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プロローグ
「ガァウゥヴヴヴヴーー」
鳴り響く轟音は、およそ生物の咆哮とは思えなかった。
ほんの数分前まで、綺麗に整理されていた室内は、瓦礫の山となり、壁には大きな穴まで空いている始末である。
破壊音や、悲鳴が段々と近づいてくる管理室。モニターに顔を貼り付け、興奮している男がいた。
酷く痩せており、健康とは程遠い容姿であったが、瞳だけは夢見る少年のようにキラキラとしていた。
「やれぇっ!やれぇっ!」
男は壊れたように、何度も同じ言葉を叫んでいる。
ゴンッ!!
物凄い音共に、彼のいる部屋の壁が砕け落ちた。
何かが、打ち付ける音と共に、空いた穴は大きさを増していく。
先程まで叫んでいた男は一転、唾を呑み静かに目の前の事柄を眺めていた。
壁は原型を失い、その先の景色を映す。
立っていたのは、巨大な青い化け物であった。
目が合う……刹那、男の顔があった場所は大きな青い拳に代わっていた。
「ガァウゥヴヴヴヴーー」
それはまた叫ぶと、何処かを目指して走り始める。
そしてまた、何かが壊れる音と悲鳴が建内に響き渡った。