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公女さまが殿下に婚約破棄された  作者: 杜野秋人
公女さまが殿下に婚約破棄された
5/9

そして彼女は幸せを掴んだ

「それともタイチさまは、わたくしが滞在することがお嫌ですか?」

「それこそとんでもない!公女さまさえ良ければ、お好きなだけ滞在して下さって構いませんとも!」


 すると公女さまはみるみる不機嫌に。

 え、なんで?今の何が気に入らなかった?


「もう、『公女さま』ではありませんわ!わたくしのことはアントニアとお呼びくださいませ、と何度もお願いしておりますわよね?」

「いやいやそんな、公女さまのお名前をお呼びするなんて、そんなふけ」

「不敬ではありませんわ!わたくしが呼んで頂きたいと申しているのですから!」

「いや、でも」

婚約者(・・・)の名を呼ぶことがそんなにお嫌なのですか!?」


「ていうか、一番の問題はそこでしょう!?なんで公女さまともあろうお方が、商人上がりの男爵家の倅の婚約者になろうとしてるんです!?」


 そう、公女さま…………つまりアントニアさまがいつまでもお帰りにならないのはこれが理由。

 あろうことか、この俺の婚約者に(・・・・)なりたい(・・・・)と言い張っておられるのだ。


 いやまあお互いに婚約者がいなくなった身ですけど?だからって余り者同士で………ってのは安直すぎません?

 ていうか、身分の差があり過ぎて恐怖しかないんですけど!?身分だけじゃなくて教養も容姿も影響力もまるで比べ物にならないし、どう考えても不幸しか生まないと思うんですがね!?こっちは公爵家に恩を売って、今後の商売に役立てばそれでいい、ぐらいにしか思ってなかったのにね!?


「問題ありませんわ。各国を股にかけるヨロズヤ商会と縁を繋ぐことができると公爵(ちち)も喜んでおりますし」

「公爵閣下公認!?」

「母なんてヨロズヤ商会でわたくしの婚礼衣装一式注文すると張り切っておりましたし」

「あ、それはお買上げありがとうござ…………って婚礼!?」

「正直申し上げて、わたくしもあのバカ王た………コホン。殿下の言動には腹に据えかねるところがございましたの。それに比べれば、身分こそ低いとはいえ飾らず自然体で穏やかなタイチさまの方がよほど好ましいですわ!」


「い、いえ………ですが………」


 俺なんて教養も何もないし、ちょっと目端が利くだけで黒髪黒目の地味な容姿だし、公女さまに釣り合うとはとても………。

 だいたいヨロズヤ商会(うち)からして東方世界から流れてきた移民の商家だし!由緒正しい公爵家とはホントに釣り合いませんってば!


「それとも、タイチさまはわたくしではお気に召しませんの?」


 そっ!?そんな男爵家の娘(アイツ)がしてたみたいな可愛らしい仕草したって!……………………………………いやクッソ可愛いなおい!


「ですが、その、」

「もうすでにお義父さま(・・・・・)に付いて商いのやり方も学び始めておりますのよ!タイチさまのお役に立てるようにと!」

「うっ、うちにお嫁に来るおつもりで!?」


「だってわたくしにとって、タイチさまは命を救って下さったヒーローですもの!」

「そんな事言ったって!俺先輩より歳下ですよ!?」

歳上の妻(・・・・)は、タイチさまはお嫌ですの?」


 ヤバい、これは逃げ切れないかも知れねえ!






 そんなふたりが正式に婚約したのは半年後、そこから婚姻するまでおよそ1年半である。

 婚姻式は筆頭公爵家と国内最大の商家の総力を上げて盛大に執り行われ、約一名を除いて笑顔の絶えない式になったという。なおその一名は胃が痛むのか、常に腹を押さえていたそうな。







余計な手出しをしたばっかりに逃げられなくなった男の話。


でも奥さん幸せそうだしまあいっか、とか思ってそう。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  さすが商家の息子読みと行動が早い。  公爵家はともかく、王家や騎士団出し抜いて公女を保護する&出来る人材を有しているのもポイント高い。  いやこの猶子の人、主人公にしてもそれなりにストー…
[一言]  とても面白かったです。  できたら、宰相の息子や騎士団長?、副団長の息子がどうなったかも知りたかったですね。
[一言] 余計な手出しとは言いますけれど、その手出ししなかったら彼女死んでましたしね?王太子も死罪直行だったでしょうけど、(まあゆっくり死ぬか、すぐ死ぬかの違いだったのでしょうけどね)結果良ければ、で…
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