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溺愛シェーカー   作者: よつば猫
アメリカンレモネード
10/51

 6月の最終日曜日。

ただ今、立て続けの二次会をテッカテカで頑張り中。

1組目が終わって、バタバタバッシングからの~2組目のセッティング。

今日は店長が休みだから余計慌ただしい。


 あれから白濱さんは、カメラマンと店内の写真を撮りに来たり。

スタンプラリーカードや特典メニュー表のサンプルを持って来たりして……

あとは雑誌の発行を待つのみになっていた。


 原稿の最終チェックは店長がしたから、どんな出来になってるか楽しみで仕方ない。

発行前日の明日には持って来てくれるらしいけど……

なにげに、白濱さんと会うのも楽しみだったりする。


 せっかく相棒っぽくなれたのに、もう2週間くらい会ってないし。

あの塩対応も、ないと寂しかったりして……

まぁ白濱ロスとでも言っておこう。

副店の毒舌も嫌いじゃないし、実はまぞっ子スイちゃんなのかもしれない。


「粋ちゃん、受付さん来たから案内よろしく」


「え、もうですかっ?」

ひぃ~、まだトイレチェックも終わってないのにっ。



 それでも、その他もろもろなんとか間に合わせて……

あとはしわ寄せをくらった乾杯ドリンクの手配だけ。


「おねーさん、ビールこっち!」


「はいっ、お待たせしましたっ」



 そして頑張ったあたしに神様は……


「えっ……粋?」


「……っ、京太(きょうた)くんっ」


望まぬ再会をよこしやがりました。


「え、ここで働いてんだ?」


「えーそれでは、ドリンクの方は行き渡りましたでしょーかっ?」


 京太くんの質問は司会者によって遮られ。

あたしはペコリと会釈して、ここぞばかりにそこから逃げた。


 だけど店内から逃げれるわけもなく。

会が始まると結構ヒマで……


「生、もらえる?」


カウンターのビアサーバー前で、オーダーに来たヤツに捕まる。


「はいどーぞ~」

あえて他のお客様と同様に対応するも。

いや居座んないで席に戻ってー。


 そこにいいタイミングで。

料理を作り終えて手の空いた翔くんが、厨房から出て来たから……

バトンタッチで再び逃亡を試みた。

なのに。


「あの時はごめん!」


ギャ〜!

そんな意味深な言葉で引き止めないでー。

そんでうわ〜!

翔くんも副店もこっち見ないでー。

と、とにかくここは穏便に……


「ううん全っ然気にしないでっ?

あたしも悪かったと思うしっ」


「……優しいよな、粋は。

俺、あんな酷い終わり方したのに……」


 いや優しんじゃなくて今さら的なっ?

お願いだから忘れさせてくださいっ。

忘れられないけど……

てゆうかこんなとこでそんな話マジやめて~!


「じゃあ二次会楽しんでねっ。

翔くん!厨房なんかする事ないっ?」

もう引き止められないように、他の人に話しかけて強制終了!


 だけど今度は別の問題が……


「元カレ?」

厨房に入るなり、翔くんから痛いとこを突かれてしまう。


「あ~、まぁそんなとこかなっ?」

なんでわかるのー!

ダメだ、くっそ恥ずかしい……


「なんだ、恋愛に興味あんじゃん」


んんっ?

なんだってなに、なんだって……


「いや、ははは~。

そんな時もあったかな~なんて」


 お願い、恥ずかしいからもう触れないでっ……

なんで好きな人と自分の恋バナせにゃならんのだ。



 そうして京太くんの事は、二次会終了までなんとかかわせたものの。


「さっきのイケメン、元彼なんだって?

粋ちゃんにも黄金期があったんだ」

当然副店からも古傷に触れられる。


 ってこらこらこらこら!

思っても言わなーい。


 でも確かに。

京太くんみたいな長身イケメンが、なんであたしなんか好きになってくれたのか不思議だけど。


「にしても、こんな仕事してると色んな偶然に出くわすよね~。

俺も今の嫁さんと元カノが鉢合わせした時はどーしょうかと思ったよ。

まぁ何も起こらなかったけどさ」


「わかります。

俺もこの前元カノが来た時めちゃくちゃ気まずかったし」


 え、そんな事があったんだっ?

てゆうか別れたとはいえ、どんだけ前世で善行を積めば翔くんの彼女になれるんだろ……


 まぁとにかく、元彼話題が終了してよかったし。

京太くんともあれ以上絡まずに終わってよかった。




 そして翌日。

そんな事もすっかり忘れるほどの楽しみがやってくる。


「ああ白濱さんっ!

お久しぶりです会いたかったですっ」

2週間ぶりの対面にワンっと懐くと。



「え……」

怪訝な顔でドン引きされる。


 いや別に狙ってないから警戒しないでー!


「いやあの、出来上がりが楽しみで楽しみでっ」


「ですよね。

こちらになります」


 開かれたページは……

ハイセンスー!

店内写真を背景に、フェスのカクテルや店舗情報がブロック型に組み込まれてて。

そのレイアウトはアーティスティックで、まとめて映されるより個々の見映えが際立っていて…

なのにどこかあったかい。


「さすがです白濱さん!

もう神です最高ですっ」


 あ、SNS映え間違いなしって……

あたしが言った事も載せてくれてる!

もう大好き白濱さんっ。

全然役に立ってないけど、一応一緒に作った企画なわけで……


「なんか我が子を送り出した気分で感動ですっ」

といっても子供いないからわかんないけど。


「よかったです。

この調子で次も頑張りましょう」


「はいっ、じゃあさっそく打ち合わせに入りますか!」


「いえ、今日はこれで失礼します。

他のクライアントさんにも届けないといけないんで」


「あぁそっか、そーですよねぇ」


 ちゃんと夜カフェセットのコストを割り出して、サンプルを作る気満々だったから……

ガックリと肩が落ちる。


「なので、今週の木曜はどうですか?」


「全然OKですっ」



 すると白濱さんが帰ったところで。


「粋っ、副店から聞いたよ~?」

待ち構えてたかのように、マイマイが駆けつけてきた。


「何を?」


「昨日、元カレが来たんだって?」


 副店め~、せっかく終わった話を広げやがってー。


「あんたちゃんと恋愛してたんじゃん、安心した。

しかもかなりいい男だったって?隅に置けないわー」


「あ、あはは~」

自分の恋バナほんと苦手だ恥ずかしいっ。


「でもこれでわかった。

あんたが恋愛に興味ないのは、その元カレが忘れられないからだっ」


 ちっがーう!

いやまぁある意味忘れられないけど……

隠してるだけで今は恋してるしっ。

ただ、恋愛する資格がないと思った理由のひとつは元彼だけど……


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