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08話「日常①」

「こちらが報酬です」


ギルドで清算し5等分にされた金額が渡される。


「ファングボア、やっぱり実入りがいいね」


「今日は美味しい物が食べられそうです」


「うん」


「では、失礼する」


何時ものようにメリッサが先に帰宅をしようとする。


「待て、少しは食事くらい一緒にどうだ?」


アルが帰ろうとするメリッサを引きとめる。


「いや、私は」


「すでにお前の姿は3人に割れてるぞ」


「な、なんだと!?」


メリッサは驚愕する。


「お前と俺が会った時に見ていたらしい」


「そ、そうか」


「メリッサさんが良ければ一緒に食事をしたいな~って」


「無理強いはしませんよ」


「何か事情があるんですよね?」


年下の3人は恐る恐ると言った感じで話す。


「年下に気を使われてるぞ?」


「・・・分かった。着替えてくるから待っててくれ」


そう言ってメリッサはギルドを出て行った。


ギィッ


暫くしてメリッサが平民の服装でギルドに戻ってきた。


その姿を始めてみる周囲の冒険者達は興味深々である。


「あまり人前に立ちたくないのだが」


左目の眼帯を隠すように長い髪を垂れ下げている。


「やっぱり、昨日の人だ」


「これは」


「すっごい美人ですね」


「世辞を言うな」


3人に言われて頬を赤めるメリッサ。


「オイラとしては今のメリッサさんの方がいいと思うな~」


「僕も賛成です」


「私も」


「煽てても何も出ないぞ」


3人に褒められて頬が少し緩むメリッサ。


「とにかく、飯だ。ここだと目立つ」


メリッサの容姿は周囲の冒険者からみても注目されてしまっていた。


「それがいい」


5人はギルドを出る。


「私の知っている所で良いか?」


「貴族の人が利用する場所・・・お金足りるかな?」


「安心しろ。一般的な大衆食堂だ」


そう言って何処にでも在りそうな大衆食堂へと連れて来られた。


一般人が殆どで逆にアル達の方が目立つ客層だった。


席について壁に張られているメニューを見渡す。


「ここのハンバーグ定食が絶品でな。通いつめている」


「俺達もソレにするか」


「そうだね」


「はい」


「ですね」


「メリッサちゃん、今日はお友達を連れて来たのかい?」


メニューが決まった空気を感じ取った恰幅の良い女性が近づいてきた。


「冒険者仲間の4人だ」


「メリッサちゃんと仲良くしてやっておくれよ。この子が店に通い始めてから一度もお友達を連れてきやしなかったからね」


「その事はいいだろう。ハンバーグ定食5人前だ」


「あいよ! アンタぁ。バーグ定食5だよぉ」


大きな声で厨房に向けて注文を伝える。


「で、兄ちゃんはメリッサちゃんのコレかい?」


ニヤニヤしながら食堂のおばさんはアルに問う。


「か、勘違いしないでくれ!」


慌ててメリッサは否定する。


「ほぅん。その様子じゃ、まだかねぇ」


「メリッサをからかわないで仕事に戻ってくれ」


アルがため息をついて言う。


「早く春がくるといいわねぇ」


そう言っておばさんは戻っていった。


「いつも、あぁなのか?」


「いつも、あんな感じだ。それが客を引き寄せるのだろう」


周囲の客は皆笑顔で騒いで食事を楽しんでいる。


「あいよ、バーク定食5人分」


お盆に乗せられたハンバーグ、ライス、スープ、サラダのセットを5人分運ばれる。


「これはどうやって食べるんだ?」


アルを始めとした4人はハンバーグの食べ方を知らない。


「作法など誰も気にしていない。食べ方は自由だからな」


チャッ


メリッサは自前のフォークとナイフを取り出した。


持ち手の部分に紋章が刻まれている。


「そうか」


アルはトレーに乗っていた木のフォークで適当にハンバーグを一口大に切って口に運ぶ。


「うまいな」


予想外に噛み応えがあり、中から肉汁があふれ出て、ソースと絡み合う事でいい仕上がりとなっていた。


「これは私のお気に入りなんだ」


自分の進めた物を美味しいと褒めてくれる事にメリッサは上機嫌であった。


「肉汁が凄い!」


「これは、予想外ですね」


「こんな美味しい物、初めて食べました」


他の3人もハンバーグの旨さに賛同している。


食事をしながら今までの事を5人で話をして時間が過ぎて行く。


『よぉ、姉ちゃん。そんな連中と話していないで俺達と飲もうぜ』


酒に酔い、いい気分でいる顔を赤らめた中年のオジサンがメリッサに声を掛けてきた。


「断る。私はこの者達と食事を楽しんでいるのだから邪魔をしないでくれ」


キッパリと断るメリッサの態度にオジサンは少しㇺっとする。


『こんなガキ共より俺達の方が楽しい食事ができるぜぇ』


「先ほど断ると言ったばかりだ。さっさと席に戻るがいい」


『ちょっと顔が良いからって調子に・・?』


オジサンの言っている途中でメリッサが立ち上がる。


『で、でけぇ』


メリッサの身長は普通の男より高く、オジサンを見下ろす形だった。


「これ以上、節度を守れないようならば適切な対処をするがいいか?」


メリッサがチラッと食堂のオバちゃんとアイコンタクトを取った。


『ちっ、酒が不味くならぁ』


おっさんも引き際を悟り大人しく席へ戻っていった。


「メリッサさん、カッケ~!」


「騎士の様でしたよ」


「すごく、頼もしかったです!」


3人から言われて恥ずかしそうにするメリッサ。


食事を終えて5人は店を出る。


「それでは失礼する」


メリッサは夜の街へと溶けるように消えていった。


残った4人は宿へと戻る。


暫くはファングボア狩りを中心に行い体にボア系の動きを叩き込む。

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