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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
チェリーブロッサム
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「……珍しい名前ですね」


「ですかね?」


 まぁYOSAKOI(よさこい)好きなあたしには、ぴったりな名前だとは思うけど。


「てゆうか白濱さんも珍しい名前ですよねっ」


「いえ、どこの学校にも1人はいる名前です。

ではさっそく本題に入りましょう」


 いやあたしの周りには悠世なんて1人もいた事ないですけど……

と思いながらも、途端クールになる白濱さんに圧倒される。


 仕事モードに切り替わったってヤツっすか……


「まずは基本情報からお願いします」


「基本情報っ?

えーと、まず営業時間は18時~翌2時までで、金土は翌3時までです。

定休日はありません。

それと〜、席数は約60席ですが、パーティなんかの貸切だと80名くらいはイケますっ。

あとは……」


「お願いしまーす!」

とそこで、厨房から出来上がった料理を運ぶよう声かけられる。


「どうぞ、業務を優先して下さい」


 当然反応したあたしは、白濱さんにそう促されて。

ペコリと頭を下げて厨房に向かおうとすると。


「いいよ粋」

ポンと肩を叩いて、翔くんが行ってくれた。


 あぁなんって優しいの翔くん!

しかも肩ポンて、ポンって……

そんな翔くんに気遣わせてばかりいられない。


「あの!こーゆー打ち合わせって、普通営業時間外にしません?

たぶん話も何度も中断されるだろーし、あたしも業務とどっちつかずになっちゃうし……」


「松本さんの技量では対応が難しい、という事ですか?」


 ぐぬぬ、そう来たか……


「大丈夫ですっ。だだ普通はと思って」


「そうですね。基本はクライアントの指定時間に伺うので営業時間外が多いです。

でも特に要望がなかったら、準備時間も忙しいだろうし、営業後は疲れてるだろうし、他との兼ね合いもあるんで営業時間に伺う事もあります。


それに僕の場合。

営業中の状況や雰囲気をリアルに把握したいんで、必ず平日と週末の両方にお客として来店します。

ただその時は僕の都合で来てるんで、打ち合わせは出来たらといったスタンスで構いません」


 どー見ても同い年ぐらいなのに、しっかりしてるなぁ……


「白濱さんって、おいくつなんですか?」


「……22ですけど、それがなにか?」


 1コ上かぁ!てか言い方冷たっ。


「いえ、しっかりしてるなぁと思って」


「歳が関係ありますか?

僕はただ記事を取材編集するだけじゃなく、クライアントさんのビジネスパートナーでありたいと思ってるんで、そのつもりで向き合ってるだけです」


「おお、カッコよ」

思わず感嘆を漏らすと。


「そーゆうお世辞とか余計な話は要らないんで、本題を進めましょう」

そう冷たく流される。


 いやあんたけっこー手厳しいな!

てかお世辞じゃないし、余計な話って……

ビジネスパートナーならコミュニケーションとか心を許し合う関係作りも大事なんじゃないのっ?

ただ数字上げりゃいいってもんじゃないと思うんですけどっ。


「それで打ち合わせですが、平日の早い時間帯やオーダーストップ前を考えてるんですが、どうですか?

もちろん、業務優先で構いません」


 確かに、その時間帯が1番助かるかも。

準備中はバタバタしてるし、片付け手伝えないのは気が引けるし、打ち合わせが長引いて帰りが遅くなるのもちょっと……


「わかりました。それでお願いします」


 まっ、やり手といえど完璧な人なんていないだろうし。

コミニケーションは苦手なんだろな〜。


 いや、完璧な人がここにいた。

さらっと翔くんを視界に入れると。

意気込みを新たに、打ち合わせは第2ラウンドへ。


「……平均予算、低いですね」


「はぁ、そーなんですよね」


 実は翔くんのおかげで女性客は増えたものの、その客単価は低い。

女の子だからお酒も強くない子が多いし、ダイエットを気にしてかそんな食べないし、その分来店回数を増やしたいんだろう。


 だけどうちはメンズバーじゃない。

翔くんだけじゃなく、この店にも魅力を感じてもらいたい。


 そしてうちの店はダイニングバーとはいえ、コースのお客様以外は1軒目利用が少ない。

つまりうちの店に来た時には、すでにお腹いっぱいだったり、お酒もある程度入ってるのだ。


「だったら顧客数と一件目利用を上げたいですね。

じゃあそれは次回までに、気軽に立ち寄れるプランを考えてみます。

松本さんも何か案があればまとめといて下さい。

では次に……」


「ごめん粋」

そこでまた、業務によるラウンド終了。

と思いきや。


「パフェ3つ頼める?」


「全然いいよっ、何パフェ?」


 スイーツは今立ってるカウンター奥の作業場で作るから、打ち合わせは続行。


「あ、すいませんっ。

作りながら聞くんで続けて下さい」


「大丈夫ですか?」


「はい、いつもお客様と話しながら作ったりしてるんで大丈夫ですっ」

といってもスイーツが殺到したらキビしいけどね。


「では、この店のセールスポイントを教えて下さい」


「セールスポイントっ?

えーと、いいとこがありすぎてどこから言っていいのか……

カジュアルバーなんですけど、内容はちゃんとしてて。

カウンターが長い事もあって、お一人様でも来店しやすくなっていて。

あとは大型店ならではの、お酒の種類が豊富なとことか!」


 うわ~語彙力〜!

しかも、やっぱ作りながら考えるのは難しいし、さっきから……


「白濱さん、見過ぎじゃないすかっ?」

そんな凝視されるとやりにくいんすけど!


「それはすみません。

お客さんからも見られるだろうし、慣れてるかと思ってました」

どこか皮肉めいた笑顔が向けられる。


 くぬぅ~。いやそーだけど、慣れてるけどっ……

白濱さんはなんか凝視だしイケメンだし、そんな吸い込まれそうな目で見つめられたら意味なく緊張するじゃん!


 元カレもそーだったけど、あたしはそんな目に弱い。

そして何気にムカつく白濱さんをイケメンだなんて認めたくないけど……

この人もまた、かなりのイケメンだ。


 そりゃあ翔くんには及ばないけど。

猫顔ベースに、癖のあるクールさをプラスして、やんちゃさを2ダッシュした感じ。

 そんでもって翔くんは……

犬顔ベースに、爽やかな甘さをプラスして、色気を2ダッシュってとこかな。


 それはさて置き。

それからメニューの紹介や今やってるプランなんかをひと通り話すと。


「では、今日はこれくらいで終わります。

お疲れさまでした」


 え、ほんとにっ?


「はいっ、お疲れさまです!」

ホッと肩の荷が下りる。


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