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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
アメリカンレモネード
11/51

 京太くんとは、短大に入って始めた居酒屋のバイトで出会った。

2コ上で面倒見がよくて、明るくて長身イケメンの彼は、スタッフからもお客さんからも人気の的だった。


 そしてあたしも、明るい京太くんと一緒にいるのは楽しかったし。

その吸い込まれそうな目にドキドキして、密かに恋心を抱いてた。


 だけどそんな感情、恥ずかしくて表に出せるわけないし。

そのせいで初恋の時みたく、好きな人を傷付けてしまうあたしには、誰かと恋愛する資格はないと思ってたから……

就活を始める京太くんが、バイトを辞める日だけが迫ってた。


 そんなある日、なぜか突然告ってきた京太くん。

あたしはテンパりながらも、なにかの罰ゲームに違いないと。

「またまた~」と笑って流した。


 はい、最低です。

なのに京太くんは、それから毎日告ってくれた。


 その目は真剣で、すっごく嬉しかったけど。

ただでさえ恥ずかしいのに、みんなに冷やかされて……

「はいはい」とあしらう事しか出来なかった。

はいもう地獄に落ちろって感じです。


 そしてとうとう、京太くんはバイトを辞めて……

ものすごーく後悔したところで、最後に電話で告白される。


 さすがにラストチャンスだし。

電話だから周りの冷やかしもなければ、京太くんがバイトを辞めたから今後の冷やかしもないわけで……

ようやくOKに至ったとゆう。


 いやほんと、お前レベルで何様だよって感じだけど……

恋愛に超恥ずかしがり屋なあたしにとっては、すごく勇気がいる事だった。


 それからの半年間は、ほんとに楽しくて。

勇気を出してよかったって思ったけど……

そんなあたしだから、気付けば京太くんとの間に大きな溝が出来てた。


 ある日、バイト先の友達と京太くんが浮気してると耳にする。

確かにその頃の京太くんは、携帯でコソコソしてたし。

その友達も前は京太くんを狙ってた。


 だけどこんな性格だから直接聞けずに、悶々とした日々を過ごしてて……

ついにデート現場に遭遇する。




「やっぱり浮気してたんだっ?」


「……だったら?」


 否定も謝罪もしないんだ……


「……別れよう?」


「っ、あっそ。

つかお前、俺の事なんか別に好きじゃなかっただろ」


 だから俺は悪くないと言わんばかりに、そう吐き捨てて。

京太くんはその友達と去って行った。




 好きだったよ。

こんなあたしに、懲りずに好きって伝え続けてくれて……

ほんとにほんとに嬉しかった。


 なのにあたしは……


ー「好きだよ、粋」

「うん、あたしも……」ー

1度もその言葉を返してあげれなかったし、行動でも示してあげれなかった。


 キスまでは頑張ったけど、その先は恥ずかしくて拒み続けて……

きっと傷付けてたよね?

そんなあたしは、やっぱり誰とも恋愛しちゃいけなかったんだ。


 だから、浮気されても仕方ないとは思ってる。

だけど、あたしもめちゃくちゃ傷付いた。

悲しくて、苦しくて……

その友達と一緒に働くのが辛くて、そこのバイトも辞めた。


 それを癒してくれたのが、ここClutchで……

せっかく立ち直ったのに、もう会いたくなかったよ。



「ちょ、マジ?

ごめん、そんな切ない顔しないでよ。

その彼もさ、何やらかしたか知んないけど謝ってきたんでしょっ?

もしかしたら向こうも粋の事忘れられないのかもしれないし、また来るかもしれないじゃんっ。

あ、そしたらアメリカンレモネード出してあげなよっ。

アタシが上手く取り持ってあげるから!」


 なんだか勘違いしてるようだけど……

必死に慰めてくれてるマイマイに、心がわしゃわしゃほぐされる。


「ははっ、なんでアメレモ?」


「ん?そのカクテル言葉が"忘れられない"だから」


 出た、姐さんのカクテル言葉。

おかげで一気に楽しくなる。


「ありがと、マイマイ」

もう大好きっ。


「ん、来るといーねっ」


ってソコはちがーう!

来なくていーし、さっきから不吉な事言わないでー。

ほんとに来たらどーす……


「あ、いらっしゃいませ〜」


 うそマジでっ?

びくうっと肩を揺らして顔を向けると。

なんだお客様か……

いや、なんだじゃない!


「いらっしゃいませ~」

お待ちしてましたお客様っ。

今日もお仕事頑張るぞー!




 そして木曜日。

今日は甘やかさない副店が休みだから、姐さんに「こんな時くらい甘えときな」と諭されて。

打ち合わせに集中出来ると、再びやる気満々でそれに臨むも……


「白濱さんっ、さっそく雑誌の反応がチラホラ出てます!嬉しいですっ」


「そうですか。

また週末の様子がわかったら教えて下さい」

相変わらずクールに流される。


 仲良くなれたと思ったのに……


「では8月号の企画ですが、松本さんの方で何かありますか?」


「えっ、次こそ夜カフェセットじゃないんですか?」


「それは食欲の秋を狙って、9月号の企画に考えてます。

来月は夏バテで食欲が落ちて興味を引きにくいと思うんで」


「なるほどっ」


 でもそれなら早く言ってほしい……

思い込んでたあたしも悪いけど、もう店長に夜カフェセットのOKもらっちゃったじゃん!

うーん、相棒ならもっと意思疎通を図んないと。


「あの白濱さんっ。

いい記事を作るために、もっと絆を深めませんっ?

もっとこう親密度を上げて仲良くしましょーよっ」


「仲良くって……

遊びじゃないんで。

それに絆って、深めようとして簡単に深まるもんじゃないと思います」


 堅っ!

その頭とガードの堅さなんなわけっ?

仕事は柔軟に考えれるのに……


「でもコミニュケーションは大事ですって!

一応口は堅いんで、仕事の愚痴でもプライベートの相談でも、なんでも聞きますよっ?」


「特にないです」


 バッサリかーい!


「そ、そっすか~。

あっ!じゃあノロケ話とかでもいいですよっ?

すずちゃんさんとめっちゃお似合いですもん」


 よしっ、これなら白濱さんを狙ってる疑惑も晴らせる。


「……そうですね。

そんなんで絆が深まるなら、僕からもいいですか?」


 おおっ、食いついた!


「もちろんです!なんですかっ?」


「松本さんって、平岡さんの事が好きですよね」


 ガシャーン!と、拭いてたグラスを思わず落とす。


「しっ、失礼しました~」


 何を言い出すんだこの男わ!

周りのお客様に謝りながらも動揺する。


「粋、大丈夫?

危ないから俺片付けるよ」


「いーいいっ、ほうきと塵取りだから全っ然危なくないしっ」


 ひぃ~!翔くんまさか聞いてないよね?聞こえてないよねえっ?


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