが、口々に冷やかし始める。


「え、誰だれ~?

悠世なにテンパってんの~?」

「テンパってねーしっ」


「おっ、ムキになるのがアヤシイなっ。

どんな関係か白状しろっ」

「いやクライアントさんだしっ」


 いつもは1コ違いとは思えないほど、仕事も出来て落ち着いてるのに。


「白濱さんも若かったんですね〜」

「どーゆー意味だよっ」


 同じ流れで突っ込んだあたしに、同じノリで返してきた白濱さんは、すぐにマズいといった顔を覗かせる。


「や、すいません」


「いえ全然OKですっ。

むしろそっちの方が親しみやすいってゆーか、これからは普通にタメ語でいーですよっ?」


「いえ結構です」


 バッサリかーい!


「悠世冷たっ、可哀相じゃん!

てかお姉サン1人で見に来たのっ?」


「はい、みんなYOSAKOIの良さをわかってくれなくて」


「じゃあ一緒に見、」

「松本さん!ちょっとあっちの、いい席を案内しますっ」


「えっ、あのっ……失礼しますっ」


 なかば連れ去られるように、ペコリとその場を後にすると。、

冷やかしの声が一層飛び交う。


 それから白濱さんは、主催者側っぽい人と何やら話して……

あたしを関係者席に案内してくれた。


「え、部外者なのにいんですかっ?」


「まぁひと席くらいなら融通きくんで」


 え、ひと席って……


「あたし1人でここにいるんですかっ?」

さすがにこのアウェイな席で1人は居心地悪いっ。


「あぁそっか、逆に居づらいか」


 しまった!わざわざいい席を案内してくれたのにっ……


「いえ大丈夫ですっ。

あ、白濱さんは早くお友達のとこに戻ってあげてくださいっ」


 てゆうか踊り子さんの友達がいたとは……

なんてチームだろ?


「……いえ、冷やかされるの面倒いんでここで見ます。

ただ立場上、僕は立って見るんで」


「えっ、じゃああたしも立って見ますっ」

自分だけ座るなんて気が引けるっ。

なのに。


「人の厚意を無駄にする気ですか?」


「ですよね、ありがとうございまぁす……」


 こうなったらせめて、他に何か……


「あっ!

じゃあ暑いんで飲み物買ってきますね。

なにがいーですかっ?」


「クライアントさんの出店に恩を売っときたいんで、僕が行きます。

あ、代金は企画で返してくれればいんで」


 そう言われたらなにも反論出来やしねえ!


「はは、頑張りまぁす……」


 てゆうか、そーゆー隠れ優しさ反則だと思う。

ってなんのっ?


 しかも。

白濱さんもそうだと思って、図々しくも生を頼んだら……


「え、ノンアル(飲まないん)ですかっ?」


「あぁ、車なんで」


 うわ~あたしだけっ。

もう何から何まですみません!


「松本さんは電車ですか?」


「いえあたしはチャリです」


「チャリなんですかっ?

え、仕事もそれで通ってるんですか?」


「はい。

帰る頃には電車もないし、アルコールが入ると車もムリなんで、チャリで通えるとこに住んで」


 まぁほんとはチャリの飲酒運転もダメなんだけどね……


「危なくないですか?」


「全くと言っていいほどないですねー。

とゆう事でビールいただきま~すっ」

そう、誰もあたしなんぞ襲いませんっ。


「あっ、そろそろ始まりますね~!

そーだ、さっきの踊り子さんたちなんてチームですかっ?」


 ガイドブックをめくりながらも、見つける前に。


「38ページにある、舞王(まおう)です」


「っ舞王なんですかあ!?

いやそれっ、あたしの大っ好きなチームなんですけどっ!」


「……あぁ、そうなんですか」


「うっわ、まさか白濱さんが舞王の方々とっ……

って、地元のチームじゃないのにどんなきっかけで仲良くなったんですかっ?」


 YOSAKOIをダサいとか言ってたくらいなのにっ。


「えっ……

いやクライアントさんの1つなんで」


「あ~なるほど……

ってそれであんな仲良いんですかぁ!?」


 ちょっとどゆことー!

あたしだってクライアントさんなのに、なにこの差っ。


「まぁ、馬が合ったってゆーか」


 さてはその馬、木馬だな~。


「だからって差別じゃないすかっ?

いーな、あたしとも仲良くしてくださいよっ」


「……まぁ、機会があれば」


「だったら今がその機会です!

じゃあやっぱり、あたしたちもタメ語でいきましょうっ」

タメじゃないけど。


「いや、急には」


「じゃとりあえず、あたしも下の名前で呼んでいっすか?」


「はっ?

いや、まぁ、別にいーですけど」


「マジすか!

でわさっそく、悠世くんっ。

あたしの事も気軽に粋って呼んでくださいね~」


「それは遠慮します」


 またバッサリかーい!

でもなんか、すっごく楽しんですけどっ。


「はは、じゃあタメ語はちょいちょい盛り込んでくださいね~」



 でも演舞が始まると、盛り込む会話もなくなって……

「わっ」とか「おおっ」とか感嘆だけ漏らして、その世界に1人のめり込む。


 だけどたまに。

「スイっ!スイっ!」と、掛け声であたしの名前を発してるチームがあるから…

白濱さんの手前、なんだか照れくさくなる。


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