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テンプレートだけど、普通に怖い

「もう歩けなーい!」


聖夜がそう叫ぶと地べたに座り込みその豊満な胸が上下に揺れる。


俺たちチーム『グットフレンズ』は今は一応整備されたであろう山道の特に整備されていない歩道に沿ってひたすら歩いていた。

馬車や大画家の車でも通るのか無駄に横幅がでかい道。


簡易的な小屋から出るとそこは森林でした。

本当に森。木しかなくて草。

こういうのって普通街スタートじゃねーの?

王室の客間とか言わねーから、せめて街中の人類の文化がある程度ある場所からスタートしろよ女神さま。

本当に世界救わねーぞ!そこらへんにいる美少女とっかえひっかえしてハーレム作るぞ!冗談じゃなく。


とっ換え引っ換えする美女どころか人すらいないんですけどね!

いるのは見たことない虫に女体化した男友達だけなんですけどね!


なんとか人工物らしき道を見つけてそれに沿って歩いているのだが誰も通らない。

ここが異世界だとしても歩いていれば人に会うだろうと軽い考えを持っていたのだが、行商人や馬車、全くと言っていいほど人に会わない。

すでに人類邪神に滅ぼされた後なんじゃねーの?

山道といえどハイキングしてる老夫婦ぐらいにはであわさせろ!


「がんばれ聖夜。さっき休憩したばかりだろ?日が落ちる前に人里におりたいし」


「無理だヨォ練磨くん。もう足が棒のようなんだよ!喉も渇いたし、胸も重いしいつもより体力が落ちてる気がするし」


涙目の上目遣いでこちらを見ている。

やめろ!そんな捨てられる前の子犬のような顔すんな。かわいいじゃねーか!


練磨は軽く溜息を吐いて肩を回す。


「お前が体力ないのは元からだろーが。と言いたいが俺は俺で結構疲労感があるんだよな。あの程度の山道下山したくらいで脚もいてぇし。体力には自信がある方だったんだがこれも女体化の影響なんだろうか?」


まじか!

聖夜の体力がないのは昔からだったが、練磨も女体化して体力減ってのんのか!

可愛くなった点以外のデメリットが多すぎるな女体化。


体力の減少に身体への影響、元男だから手を出す気にもなれないし。

これだったら女体化せずに仲良し男友達3人そのままの姿で異世界に来た方が楽しかったんじゃねーの?


しかし困った、俺自身全く疲労も足の痛みも感じねーからこのままサクサク進めると思ったのに。

見たところ、練磨はまだ余裕ありそうだが聖夜は限界、というか限界突破してる。

潤んだ瞳がそれを物語っている。


もう一回休憩という線もあるがこのままだと日が暮れてしまう。

問題は右も左もわからん異世界で人気のない山道を日が暮れたあろに散策するのは危険すぎる。

道を照らす街灯も一本もないし。

この世界にも月があり、今日が満月なら月明かりで十分周りが見える方いいのだがそれを見た感じつきらしきものはなく、現世と同じ太陽が燦々と空を照らしている。

まだ出会ってはいないが異世界の現世とは違った進化を遂げた動物やお約束の盗賊団に襲われる可能性もなきにしもあらず。


俺は聖夜の前にしゃがみ込み背中を向ける。

俺自身はまだまだ体力が残っているし、聖夜ぐらいの軽い人間ならおんぶすることなど造作もない。

俺これでも多少は鍛えてるんで。


それにこいつがこんな目にあう原因を作ったのは不本意ではあるが俺だしな。


「乗れ、聖夜。俺はまだ余裕があるし。こんな目にあってんのも不可抗力とはいえ俺のせいだしな」


「うぅ、ありがとう」


聖夜ゆっくりと俺の背中に体重を預ける。

だが、ここで俺は見落としていたことがある。

それは聖夜の胸についた二つのエベレスト。

ふわふわとやらかく、吸い付くように反発するように俺の背中にのしかかる。

その衝撃はビックバンが起こり新たに星が一つ生まれるのではないかと錯覚するほどである。


それは、胸と表現するにはあまりにも大きすぎた。

重く。

柔らかく。

大きすぎるおっぱいだった。


もう、こっちに来てから聖夜のことに関してはおっぱい関係ばかりである。


聖夜が俺に全体重を捧げることにより密着度はまし、俺との体とのシンクロ率もます。


落ち着け俺!!

これは脂肪の塊、これは脂肪の塊、これは脂肪の塊!

偽れ、演じろ。今まだもそうやって生きてきたじゃないか!

メッキのごとく表面を金属で塗り固めろ。


男友達のおっぱいでドギマギ興奮してんじゃねぇ。

この童貞ガァァァァァァァッァァァァァァァッァァァァ!


「大丈夫?鍍金くん?」


しゃがんだ状態から立ち上がらない俺を心配してか、耳元で囁かれる。

なんかぞわぞわするからやめて。

今必死に耐えているんだから!


よし、いいぞ!立てる。立てたつんだ、そっちは立たなくていいから、ウインナー!

今は女の体になっているとはいえ、男友達相手に御起立したら墓場まで笑われる。


意を決して両足に力を込める。

普段から遊び半分で聖夜のこと抱っこやおんぶ、肩車とかしているけど少しいつもより重い。

こ、これが胸の重み、いや!考えるな!


「ほんと、鍍金は聖夜に甘いよな。はぁ、俺だって疲れてんのに。なんでそんな前かがみになってんだ?」


何かぶつぶつと練磨が呟く。

よしオッケー、いつも通りの感覚が戻ってきた。


「うるせぇ、おまえも元男ならわかるだろ。察してくれ。いくぞ、出発進行!」


歩き出す俺に練磨はため息を吐きながら足を動かし始める。


今のところ、異世界ぽいものといえば虫と植物しかない。

異世界に来たって感じしねぇな。

魔物とか出てこねぇかな。俺とかでも倒せそうなやつ。

初エンカウントはやっぱり王道のスライムとかちょっと凶暴かした猪でしょ!


で、それに襲われている新米冒険者の美人冒険者なんかを救って感謝されるわけ、そして二人で強くなっていって仲間を増やしていきラスボスを倒す。


やめよう、虚しくなってきた。

歩けど歩けど、木々しかねぇよ。ムシしかいねぇよ。

異世界転移どころか、山ん中遭難している気分だわ。

山ん中でサバイバルしていたときだってもうちょっといろいろあったぞ。


食べれそうな植物も果実も動物も水も見当たらないし今日中に人里につくかどうかの不安。

俺はまだ喉も乾いてないし、腹も減ってないが練磨と聖夜はどうだ?

聖夜は今俺の背中で完全にスリープモードに入っている。耳元で可愛い寝息がかかってくる。

練磨はというと何一つ弱音も吐かず、ただひたすら歩いている。

というか会話がいっさない。

はじめの頃はべちゃくちゃしゃべっていたのだが、今はもう話すこともなくなってただひたすら沈黙の中歩いている。

別に気まずいわけではないが少し寂しい。


ちらりと練磨の方を振り返ろうとしたとき軽く地面が揺れ始めるのに気づく。

それは小さな小さな揺れであるが地震とは異なった揺れ。


遠くから車輪を引く音が聞こえてくる。

この地鳴りからしてそこそこに大きな馬車であろう。

おぉ。ついに人間とエンカウントか!待ちに待ってました。


音が聞こえている方に足を進める。

練磨も音に気がついたのか、少し暗い表情から明るい表情に変わる。

運が良ければ乗車させてもらえるように交渉しよう。

この世界の金だってあるし。俺は邪神を倒すために女神に派遣された勇者の一人だ!

交渉材料ならいくらでもある。


これで練磨を少しでも楽させられる!


期待を胸に抱くが、地鳴りも止み気がつけば車輪の音も聞こえなくなってきた。

その代わり何か硬い金属音が叩き合うかな切り音がこだまする。

なんか嫌な予感がするな。


「うわぁ。なんか金属音が聞こえてきてくるんだけど。大丈夫なの?」


俺におんぶされて眠っていた聖夜が目を覚ましたようで聞こえてきた音に対してそう答える。


「大丈夫、とは言い難いな。足の方はもう大丈夫か?」


「助かりました、鍍金くん。まだ若干痛いけどだいぶ楽になったよ」


身軽に俺の背中から降りる。

あぁ、あの幸せな感触が急に背中から消えた。

ぬくもりだけが背中に残っている。


「練磨、聖夜。とりあえずこの歩道から木々の方に移動しよう。しゃがんで身を隠しながら金属音がする方に行くぞ。ついてこい」


「「了解」」


木々の方に移動して身を低くしながら歩く。

音のなる方を見てみると一台の豪華な馬車があった。

真っ赤な攻撃的な色をしており、装飾もはで。

見ただけでお偉いさんが乗っています!とわかる。

扉についたドラゴンのような文様は家紋か何かだろう。

中2心的にどストライクでございます。


その馬車を取り囲むように8人の汚い格好の男たちが、3人の馬車についた家紋と同じ文様の入った鎧を被った騎士に対して持っている武器で攻撃をしている。

鎧は赤色、青色、黄色の色に分かれていた。

全員が自分の身長ほどある両手剣を装備している。


男たちは汚い盗賊のような格好をしているがその筋肉のつきかた、立ち振る舞い方して相当に喧嘩慣れしてそうだが行かんせん力の限り攻撃するといった攻撃手段である。

持っている武器もろくに手入れのされていない、釜や剣、こらへんの木で作ったであろう棍棒である。

一方、鎧の騎士たちは自分の身なりほどある剣で相手の棍棒や剣をいなしつつ隙が空いたときに攻撃している。

現にもうやられたのか似たような格好の男二人が地べたに寝転がっていた。


8人の後ろには天然パーマのようなくるくるした金髪で動きやすい服装の男が腕を組んでイライラしながら怒声をあげる。


「いつまでちんたらしているんだ!『ユメデリカ第2王女』の近衛騎士ごときに!はやくころせ!」


偉そうに。自分は何もしてねぇくせに命令口調のやつって俺嫌いなんだよねぇ。

怒声が響き渡り、汚い格好の野党がより引き締めた顔つきになる。


面倒くさそうな匂いがプンプンする。

確かに異世界モノのテンプレート盗賊に襲われている馬車を救いそれに乗っているのが有名な貴族のご令嬢で助けたことにより惚れられる。

みたいな展開ライトノベルで死ぬほど読んできたけど、現実で起こっているところを見ると普通に怖いな。


一歩間違ったら死に直結するし、安全な日本で暮らしてい俺からすれば特に武器も持たずにあの戦闘に加わるほどの勇気はない。

襲われているのが知り合いや、友人であれば助けに行くのだが知らない人間だし見なかったことにしよう。


異世界にてようやく見つけた人間だがばれないようにここは立ち去ろう。

大丈夫、見た感じ騎士の人たちのほうが優勢っぽいしこのまま野党ぐらいなんとかするでしょう。


練磨と聖夜の方を振り向きここから離れそうと言おうとするとそこには立ち上がった練磨がいた。

つり上がった目つきが怒りの表情を物語っている。

おい!やめろ、練磨これは喧嘩じゃなくて殺し合いなんだぞ。

と練磨を制ししようと手を伸ばすも届かず、一番近くにいた盗賊の男をふいをついて殴り飛ばす。


殴り飛ばされた盗賊はいきなり現れた練磨に驚きつつも体勢をたてなおそうとするが練磨のジャブの連打によりボコボコにされその場に崩れ落ちる。


「おいおいおい!多勢に無勢なんてのは格好悪いんじゃねーの?タイマン以外は喧嘩じゃねぇ!」


あのバカ!

こっちに来てまで自分のルールで動いてんじゃねぇよ。

喧嘩じゃねーの!殺し合いなの!これだからライトノベルを読まない系の不良は!


盗賊たちも急に現れた練磨に少し気を取られている間に赤い騎士の大剣の斬撃により切りつけられる。

切りつけられた場所から見たこともないような血しぶきあげながら地面に倒れこむ。

攻撃したことによりみせた隙を盗賊が見逃すはずもなく、攻撃した騎士に持っている棍棒を大きく振りかぶり叩きつけようとするが他の騎士がカバーし、棍棒を持った男を切り捨てる。


盗賊たちは一度距離をとり、体勢を立て直す。

天然パーマの男はさらに苛立ちじだんだをふむ。


「なんだお前はぁ!いきなり現れて邪魔しやがって意味のわからんことほざきよって!そいつも殺せ!お前たちみたいな木偶の坊雇ってやったんだ!給料分ぐらい働け!」


盗賊たちは不快な顔を浮かべながらも武器を掲げまた攻撃する。

だが、人数によるリーチはもうほとんどなく、あっという間に騎士たちにより切り捨てられる。

初めは10対3だったのが今では5対4。

実力の方も騎士たちと練磨の方が上だったようで特に苦戦することなく決着はついた。


「ふざけるな!ユメデリカ王女さえいなければ、アルクセイ王子を次期王にすることだってスムーズにことが進むのだ!こうなったら、お前ら全員しねぇ!」


天然パーマの男は腰の袋に入っていた巻物を広げ練磨たちの方に向ける。

すると巻物に書かれていた何かしらの文様が光、そこから大人一人分ほどの巨大な炎が噴出される。


誰か一人、盾になればなんとか防げそうではあるが、こういう時に率先して身を乗り出しちまうのは俺の悪い癖である。


「鍍金!」


練磨が叫ぶもその時すでに巨大な炎は俺を飲み込んでいた。

燃える、燃える。

俺の全身が、服が燃え上がる。

ちくしょう、異世界に来て速攻でリタイヤか。


悪いな女神様。

世界は救えなかったが一緒に来た友達一人救えたんだ、あの世で少しは褒めてくれよ。

死の恐怖よりちっぽけな満足感のおかげで俺はこの炎の熱さを感じることはなかった。


気がつけば炎は燃やすものがなくなり俺の足元には消し炭になった制服が残されていた。

俺はというと一糸まとわぬ姿で、その場に立ち尽くしていた。


「いやん。見ないで」


手でなんとか恥部を隠す。


「「「キャァァァァァァァァぁ!」」」


鎧を着た騎士の人の絶叫が森じゅうに木霊した。

あんたら女だったんかい!

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